ヒトの全細胞

ヒトの体は37兆個の細胞から構成され、その種類としては約200種であると言われています。「赤血球」「神経細胞」「骨細胞」などの体内の細胞と、「iPS細胞」「HeLa細胞」などの培養細胞を解説します。

神経・脳に関する細胞

神経細胞

投稿日:2018年1月12日 更新日:

神経細胞
(neuron)

神経細胞は、神経系を構成する細胞であり、すなわち情報の処理と伝達を担う。別名でニューロンともいう。その構造は、細胞体、樹状突起、軸索という3つの部分に分けることができる。

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図1 神経細胞の構造
左側の突起が樹状突起、緑の核がある部分が細胞体、そこから右に伸びているものが軸索である。

○細胞体

細胞体は核やゴルジ装置、小胞体、ミトコンドリア等が位置しており、転写・翻訳などの一般的な細胞機能を担う領域である。その大きさは最大1㎜と、10µm程度の普通の細胞よりもはるかに大きい。複数の樹状突起からの信号をまとめて処理し、軸索へと伝える働きを持つ。

細胞体を支えている主要な骨格は中間径フィラメントの一種、ニューロフィラメントである。パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患はこのニューロフィラメントのリン酸化異常によると考えられてい
る。中心体も細胞体に存在し、軸索方面へ微小管を伸ばす。

細胞体に特徴的な構造物としては、ニッスル小体というものがある。ニッスル染色という方法で塩基性の色素に染まる、粗面小胞体の集合体である。濃く染まるのは、軸索が長いことで体積が大きくなっている神経細胞のために、リボゾームがRNAから大量のタンパク質を翻訳しているからだと考えられている。

※塩基性色素は、アミノ基などを持って水中で陽イオンとなる色素である。DNA,RNAはリン酸基を持つ酸性の物質であることから陰性を帯びており、色素と結合することができる。つまり、塩基性色素に染まる部位はRNA(リボゾーム)やDNAが豊富であることが言える。

○軸索

軸索は細胞体から伸びている突起であり、信号の出力を担う。長さは数mmから数十cmにもおよび、非常に長い。基本的には一つの神経細胞につき一本で、根元の部分を軸索小丘という。信号とはすなわち活動電位であり、軸索は細胞体から受け取った活動電位を軸索先端のシナプス前終末まで伝搬し、そこで神経伝達物質を放出することによって次の細胞に情報を伝える。

信号伝達の速度を高めるため、軸索の周りをグリア細胞が取り巻いて、髄鞘を構成しているものもある(有髄線維)。髄鞘にはところどころにランビエ絞輪と呼ばれる空間の空きがあり、活動電位はここを跳躍伝導して素早く伝わる。また、髄鞘が絶縁体であることによって、リーク電流等による活動電位の減衰を防ぐ働きもある。

関連:オリゴデンドロサイト シュワン細胞

○シナプス

軸索の先端のやや膨らんだ構造をシナプス前終末と言い、隣の細胞のシナプス後膜と合わせて「シナプス」という。ここには細胞体から微小管上を輸送されてきた分泌小胞が蓄えられておいる。

活動電位が軸索から伝わってくると電位依存性のカルシウムチャネルが開き、それをきっかけに小胞がシナプスに分泌される。シナプス後膜はそれに対応する受容体を持っており、次の神経細胞へシグナルが伝わっていく。

シナプス

図2 シナプス

○樹状突起

細胞体から伸びているもう一種類の突起であり、信号の入力を担う突起を、樹状突起という。樹状突起は何本もあり、その上には多くの棘が生えている。これはシナプス後膜である。棘は隣の細胞からシナプスを介して信号を受け取り、その電位変化が閾値を超えたときにのみ発火する。樹状突起は軸索と違って髄鞘がなく、信号の減衰は大きい。またところどころにリガンド依存の陰イオンチャネルがあって減衰を促進する。様々な妨害を超えた受容な信号のみが選別されて細胞体に到達し、処理されるのである。

○活動電位

細胞外を基準として、通常の神経細胞はおよそー60mVの負の電位を持つ。これを静止膜電位といい、電位が正に触れることを活動電位、もしくは発火という。

細胞膜にはナトリウム、カリウム、カルシウム、塩素イオンなどのチャネル(受動輸送)とトランスポーター(能動輸送)が存在し、細胞内外のイオン濃度比を一定に保っている。ナトリウム・カルシウム・塩素イオンは細胞外、カリウムイオンは細胞内濃度が高い。カリウムチャネルは常に開いているが、電気化学的勾配によって濃度比が維持されている。他のチャネルはリガンド結合依存性、もしくは電位依存性である。

