ヒトの全細胞

ヒトの体は37兆個の細胞から構成され、その種類としては約200種であると言われています。「赤血球」「神経細胞」「骨細胞」などの体内の細胞と、「iPS細胞」「HeLa細胞」などの培養細胞を解説します。

胃に関する細胞

壁細胞

投稿日:2017年12月30日 更新日:

壁細胞

(Parietal cell)

壁細胞は、胃腺に存在して胃酸(塩酸)や内因子を分泌する細胞である。プロトンポンプを利用してH+を胃に組みだし、別経路でCl-を排出することで塩酸となる。アセチルコリン、ガストリン、ヒスタミンを受容すると、胃酸分泌を促進する作用を持つ。

わかもと

図1 胃腺の細胞

胃粘膜と胃腺

粘膜は、外胚葉由来の上皮細胞層であり、粘液を分泌するものを指す。胃には胃粘膜が存在し、そこには胃小窩と呼ばれる小さい穴が多数存在する。胃小窩の底に胃腺があって、そこから粘液や塩酸、消化酵素が分泌されている。塩酸を分泌する細胞は壁細胞、ペプシノーゲンを分泌する細胞は主細胞と呼ばれている。

関連: 主細胞

胃酸分泌の制御

胃酸分泌は、脳相胃相腸相の3つの方法で制御されている。脳相はすなわち副交感神経、胃相はG細胞や物理的刺激、腸相はセクレチンを意味する。セクレチンは、小腸で低いpHを感じたときに内分泌されるホルモンであり、胃酸分泌を抑制する。脳相・胃相については後述する。

アセチルコリン(脳相)

アセチルコリンは副交感神経の出す神経伝達物質である。副交感神経は一般に食事時に働く神経であり、胃酸分泌を促進する。視覚や味覚、嗅覚で食べ物を認識した場合も神経興奮が起こる。壁細胞においては、GPCRのムスカリンM3受容体に結合し、シグナルが伝達される。

ガストリン(胃相)

ガストリンは、胃の出口、幽門に存在するG細胞によって内分泌されるペプチドホルモンである。食べ物の刺激があるとG細胞は活性化され、ガストリンは血管を通って壁細胞のCCK2受容体を刺激し、塩酸分泌を促進する。

CCK2受容体はガストリンのほか、小腸I細胞が放出するコレシストキニン(Cholecystokinin, CCK)を受容するGタンパク共益型の受容体である。コレシストキニンは小腸セクレチン産生を促進する作用を持つ。

ヒスタミン

ヒスタミンは体内で広くみられる神経伝達物質であるが、壁細胞は隣接するクロム親和性細胞(ECL細胞)が傍分泌したものをH2受容体で受容し、胃酸を分泌する。クロム親和性細胞は、副交感神経やガストリンが作用して活性化された場合にのみヒスタミンを発する。正のフィードバックである。

ヒスタミン受容体にはH1からH4までのサブタイプが存在し、いずれもGPCRである。ヒスタミンは胃酸分泌に最も大きな影響を与えると言われており、シメチジン(タガメット)等のヒスタミンH2受容体拮抗薬が胃潰瘍の薬として用いられている。

プロトンポンプ阻害剤

壁細胞のプロトンポンプはATPをエネルギー源としてH+をくみ出しているが、それを阻害する薬剤(ゲフィニチブ等)もまた、胃酸分泌を強力に抑制する薬として用いられている。ただしこの薬には腸内細菌の変化をはじめとする副作用が見られるため、長期に用いることは禁止されている。

胃潰瘍

胃潰瘍とは、胃の上皮組織が欠損し、その下層の組織が露出する疾患である。通常は粘膜表面の重曹を含んだ粘液が粘膜を保護し、細胞表面のリン脂質が胃酸水溶液を寄せ付けず、また上皮細胞もプロスタグランジンE2の効果で盛んに増殖することで損傷を抑えているが、飲酒や熱いもの、塩分やストレスでバランスが崩れると損傷が起こる。プロスタグランジンの合成を阻害する風邪薬、NSAIDsも、上皮の分裂を抑制するために潰瘍の副作用がある。

内因子

内因子は、壁細胞によって作られる糖たんぱく質であり、回腸におけるビタミンB12の吸収に必要である。食物ではタンパク質と結びついているビタミンB12は胃のペプシンで切り離されて、代わりに唾液由来のハプトコリンというタンパク質と結合し、強酸での分解を防ぐ。十二指腸まで出ると、膵液によってハプトコリンが分解され、壁細胞由来の内因子と結合する。内因子とビタミンB12の複合体が回腸で吸収されている。

ビタミンB12は葉酸に変換され、DNA合成に重要な役割を果たすため、ビタミンB12が不足すると分裂の早い細胞に悪影響が生じ、悪性貧血を引きおこす。

悪性貧血の主要因となるのは、萎縮性胃炎という疾患である。胃粘膜が薄くなって胃腺が減少する疾患であり、ほとんどの場合はヘリコバクター・ピロリを原因とする。

ヘリコバクター・ピロリ

ピロリ菌としても知られ、強酸環境で生存可能なグラム陰性細菌である。ウレアーゼを持ち、胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで塩酸を中和することによって生存している。免疫応答による炎症により、感染から数カ月で慢性胃炎を引き起こし、さらに続くと萎縮性胃炎や胃がんとなる。

現在は、抗生物質によってピロリ菌を除去する治療が行われている。
400px-EMpylori

図2 ピロリ菌

〇関連項目

主細胞

胃小窩細胞(上皮細胞・副細胞)

〇参考

・ピロリ菌のお話.jp 武田薬品 http://www.pylori-story.jp/

・Wikipedia の各項目
壁細胞
ヘリコバクター・ピロリ
内因子
胃粘膜
プロトンポンプ阻害剤

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