ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

カテゴリ: 結合組織に関する細胞

骨細胞
(osteocyte)



○骨細胞とは

骨細胞は、自らが産生した骨基質に埋没した骨芽細胞である。骨層板の隙間である骨小腔の中に位置しており、骨小腔から放射状に広がる骨細管という空間に多数の突起を伸ばしている。隣接する骨細胞の間ではギャップ結合を形成しており、骨内部で綿密な網目状の連絡経路を成立させる。また突起の一部はハバース管にまで伸びており、血管から栄養や酸素を取り込み、不要物を放出している。骨に存在する細胞の90%は骨細胞である。

アポトーシスを起こした場合でも骨細胞周囲に細胞は寄り付けないため、最終的にはネクローシスを起こす。ネクローシスによって細胞内物質が出てくると、骨細胞のあった骨小腔における骨のリモデリングが亢進されることが知られている。


関連:骨芽細胞
Transverse_section_of_bone_en.svg

図1 骨細胞
 Osteocyte:骨細胞 
 Haversian canal:ハバース管…骨内部の空洞。毛細血管が通っており、骨芽細胞や破骨細胞が位置。
 Osteon:骨単位…ハバース管を中心とした骨の構造単位





○機能


骨細胞の主な役割は、インテグリンや一次繊毛を介した機械的刺激の感受である。機械的刺激を受けていない、つまりリモデリングの必要がない場合に場合に限り、骨細胞はスクレロスチンという糖タンパク質を合成することが知られている。分泌されたスクレロスチンは骨芽細胞のLRP5/LRP6というヘテロ二量体の受容体に結合するが、LRP5/LRP6は本体Wntの受容体(Frizzledとの共受容体)としても働くので、スクレロスチンはそれを競合的に阻害してWntシグナルを弱める働きをもつ。

Wntシグナルは核移行するβカテニンの量を増加させ、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化を促す働きをもつシグナル経路である。以上まとめると、機械的負荷があった時に骨細胞はスクレオスチンの合成を減少させ、亢進したWntシグナルが骨芽細胞を活性化し、骨形成を強化する向きに働く、ということになる。

また、スクレロスチンはTGFβの一種であるBMP(骨形成タンパク質)とは互いに拮抗する。

○まとめ


・骨に埋没した骨芽細胞は、骨細胞と呼ばれている。

・骨内に突起を張り巡らせている。

・突起によって機械刺激を感受して、リモデリングを調整する働きを持つ。






〇関連項目
骨芽細胞



〇参考文献
・Qシリーズ 新生理学 日本医事新報社
・Wikipedia - Osteocyte
・メカニカルストレスの欠如と骨形成の低下
 http://www.ak-hcc.com/osteoporosis/related/illustration/illust/il11_01.html
・イベニティ 販売承認 アステラス製薬
 https://www.astellas.com/jp/ja/news/20091
続きを読む

破骨細胞
(Osteoclast)

○破骨細胞とは


破骨細胞は、骨縁において骨を吸収する細胞である。骨との接触部に波状縁と呼ばれる構造を持ち、そこから分解酵素が放出されている。破骨細胞の働きによって生じた骨上のくぼみをハウシップ窩という。一つの破骨細胞5~20個の核を持つ。特殊化したマクロファージである。


関連:マクロファージ

Osteoclast


図1 破骨細胞  中央に位置する多核の細胞が破骨細胞である。



○分化


破骨細胞造血幹細胞が単球系前駆細胞を経て分化・融合することによって形成される。まず成熟した骨芽細胞由来のマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)で未熟貪食細胞に分化した後、骨芽細胞の細胞膜に発現・もしくは分泌するRANKL(recepter activator of NF-κβ)と、未熟破骨細胞の膜上に位置する受容体のRANKが相互作用することにより、分化シグナルが走る。

デノスマブをはじめとする抗RANKL製剤は破骨細胞の分化を抑える効果を持ち、骨粗鬆症の薬として用いられている。

関連:骨芽細胞


rank 2

図 RANK-RANKLシグナル
ORTHO BULLET 
https://www.orthobullets.com/basic-science/9010/bone-signaling-and-rankl
より。Osteoblast(骨芽細胞)が分泌するRANKLをOsteoclast(破骨細胞)の前駆細胞が受容して、活性化される。