さて、活動電位はすなわちナトリウムイオンの細胞流入である。シナプス後膜でリガンド依存性のナトリウムチャネルが開いてある程度電位を高めると、それを検知した電位依存性のナトリウムチャネルも開き、大きく正に触れる。ところが間もなく電位依存性カリウムチャネルも開き、カリウムイオンの流出によってもとに戻る。これを過分極という。

しばらくするとトランスポーターの働きでイオン濃度の細胞内外比はもとに戻っていく。この間は刺激を受けても発火しない仕組みがあり、これを不応期という。電位依存性のナトリウムチャネルは4つのサブユニットからなるが、その一つが閉じた状態を維持することによる。

シナプスで活動電位が起こると近隣の電位依存性ナトリウムが開き、活動電位が伝わっていく。不応期の仕組みは、信号伝達の逆走を防ぎ、一方向に伝えることにも役立っている。

○神経系

神経からなる一連の構造を神経系というが、大きく分けて中枢神経系と末梢神経系からなる。中枢神経系は脳および脊髄(背骨の内部に含まれる)であり、末梢神経はそのほかを指す。中枢神経は情報処理を担い、末梢神経は中枢神経と体の各部位をつなぐ働きを持つ。末梢神経はさらに信号の種類によって2つに分けられる。その一つは体性神経系であり、受容器から中枢への感覚神経と、中枢から運動器への運動神経が含まれる。もう一つは自律神経系であり、交感神経と副交感神経が含まれる。

○脳の構造

脳は大脳・間脳・中脳・橋・延髄・小脳という6つの部位からなり、神経細胞の数は300億個にも及ぶ。脳は内側から軟膜・クモ膜・硬膜・頭蓋骨に覆われている。軟膜とクモ膜の間にはクモ膜下腔という空洞があり、脳脊髄液で満たされている。クモ膜下腔は脊髄の中心管や脳室とも接続し、いずれも脳髄液を含む。

大脳は脳の一番外側の構造であり、左右の大脳半球と、それをつなぐ脳梁からなる。大脳の表面には大脳溝と呼ばれる溝と、その間に大脳回という尾根があり、しわしわに見える。特に頭頂部から両脇に降りる中心溝、側面の前後方向に走るシルビウス溝が目立つ。中心溝より前を前頭葉、シルビウス溝より下を側頭葉、上を頭頂葉、後ろを後頭葉と呼ぶ。また、表面近くを灰白質・中央部を白質という。知覚・記憶・随意運動等ヒトをヒトたらしめる機能を担う。

間脳は大脳よりも脳の中央部に位置し、視床及び視床下部からなる。視床は視覚をはじめとする感覚の処理、視床下部は体の恒常性の維持に働く。

中脳は橋や延髄とともに脳幹をなし、間脳の下に位置する。運動系の中継や、姿勢維持のための不随意運動を担う。

橋(きょう)は、中脳の下に位置し、三叉神経や顔面神経などの脳神経の出発点である。

延髄は橋の下で呼吸や嘔吐、嚥下、消化を担い、生命維持に不可欠である。麻酔が延髄にまで到達すると死ぬ。

小脳は脳の背側に位置する。知覚と運動機能の統合を担っていると言われてきたが、大脳が損傷した場合には代替を務められることもわかってきた。

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図2 脳の構造
紺色:大脳 黄色:間脳 緑:中脳 水色:延髄 臙脂:小脳 紫:橋
右側が顔面、左側が背である。

○脊髄

脳とともに中枢神経系を構成する脊髄は、上から頚髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられる。


外套1

図3 脊髄の断面
上側が背側、下が腹側である。青い神経は求心性、赤い神経は遠心性である。


脊髄の断面は上図のような構造をとる。脳とは逆に灰白質が内側、白質が外側に位置している。灰白質の腹側に飛び出した部分を前角(腹角)、背側の部分を後角(背角)という。

遠心性の自律神経や運動神経は前角・前根を介して、求心性の感覚神経は後根から後角に投射され、それぞれ信号が伝達されている。多くの信号は脳で処理されるが、脳を介さずに感覚神経→後角→介在神経→前角→運動神経と伝わる高速な処理も行われており、これを反射という。

○末梢神経

脳から出るものを脳神経、脊髄から出るものを脊髄神経という。以下に列挙する。

脳神経…嗅神経、視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、顔面神経、内耳神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経(合計12対)

脊髄神経…頸神経(8)、胸神経(12)、腰神経(5)、仙椎神経(5)、尾骨神経 (合計31対)

脊髄神経の対は骨の数に対応する。

参考文献

Qシリーズ新生理学

脳科学辞典

-神経・脳に関する細胞

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