B細胞とは
B細胞は、抗体を産生する免疫細胞である。造血幹細胞が骨髄(Bone marrow)で成熟して形成される。T細胞とともに、リンパ節でよく見られるリンパ球の一つに分類される。
関連:T細胞
膵臓のランゲルハンス島に位置するインスリン分泌細胞もB細胞と呼ぶ。これについては、β細胞を参照。
○B細胞の分化成熟
B細胞は、骨髄において造血幹細胞からプロB細胞・プレB細胞を経て形成され、細胞膜上に抗体IgM・IgDをBCR(B細胞受容体)として発現した状態でリンパ節に移行する。
参考:造血幹細胞
抗体は重鎖・軽鎖から構成されており、プロB細胞の段階で抗体重鎖(H)の、プレB細胞で軽鎖(L)の遺伝子再構成が行われ、多様性が担保されている。
リンパ節に移行したB細胞は、BCRに結合する抗原分子と結合すると貪食し、MHCクラス2と呼ばれる分子に提示する。提示された抗原をヘルパーT細胞が認識すると活性化され、B細胞は形質細胞・メモリーB細胞へと成熟し、増殖する。この機構をクローン選択説という。
図 B細胞の活性化
B細胞の活性化には、ヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が分泌するIl-6などのTh2サイトカインや、B細胞膜のCD40とT細胞のCD40Lの結合(共刺激)が重要である。
関連:T細胞
○形質細胞
膜型免疫グロブリンやMHC2が消失し、抗体を分泌するようになった状態を形質細胞(プラズマ細胞)という。一般的に数日で死滅する。
抗体タンパク質の翻訳は粗面小胞体で行われ、ジスルフィド化などの修飾を受けたのち、ゴルジ体に移行する。ゴルジ体において、一部の抗体は多量体化し、小胞輸送によって分泌される。
図2 抗体(赤)を産生するB細胞
The scientist magazine より
○メモリーB細胞
ヘルパーT細胞によって活性化されたB細胞の一部は形質細胞ではなくメモリーB細胞へと変化し、抗原の再侵入に備える役割を果たしている。スペイン風邪の事例から、メモリーB細胞の寿命は最大で90年にもなると考えられている。
形質細胞に比べて抗原との親和性が低いBCRを発現するB細胞がメモリーB細胞となりやすく、またBach2という転写因子を高発現していることが明らかになった。
○抗体の役割
Y字型の構造をとっている抗体は、2本の軽鎖と2本の重鎖の計4本のペプチドから構成され、互いにジスルフィド結合によって繋がっている。抗原の種類に関係なく同じ構造を持つ定常部と、対応する抗原に応じて異なる可変部からなる。パパインという酵素によって抗体を切断すると、定常部を含むFcフラグメントと、可変部を含むFabフラグメントの二つに分かれる。
抗体の役割はオプソニン化と補体活性化による液性免疫である。オプソニン化は好中球などの食細胞による貪食を促進する働きである。食細胞は抗体のFcを受容するタンパク質を発現しており、抗体と結合することで病原体を認識しやすくなる。
関連:好中球
抗体と同様にオプソニン化の働きを持つ物質に、補体がある。補体は抗原のオプソニン化のほかに、病原体の細胞膜を貫通する膜侵襲複合体を形成して破壊する働きを持つ。抗体を土台として補体が集積し、これらの機能を発揮する。
図3 抗体の構造
Y字型の下部が定常部、抗原と結合する部位が可変部である。
○クラススイッチ
抗体の種類
抗体は重鎖のタンパク質の種類(μ δ ε α γ)に応じて、IgM、IgD、IgE、IgA、IgGという5つのクラスに分類することができる。血清に最も多く含まれる抗体は、IgGクラスのものである。
IgGはオプシン化の機能が強く、IgAは粘膜系の免疫に、IgEはアレルギーに、IgMは補体活性化と、それぞれに独自の役割を果たす。IgDの役割は解明されていない。
成熟前のB細胞は膜上にIgM,IgDをBCRとして発現し、成熟直後の形質細胞はIgMを分泌する。
クラススイッチ
サイトカインなどの刺激を受けると、μのエキソンを含む遺伝子領域がDNA上から切り出され、その下流のエキソンが翻訳されるようになる。遺伝子の切り出しの長さに応じてクラスが変化し、これをクラススイッチという。
IgGとIgM
IgMの半減期は5日と短いが、IgGの半減期は3週間程度と長期に及ぶ。したがって、風邪を引いた際などは数日間IgMの量が増えたのち、IgGの上昇が長い間続き、やがてどちらも消えていく。一般的にIgGは感染から数か月程度検出することができるため、「抗体検査」でその量を調べることで過去数か月の感染を確認することができる。
○参考

2019年3月薬学修士。現在は博士課程の駆け出し研究者です。
細胞生物学を専門分野として、3年以上研究を続けています。
図は青でDNA,緑で紡錘体(微小管)を免疫染色した画像です。
よろしくお願いします。
楽しい