○骨の分解


破骨細胞は細胞外領域に対し、コラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ)や水素イオン、各種酵素を放出する。水素イオンを放出することでpHを低下させ、

Ca10(PO4)6(OH)2 + 8 H+ ←→ 6(HPO4)2− + 2 H2O + 10 Ca2+ 

という平衡反応を右に傾けて、石灰成分を溶かし出すことができる。骨芽細胞がH+濃度を下げることで平衡を左に傾けて骨形成を行うのとは、対照的になっている。

この機構による骨吸収は、骨リモデリング骨芽細胞を参照)や血中のカルシウム濃度の制御のために行われている。副甲状腺から放出されるパラトルモンは血中カルシウム濃度を下げるホルモンであり、破骨細胞の働きを抑制する。一方、甲状腺の傍濾胞細胞から分泌されるカルシトニンは血中カルシウム濃度を高めるホルモンであるから、破骨細胞の働きを促進することになる。

破骨細胞が開けたくぼみ(ハウシップ窩)には間もなく骨芽細胞が移行し、骨の再形成が行われる。

img_illust-04_4
図 骨リモデリング
 アステラス製薬ホームページより

○疾患


破骨細胞の働きが足りない場合、骨が異常に硬くなって、大理石骨病を発症する。大理石骨病では、骨髄腔が縮小して造血障害の症状も現れ、貧血や免疫機構の低下も見られる。一方で破骨細胞が過剰に働いた場合は、骨粗鬆症や骨ぺージェット病となり、骨がもろくなってしまう。

○まとめ


・破骨細胞は、造血幹細胞から分化する。

・水素イオンを放出することにより、骨を溶かす。

・破骨細胞の阻害剤は骨粗鬆症の治療薬として用いられている。





〇参考文献
・新組織学 日本医事新報社
・シンプル病理学 南江堂
・破骨細胞物語
・https://www.torii.co.jp/health/lifescience/pdf/45_1.pdf

骨芽細胞
(Osteoblast)


○骨芽細胞とは


骨芽細胞は、骨を形成する細胞である。産生する有機物質はコラーゲンが主であるが、オステオカルシン、オステオポンチンもわずかに産生する。これらは骨の有機成分として、骨芽細胞が生み出す無機成分のハイドロキシアパタイト(Ca10[PO4]6[OH]2)を沈着させることで硬い骨となる。間葉系幹細胞から分化する。協働する同種の細胞の集まりは、骨単位と呼ばれている。


○骨の役割


骨の役割は、第一に身体の構造を支えることである。骨はコラーゲンを中心とする有機マトリックス(オステオイド)に無機物のハイドロキシアパタイトが沈着した構造をとっているが、前者は引き延ばされる負荷、後者が縮められる向きの負荷に対する強度を生み出している。

第二には体内にカルシウムやリン酸イオン濃度、及びpHの恒常性を維持することにある。


○骨リモデリング


骨は一見不変であるかのように思えるが、実際は一生の間、常に形成と分解を繰り返している。骨リモデリングと呼ばれているこの機構は、負荷を受けて傷ついた骨を修復し、高い強度を維持するのに役立つ。1年で20%程度が入れ替わっていると言われている。骨を形成する細胞を骨芽細胞、骨を破壊する細胞を破骨細胞と呼ぶ。

関連:破骨細胞

img_illust-04_4


図1 骨リモデリング
 アステラス製薬のホームページより



骨リモデリングに関係するホルモンとしては、女性ホルモンのエストロゲンが重要である。エストロゲンは骨形成を促す働きを持っているため、閉経後の女性の骨形成低下は顕著であり、骨粗鬆症のリスクが増大する。不安定になった骨は折れやすく、骨折はQOLの大幅の低下を招くとして、ビスフォスフォネートをはじめとしたさまざまな薬が目下開発中である。

○分化


骨芽細胞は間葉系幹細胞から分化する。骨芽細胞は骨の外側部である緻密骨に多く表れるが、内部の海綿骨には少ない。この理由として、骨髄の脂肪組織が骨芽細胞への分化を抑制することが知られている。


