(Amacrine cell)
目次
○アマクリン細胞とは
アマクリン細胞は、網膜の桿体双極細胞から神経節細胞へのシグナル伝達を担う細胞である。抑制性の神経細胞であり、グリシン放出型、GABA放出型の二種類に大別される。情報処理に関与するとされるが、不明な点も多く残されている。
図1 網膜の細胞
緑色で示された細胞がアマクリン細胞である。橙色の双極細胞と黄色の神経節細胞が接する付近に存在し、信号を修飾する
図2 GABAの構造
GABAは日本語ではγーアミノ酪酸という。カルボニル炭素に隣接するCがα、その隣がβ、その隣がγであり、そこにアミノ基がついていることからこの名がついている。神経抑制性物質である。
○A2アマクリン細胞 (rod pathway interneuron)
A2アマクリン細胞と呼ばれる種類のアマクリン細胞は、桿体双極細胞(オン中心型)の信号を受容して、錐体双極細胞オン中心型の信号を促進し、オフ中心型を抑制する働きを持つ。
桿体双極細胞は、受容野の中心に光が当たった時に神経伝達物質のグルタミン酸を放出する。A2アマクリン細胞はAMPA/KA型のグルタミン酸受容体を持ち、グルタミン酸を受容すると脱分極する。
オン型錐体双極細胞はA2アマクリン細胞とギャップ結合によってつながっているため、結果として桿体双極細胞の活性化はA2アマクリン細胞の脱分極を介して錐体双極細胞の脱分極側を引き起こす。
一方でオフ型錐体双極細胞に対しては、脱分極したA2アマクリン細胞は興奮抑制性物質のグリシンを放出する。グリシン受容体はGABAA受容体に類似しており、リガンド結合に応じてClイオンを流入させることで、過分極側へと作用する。
○多軸索アマクリン細胞
多軸索アマクリン細胞は、広範囲の桿体双極細胞からの信号を受信し、広範囲の錐体双極細胞へと発信する種類のアマクリン細胞である。首を振るなどして視野が動いた時に混乱しないよう、情報処理を助けているとされる。また、動いている物体への強く反応にも寄与している。
○スターバーストアマクリン細胞
スターバーストアマクリン細胞は、物体の動きを検知する細胞である。ON型とOFF型のサブタイプがみられ、GABAを放出する。GABAのほかにも、興奮性神経伝達物質のアセチルコリンを合成する酵素、コリンアセチルトランスフェラーゼを放出するという特徴がある。

図5 スターバーストアマクリン細胞 eyewire.orgより
○アマクリン細胞の多様性
アマクリン細胞はこの他にも、脊椎動物で30種類が認められている。なお、これは形態の差で判断されているため、役割としてはもっと多様かもしれない。わかっているのは、脳に信号が到達する前の網膜での複雑な情報処理に関与するという事実ばかりである。
○まとめ
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/basic-eye.html
・埼玉医科大学生理学 「網膜の視覚情報処理」
http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/seiri2/research-retina.html
・中央大学 上村修二 「多機能な網膜」
http://www.bio.chuo-u.ac.jp/nano/kisoseibutsu/retina.pdf

2019年3月薬学修士。現在は博士課程の駆け出し研究者です。
細胞生物学を専門分野として、3年以上研究を続けています。
図は青でDNA,緑で紡錘体(微小管)を免疫染色した画像です。
よろしくお願いします。