ヒトの全細胞

ヒトの体は37兆個の細胞から構成され、その種類としては約200種であると言われています。「赤血球」「神経細胞」「骨細胞」などの体内の細胞と、「iPS細胞」「HeLa細胞」などの培養細胞を解説します。

神経・脳に関する細胞

アストロサイト

投稿日:2018年1月16日 更新日:

アストロサイト
(astrocyte)

アストロサイト(星状膠細胞)は、中枢神経に存在するグリア細胞の一つである。ニューロンの細胞体・シナプスや毛細血管と接しており、1.ニューロンへの栄養供給、2.血液脳関門の形成、3.神経伝達の補助といった役割を担い、脳内環境を維持している。神経細胞と同様、神経幹細胞から分化する。



アストロサイト


図1 アストロサイト 脳科学辞典 より

○マーカー

アストロサイトを観察する際は、多くの場合GFAPGlial fibrillary acidic protein)というタンパク質をマーカーに用いる。GFAPはアストロサイトに特異的に見られる中間径繊維であり、細胞の強度を支えている。GFAPのほかには、グルタミン酸輸送体であるEAAT1/2、カルシウム結合タンパク質のS100β、葉酸代謝経路の酵素ALDH1L1アクアポリン4も用いられている。

○アストロサイトの構造

GFAPの抗体を用いて細胞骨格を染めると☆のように見えることから、アストロ(星)+サイト(細胞)でアストロサイトと名付けられ、日本語では星状膠細胞と呼ぶ。しかしながら、実際のアストロサイトの突起は40本以上存在し、それぞれの突起は複雑に枝分かれしており、星型とは言い難い。その形態は、「神経細胞の隙間をスポンジのように満たしている」と例えられている。一つのアストロサイトが200万個ものシナプスを覆っていると考えられている。

〇反応性アストロサイト

脊髄や脳といった中枢神経に虚血などのの病変が生じると、アストロサイトの突起は伸長し、細胞体は拡大する。この状態を「反応性アストロサイト」という。

反応性アストロサイトはGFAPやビメンチンなどの中間径線維を多く発現し、損傷部に集積する。集積した反応性アストロサイトはやがてグリア瘢痕(瘢痕形成アストロサイト)とよばれるかさぶたのような非可逆の構造となって、軸索の伸長を阻害するように働く。グリア瘢痕は脳内異常の拡大を食い止める役割を果たしているとされる。

末梢神経が損傷しても回復するのに対し、脳・脊髄の中枢神経が回復しないのは、アストロサイトによるグリア瘢痕の形成が原因であると考えられている。グリア瘢痕の形成を阻害することで脳梗塞や脊髄損傷の後遺症を抑えられないか、研究がなされている。

○血液脳関門

血液脳関門は、血液から脳に対して選択的に物質を輸送する仕組みである。血管内皮細胞、周皮細胞、アストロサイトによって構成され、脳内の毛細血管の全てを覆っている。血管内皮細胞が密着結合することで間隙からの無秩序な物質交換を防ぎ、膜上に発現したチャネル、トランスポーターを介して必要な物質のみやり取りしている。細胞膜を通過できる脂溶性の高い物質もまた関門を通過することができる。

関連:血管内皮細胞周皮細胞

血液脳関門
図2 血液脳関門

○ニューロンへの栄養供給

血管内皮細胞とニューロンは直接接触しておらず、物質輸送はアストロサイトを介して行われる。血管内皮細胞が血管から物質を取り込んでアストロサイトに渡し、さらにそれがはニューロン供給される。栄養分グルコースの場合、アストロサイトで乳酸に変換された後でニューロンへ取り込まれている。

○神経伝達の補助

神経細胞が伝える活動電位は、Na+イオンを細胞内に流入させ、K+イオンを細胞外部に放出する一連のやりとりである。神経伝達が正常に行われるためには外部環境が定常であることが求められるが、それを保証するのがアストロサイトである。アストロサイトはK+、Na+などのチャネル、トランスポーターを持っており、脳内イオン濃度の維持に努めている。

また、アストロサイトはグルタミン酸やGABA、グリシンといった神経伝達物質をシナプス部位から素早く取り込み、信号を初期化する働きも持っている。この働きによって、神経伝達のオフの速度が高まり、信号の頻度を上昇させることができる。

○参考文献

・脳科学辞典— グリア細胞 血液脳関門 中間径フィラメント
アブカム アストロサイト マーカ

実験医学オンライン 反応性アストロサイト

2016年9月RIKEN NEWS 「グリア細胞”アストロサイト”は脳内で何をしている?」

-神経・脳に関する細胞

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