○コラーゲンと有機物質


骨に見られるコラーゲンは、Ⅰ型である。骨の長軸の向きに整列して線維が並んでおり、引き延ばしに対する強度を高めている。コラーゲンが中心であり、まだ無機物のついていない形成途中の骨を類骨と呼ぶ。

オステオカルシン・オステオポンチンはコラーゲンと無機的基質をつなぐ役割を持つと考えられているが、ノックアウトマウスで何も問題がなかったと報告されており、はっきりとはわかっていない。骨形成のマーカーとして用いられている。また、オステオカルシンは膵臓β細胞でのインスリン分泌、脂肪細胞からのアディポネクチン分泌を促すホルモンとしての役割も持っている。


○骨の石灰化


コラーゲンにリン酸カルシウムやハイドロキシアパタイトの結晶が沈着することを、骨の石灰化と呼ぶ。隣接する骨芽細胞が協働して石灰化を起こしており、反応が起こっている場所のことを石灰化前線と呼ぶ。石灰化は以下の反応による。

 6(HPO4)2− + 2 H2O + 10 Ca2+ ⇌ Ca10(PO4)6(OH)2 + 8 H+

骨芽細胞は密着結合によって細胞外液と骨を完全に分けており、カルシウム(促進拡散)やリン酸のイオン濃度(能動輸送)を精密に制御することで、反応を制御している。また右向きの反応を促進させるために骨の周辺のプロトン濃度は低く保たれ、アルカリ性となっている。

全ての骨芽細胞が骨形成を起こしているわけではなく、多くの細胞は既存の骨の表面で休止していることが知られている。活動中の骨細胞にのみアルカリフォスファターゼという酵素が発現しており、マーカーとして用いられている。

○まとめ


・骨芽細胞は、Ⅰ型コラーゲンとヒドロキシアパタイトを分泌して骨を形成する。

・環境をアルカリ性に保つことで骨の石灰化反応を促進する。

・間葉系幹細胞から分化する。




〇参考文献

・Qシリーズ 新組織学

・アステラス製薬 骨粗鬆症はなぜ起こるの?https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/osteoporosis/basicinformation02.html

・Wikipedia Osteoblast

褐色脂肪細胞
(brown fat cell)


○褐色脂肪細胞とは


褐色脂肪細胞は、多胞の脂肪滴(白色脂肪細胞は1つ)を持った褐色の脂肪細胞である。新生児や冬眠中の動物に多く見られ、脂肪を分解して熱を産生する働きを持っている。発生時から褐色を示しているものと、交感神経の刺激に応答して褐色を帯びるものの二群に分けられる。冬眠をしない動物であるヒトは、年を重ねるにつれて褐色脂肪組織を減らしていく。褐色は、豊富に含まれるミトコンドリアの鉄の色である。

なお、褐色細胞腫とは名前が似ているだけで何の関係もない.

関連:白色脂肪細胞



BAT

図1 Mouse体内における白色脂肪組織(WAT)と褐色脂肪組織(BAT)
 30度に順応したMouseの脂肪組織(左)に比べ、4度に順応したMouseでは脂肪組織が熱を産生するように褐色に変化したことがわかる。
 



○体内での位置


ヒト体内に存在する褐色脂肪組織は、FDG-PET(Positron Emission Tomography)によって検出することができる。FDGはグルコースの1つのOHを陽電子(Positron)放出核種である18Fに置換した化合物であり、PETは陽電子を検出する装置である。FDGは褐色脂肪細胞などの代謝が活発な細胞に多く取り込まれる。

胎児の褐色脂肪組織の多くは肩甲骨の間、鎖骨の上、副腎・大動脈・心臓・膵臓・腎臓の周囲などに蓄積され、成人になると鎖骨の上と胸腔、傍脊髄に蓄積するようになる。

○シグナル伝達


褐色脂肪細胞による熱の産生は、交感神経から放出されたノルアドレナリンが褐色脂肪細胞のβ3受容体(GPCR)に結合したシグナルから開始される。アデニル酸シクラーゼが活性化されてcAMP濃度が増加し、cAMPを結合して活性化したPKAが転写因子を活性化させることで、UCP1という脱共役タンパク質が合成されるようになる。

脱共役タンパク質は、ミトコンドリア内膜に存在するタンパク質のうち、プロトン勾配をATP合成以外の目的で利用するものを指す。UCP1はプロトン勾配のエネルギ―を熱の産生に用いるため、サーモゲニンとも呼ばれている。

