骨細胞は、自らが産生した骨基質に埋没した骨芽細胞である。骨層板の隙間である骨小腔の中に位置しており、骨小腔から放射状に広がる骨細管という空間に多数の突起を伸ばしている。隣接する骨細胞の間ではギャップ結合を形成しており、骨内部で綿密な網目状の連絡経路を成立させる。また突起の一部はハバース管にまで伸びており、血管から栄養や酸素を取り込み、不要物を放出している。骨に存在する細胞の90%は骨細胞である。
アポトーシスを起こした場合でも骨細胞周囲に細胞は寄り付けないため、最終的にはネクローシスを起こす。ネクローシスによって細胞内物質が出てくると、骨細胞のあった骨小腔における骨のリモデリングが亢進されることが知られている。
関連:骨芽細胞
図1 骨細胞
Osteocyte:骨細胞
Haversian canal:ハバース管…骨内部の空洞。毛細血管が通っており、骨芽細胞や破骨細胞が位置。
Osteon:骨単位…ハバース管を中心とした骨の構造単位
○機能
骨細胞の主な役割は、インテグリンや一次繊毛を介した機械的刺激の感受である。機械的刺激を受けていない、つまりリモデリングの必要がない場合に場合に限り、骨細胞はスクレロスチンという糖タンパク質を合成することが知られている。分泌されたスクレロスチンは骨芽細胞のLRP5/LRP6というヘテロ二量体の受容体に結合するが、LRP5/LRP6は本体Wntの受容体(Frizzledとの共受容体)としても働くので、スクレロスチンはそれを競合的に阻害してWntシグナルを弱める働きをもつ。
Wntシグナルは核移行するβカテニンの量を増加させ、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化を促す働きをもつシグナル経路である。以上まとめると、機械的負荷があった時に骨細胞はスクレオスチンの合成を減少させ、亢進したWntシグナルが骨芽細胞を活性化し、骨形成を強化する向きに働く、ということになる。
また、スクレロスチンはTGFβの一種であるBMP(骨形成タンパク質)とは互いに拮抗する。
○まとめ
〇関連項目
・骨芽細胞
〇参考文献
・Sciencedirect – Osteocyte
・メカニカルストレスの欠如と骨形成の低下

2019年3月薬学修士。現在は博士課程の駆け出し研究者です。
細胞生物学を専門分野として、3年以上研究を続けています。
図は青でDNA,緑で紡錘体(微小管)を免疫染色した画像です。
よろしくお願いします。