双極細胞
(Bipolar cell)
○双極細胞とは

双極細胞は、網膜に存在し、いくつかの視細胞(錐体、桿体)からの信号を処理して神経節細胞へと伝える細胞である。視神経の光応答シグナルを受け取って活性化するオン型と、シグナルがない場合に活性化するオフ型の、二種類が存在する。
網膜の細胞
図1 網膜の細胞
 青:視細胞(円柱型桿体細胞・錐型錐体細胞)
 赤:水平細胞 
 橙:双極細胞 
 緑:アマクリン細胞 
 黄:神経節細胞

○受容野

受容野とは、ある細胞ないし集団が担う受容の領域である。例えば目全体の受容野は、見えている現実世界の領域のことであり、レンズを頂点として、前方に無限に広がる円錐型をしている。一つ一つの双極細胞は幾つかの視細胞のシグナルをまとめて受容しているが、担当する視細胞達が光を受けている領域が、双極細胞の受容野である。一細胞あたりの受容野が小さければ小さいほど解像度は高い。双極細胞は中心窩の付近で最も密であるから、そこが視力を決定する。

○オフ中心とオン中心
Receptive_field
オフ型の双極細胞は、又の名をオフ中心型ともいう。
すなわち、受容野の中心がオフであれば活性化するが、受容野の周縁部もオフであるとシグナルが抑制されるという性質を持つ。逆に周縁部がオンの時はシグナルが強化される。オン中心型はこの逆であり、中心がオンで周縁がオフの時に活性化する。この仕組みによって目はコントラストを認識し、境界をはっきりと認識することができる。この機構には、水平細胞も大きく関与する。

○オン、オフの分子機構

オン型、オフ型の差を生み出す分子機構においては、視細胞からの神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体の違いが重要である。視細胞は光を浴びると過分極してグルタミン酸の放出量が低下するが、双極細胞はこれを検知している。

まず、オン型の双極細胞は受容体としてmGluR6を持っている。mGluRは代謝型グルタミン酸受容体と呼ばれるグループに属したGPCRである。mGluR6はGiと共役しており、グルタミン酸を受容するとアデニル酸シクラーゼの活性を低下させ、cAMP濃度を下げる。cAMPはPKAを活性化し、PKAはCaチャネルをリン酸化し、開くことで脱分極を起こす働きがあるため、結果としてmGluR6は興奮を抑制する向きに働く。
視細胞が光を受けてグルタミン酸の放出量が減ると、この抑制効果が小さくなるため、興奮が下流へ伝わっていく。

一方、オフ型の双極細胞に存在する受容体はAMPA/KA型である。グルタミン酸と結合すると陽イオンチャネルが開き、脱分極を起こす。視細胞が光を受けてグルタミン酸が減るとこのチャネルが閉じるため、興奮は抑制される。

〇双極細胞の種類

桿体双極細胞と、3種類の錐体双極細胞が存在する。錐体双極細胞はオン中心型、オフ中心型ともに存在する一方で、桿体双極細胞はオン中心型のみが存在する。錐体双極細胞は直接に神経節細胞にシグナルを伝えるが、桿体双極細胞はアマクリン細胞を介する、という違いもある。

〇関連項目
水平細胞
桿体細胞
錐体細胞

〇参考文献
・滋賀大学「痛みと鎮痛の基礎知識」
(http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/basic-eye.html)
・東京女子大学「生物学特論」 第12回 講義資料
(http://www.cis.twcu.ac.jp/~asakawa/MathBio2010/lesson12/)
・下垂体脊椎動物網膜の水平細胞から錐体への情報伝達に関する研究の進歩 高橋恭一
・Wikipedia「受容野」
・脳科学辞典「受容野」

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