単球とは
単球(Monocyte)は白血球の10%弱を占める細胞種である。直径は20µm程度であり、血液に含まれる最大の細胞となっている。単球は血液中を循環しており、病原体や異物を食作用によって取り込んで分解し、抗原をT細胞へと提示する役割を持つ。血中から組織に移動すると、樹状細胞(dendritic cells: DC)、マクロファージ、破骨細胞へ分化することができる。単球の半数は脾臓で貯蔵されている。

中央に位置する大きい細胞が単球、周囲が赤血球である。
単球の分化
単球は骨髄において、造血幹細胞から樹状細胞と共通の前駆細胞へと分化し、さらに単芽球を経て分化する。分化した単球は血流中で数時間―数日間循環した後、体内で炎症を起こした組織(脾臓や肝臓、肺など)へと移動する。
組織に移動した単球はさらに、マクロファージや樹状細胞、骨組織では破骨細胞へと分化する。組織に常在する免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞は単球と比べると移動性に乏しいが、異物を食した樹状細胞はリンパ管を通ってリンパ節に移動し、抗原提示を行う。
単球の集積
組織で炎症がおこるとまず好中球、続いて単球が集積する。
組織へと向かう単球はまず、血管の内皮と衝突して速度を落とし、内皮細胞表面のセレクチンと弱く結合してゆっくりと流れるようになる(Rolling)。
続いて、組織が放出するサイトカインに反応した単球細胞膜上のインテグリン(CD11a-cおよびCD18)が活性化し、活性化されたインテグリンは血管内皮細胞膜上に発現したICAM1と相互作用する能力を獲得する。ICAM1の発現は炎症性サイトカインのIL-6などによって増強される。
単球はインテグリン・ICAM1を介して内皮表面にしっかりと接着し、内皮細胞の隙間から組織へと移動する。組織に移動した単球は、細菌感染や損傷部位の細胞が生成するケモカインを目印に濃度の高い方、すなわち炎症部位に集積することができる。

出典:https://www.stomhttp://commons.wikimedia.org/wiki/File:Leukozytenmigration_01.pngponstep1.com/histamine-prostaglandin-leukotrienes-bradkinin-pge2-ltb4-chemotactic-factors/
ケモカインの濃度が高い方へと移動する能力を走化性と呼び、単球の走化性因子には単球走化性タンパク質-1(monocyte chemotactic protein-1)および単球走化性タンパク質-3(monocyte chemotactic protein-3)(CCL7)などがある。
単球やその分化後のマクロファージが過剰に集積すると関節リウマチの原因となるため、単球に発現するケモカイン受容体のCCR2を制御することで疾患の治療につながることが期待されている。
単球と免疫機能
単球は樹状細胞と同様に、異物に対する食作用、抗原提示、サイトカイン産生を行う。単球は貪食した異物に対し、呼吸バーストによって生じる活性酸素に依存して抗菌活性を示す。呼吸バーストはNAPDHオキシダーゼが酸素(O2)からスーパーオキシドラジカル(O2-)を作り出す現象であり、スーパーオキシドラジカルは過酸化水素などに変換されて微生物の膜に損傷を与える。
単球は、病原体を認識するToll様受容体などのパターン認識受容体(PRR)を介して直接異物に結合し、特にリポ多糖を認識するCD14は単球のマーカーとして用いられている。単球はまたFcγ受容体を介して病原体に結合した抗体(IgG)によるオプソニン化を目印に食作用を発揮することもできる。
食作用・分解を終えると、異物の断片の一部はMHC分子に乗せられ、細胞表面に提示される。提示された抗原をナイーブT細胞が認識すると活性化が起こり、エフェクターT細胞へと変化する。
また、異物に反応した単球は炎症性サイトカインを分泌し、後に抗炎症性サイトカインを分泌する。単球によって産生されるサイトカインには、TNFα、IL-1、IL-6、IL-12などが知られている。
参考
MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/13-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%99%BD%E8%A1%80%E7%90%83%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%8D%98%E7%90%83%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97
東北大学バーチャルラボ
https://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/macrophage/introduction/int-01.html
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/tankyu.html
単球・マクロファージ遊走制御タンパク質 「フロント」

2019年3月薬学修士。現在は博士課程の駆け出し研究者です。
細胞生物学を専門分野として、3年以上研究を続けています。
図は青でDNA,緑で紡錘体(微小管)を免疫染色した画像です。
よろしくお願いします。