○G細胞とは
G細胞は、胃の幽門部から十二指腸に位置し、ガストリンを血中に内分泌する細胞である。ガストリンは胃の壁細胞に働いて胃酸分泌を、主細胞に働いてペプシノーゲン分泌を増やす働きを持つ。
ソマトスタチンを分泌するD細胞などとともに、消化管ホルモンを分泌する胃腸内分泌細胞の一つとして数えられている。
細胞名 | ホルモン | 場所 | 主な作用 |
A | グレリン | 胃 | 食欲制御 |
D(δ) | ソマトスタチン | 胃・小腸 | ガストリン分泌制御 |
G | ガストリン | 胃 | 胃酸分泌制御 |
I | コレシストキニン | 小腸 | 胆嚢収縮 |
K | GIP | 小腸 | インスリン分泌 |
L | GLP-1 | 小腸・結腸 | インスリン分泌 |
M | モチリン | 小腸 | 腸管の蠕動 |
N | ニューロテンシン | 小腸・大腸 | 胃酸分泌 |
P | レプチン | 胃 | 食欲制御 |
S | セクレチン | 胃・小腸 | 小腸pH上昇 |
○ヒスタミン分泌制御
G細胞からのガストリンの放出は副交感神経によって制御されている。その神経末端における神経伝達物質はGRP(Gastrin releasing peptide)というペプチドであり、アトロピンという抗コリン薬でアセチルコリンを阻害してもガストリン分泌には影響がないことが知られている。その一方、副交感神経が直接壁細胞を刺激して胃酸分泌を増強する時の神経伝達物質はアセチルコリンであり、この経路はアトロピンによって阻害される。
副交感神経のGRPを介した刺激のほかでは、胃にアミノ酸がある場合やカルシウム濃度が高くなっている場合にもG細胞がそれを受容して、ガストリン分泌を増大させる。それとは逆に、酸性溶液に触れた十二指腸が分泌するセクレチン、インクレチンの一種であり血糖値低下に働くGIP、D細胞が分泌するソマトスタチン等にはガストリンの分泌を減少させる作用がある。

図1 胃酸分泌の制御 Wikipediaより
G細胞=G cellはECL cellやD cellと共に胃酸分泌を調整する。
○ガストリンの作用
まず第一に、ガストリンは胃のECL細胞(Enterochromafin like cell)を刺激して、ヒスタミンの傍分泌をうながす働きがある。ヒスタミンは壁細胞に作用して胃酸分泌を増強する効果がある。胃酸分泌の上昇は壁細胞の胃内腔側の細胞膜にK+/H+ ATPaseが増えることによる。また、壁細胞にもガストリン受容体が存在し、直接はたらいて胃酸分泌を促す働きもあるが、こちらの寄与は小さい。
ガストリンは他にも、主細胞からのペプシノーゲン分泌を促す、胃の運動性を高める、膵液分泌を高めるなど多様な作用が認められており、いずれも食事時に消化を促進する。
○ガストリン分子
G細胞におけるガストリン産生の際、まずGASTという遺伝子領域から101アミノ酸からなるプロガストリンという前駆体が転写・翻訳される。プロガストリンはN末端側にシグナルペプチドを有しており、リボソームは粗面小胞体の膜に結合して翻訳産物は小胞体の中に送られる。
翻訳が終了するとシグナルペプチドの21アミノ酸は切り離され、さらなる切断を受けることによって、最終的なガストリンが完成する。多くのガストリンは17アミノ酸か34アミノ酸からなり、前者をリトルガストリン、後者をビッグガストリンという。作用はどちらも同じである。
細胞膜上に位置するガストリンの受容体はCCKBRと呼ばれ、十二指腸や空腸のI細胞で産生するコレシストキニンと共通した受容体である。阻害剤としてプログルミドという薬剤が開発され、消化性潰瘍の薬として用いられていた。興味深いことに、プログルミドには鎮痛の増強、プラセボ効果の増強が確認されている。神経にも作用していると考えられている。
○ゴジラ細胞
胃とは関係ないが、ゴジラの細胞もG細胞という。分裂速度が極端に早く、どんな細胞にでも分化できて、毒物や放射線にも耐性があって、日本とアメリカとサウジアラビアが狙っているという設定。
○関連項目
○参考文献
・おくすり110番 プログルミド
・漢方と胃
http://kanpouseitai.blog87.fc2.com/blog-entry-330.html?sp

2019年3月薬学修士。現在は博士課程の駆け出し研究者です。
細胞生物学を専門分野として、3年以上研究を続けています。
図は青でDNA,緑で紡錘体(微小管)を免疫染色した画像です。
よろしくお願いします。