またこのほかにも、ノルアドレナリンは脂肪分解を促進する働きを持つ。分解された脂肪は解糖系からクエン酸経路に入り、プロトン勾配を生み出すのに利用されている。

○まとめ


・褐色脂肪細胞は、蓄積した脂肪を用いて熱を産生する細胞。

・ミトコンドリアがプロトン勾配から熱産生することを脱共役という。

・褐色は、ミトコンドリアに含まれる鉄の色である。





〇参考文献
Wikipedia
 褐色脂肪組織
 脱共役タンパク質 

白色脂肪細胞
(white fat cell)


○白色脂肪細胞とは

白色脂肪細胞は、細胞内に一つの大きな脂肪滴(単胞)を持った白い細胞である。脂肪の蓄積を担っており、脂肪の代謝を行う褐色脂肪細胞とは真逆の働きを持つ。直径は最大で150μmにもなる大きな細胞で、大人では400億個ほど存在する。

 エネルギーの貯蔵と保温が主な役割であり、グルカゴン、アドレナリン、ノルアドレナリン、成長ホルモンなどが脂肪細胞のGPCRに結合すると脂肪分解が進み、エネルギーを産生する。

hakusyokusibou

図1 白色脂肪組織



○白色脂肪細胞の形成


白色脂肪細胞は、脂肪前駆細胞でPPARγという転写因子が働いて、脂肪滴を蓄えることによって生じる。脂肪滴に蓄えられている物質は脂肪であり、前駆細胞は血中のカイロミクロン等のリポタンパク質から取り込んでいる。

リポタンパク質は血中で不安定な疎水性の中性脂肪を両親媒性のアポタンパク質が覆って安定化した物質である。脂肪滴を溜め込んで肥大化した白色脂肪細胞は隣接する前駆細胞に働いてPPARγを活性化し、新たな脂肪細胞を生み出す。

Chylomicron.svg


図2 カイロミクロン
 ApoA-Eはアポタンパク質。T,Cは脂質。


従来、脂肪細胞は子供の頃にしか現れないと考えられてきたが、現在は否定されている。また前駆細胞と白色脂肪細胞は可逆的な変化であり、貧栄養時に脂肪滴を失った白色脂肪細胞は前駆細胞に戻る。


○産生する因子


白色脂肪細胞は、アディポネクチンやアンジオテンシノーゲン、レプチン、TNFαなどの様々な因子を産生し、体内環境を調節する働きを持つ。

・アディポネクチン
 アディポネクチンは、μg/mlレベルの高濃度で血中を流れているホルモンである。インスリンの感受性を高め、血糖値を下げる働きを持つ。脂肪細胞が多くなればなるほど濃度が低下していくという不思議な特徴を持つ。

・アンジオテンシノーゲン
  アンジオテンシンの前駆体である。アンジオテンシンはレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系に関与する物質であり、血圧の上昇作用を持つ。脂肪細胞が多くなると濃度も上昇し、高血圧を引き起こす。

レプチン
 レプチンは脳に体内の脂肪の量を伝えているペプチドホルモンであり、食欲を制御する神経細胞を抑制する働きを持つ。レプチン受容体を欠損したdb/db(diabete)マウス、レプチンを欠損したob/ob(obesity)マウスは食欲が収まらず、通常よりも太った個体として知られる。
 またレプチンは交感神経系を亢進させる働きを持っているため、過度の肥満は血管の収縮を引き起こし、高血圧を発症する。

・TNFα (Tumor neclosis factor alpha)
 炎症性サイトカインの一種であるTNFαは固形がんの壊死を生じさせるサイトカイン(腫瘍壊死因子)として発見されたが、インスリン感受性や脂肪組織のグルコース取り込みを低下させる作用も持つため、血糖値を上昇させて糖尿病を引きおこす向きに作用する。

○まとめ


・白色脂肪細胞は、脂肪を蓄えた大きくて白い細胞である。

・転写因子PPARɤによって分化誘導される。

・レプチン等のホルモンを産生し、体内環境を調節する。






〇参考文献
・Qシリーズ 新組織学
・脂肪細胞の正体 河田照雄

↑このページのトップヘ