目次
○好酸球とは
免疫機能を担う顆粒球のうち、酸性色素(Eosin)に染まるものを好酸球という。骨髄において造血幹細胞から分化し、骨髄、末梢血、組織に100:1:100の割合で分布する。特に上皮組織に多く、肺や子宮、皮膚、消化管によく見られる。核は2葉に分かれており、多数の顆粒を有する。
関連:造血幹細胞
〇好酸球の機能
好中球に比べて貪食能は弱いが、蠕虫を脱顆粒によって殺害することができる。またRNAaseも保有(ECP,EDN)して、抗ウイルスにも働いている。
さらに、好酸球はアレルギー部位に集まることが知られている。気管支喘息に多く集まるため、従来は傷害の原因とみられていたが、最近は寧ろTGFβを放出して組織修復(気道リモデリング)に働くと考えられている。
○顆粒
好酸球の顆粒には、主としてMBP、ECP、EPO、EDNという4種類の塩基性タンパク質が含まれている。 構成するアミノ酸にはアルギニンをはじめとした塩基性(basic)のものが多いため、好酸球の顆粒は酸性色素(eosin,橙色)に染まりやすい。

図2 好酸球ギムザ染色
好酸球(中央)の顆粒がエオジンによって橙~赤に染まっていることがわかる。
MBP(Major basic protein)
モルモットの好酸球から発見され、顆粒成分の大多数を占めていると考えられていた塩基性タンパク質である。ヒトの顆粒ではMBP-1とMBP-2という二種類が含まれる。等電点が11を超えるMBP-1は、1.細胞膜を構成する脂質二重膜を乱す、2.好塩基球とマスト細胞からのヒスタミン放出を促進する、3.マクロファージによる活性酸素の産生を促進する、などの複数の機構によって蠕虫や細菌類、動物細胞に対して毒性を示す。
MBP-2はMBP-1と66%程度の相同性を示すが、等電点8.7と低めである。機能はMBP-1と同様であるものの、その毒性は弱いことが報告されている。
EDN (Eosinophil-derived neurotoxin)
EDNは、RNAを分解するリボヌクレアーゼ活性を持つタンパク質であり、RNase-2とも呼ぶ。好酸球だけではなく、肝臓や胎盤でも発現する。塩基性は弱く(8.9)、蠕虫に対する毒性も低いが、一本鎖RNAウイルスからの防御に重要であると考えられている。
ECP (Eosinophil cationic protein)
ECPはEDNと同じくRNA分解活性を有し、RNase-3とも呼ばれる。等電点は10.8であり、蠕虫、細菌、RNAウイルス、動物細胞などに毒性を示す。細菌や蠕虫への毒性はEDNよりはるかに強いが、RNase活性はEDNの100分の1程度であり、RNase活性によって毒性を発揮するわけではないと考えられている。
EPO (Eosinophil Peroxidase)
EPOは、スーパーオキシドやH2O2を用いて次亜ハロゲン酸などの強力な活性酸素種を合成し、毒性を示す。スーパーオキシドやH2O2は好酸球の細胞膜に存在するNAPDHオキシダーゼが産生し、細胞外に放出されたものである。
○分化
好酸球は他の顆粒球同様、造血幹細胞から骨髄芽球(Myeloblast)を経て分化する。骨髄芽球から好酸球が分化するためには、T細胞が分泌するIL-3やIL-5、血管内皮やマクロファージが分泌するG-CSFを受容することが必要である。分化のシグナルを受け取ると、細胞内ではMAPカスケードやNFκB、Jak-Stat経路が働く。また、好酸球に対するケモカインとしてeotaxinが知られており、血管外浸潤後の遊走に働いている。
〇血液検査と好酸球
血中における好酸球濃度は通常500個/µL以下であるが、1500/uLを超えた場合は好酸球が多いと判断される。その原因としてはアレルギー(薬剤、鼻炎)、皮膚疾患、白血病、気管支喘息、寄生虫などが考えられるので、血液検査で好酸球値が高くでた場合には、以上の可能性を検討し、改善していく必要がある。
○まとめ
・酸性色素に染まる顆粒球を好酸球という。
・造血幹細胞から分化する。
・蠕虫を殺す役割。
〇関連項目
〇参考文献
Eosinophil Granule Proteins: Form and Function (J biol Chem, 2014)
Wikipedia
好酸球
Eosinophill
New生理学 日本医事新報社
大阪大学大学院医学系研究科 好酸球増多症

2019年3月薬学修士。現在は博士課程の駆け出し研究者です。
細胞生物学を専門分野として、3年以上研究を続けています。
図は青でDNA,緑で紡錘体(微小管)を免疫染色した画像です。
よろしくお願いします。