ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

カテゴリ: 神経・脳に関する細胞

外套細胞
(Neurosatellite cell)


○外套細胞とは

外套細胞は、末梢神経の神経節におけるアストロサイトである。神経節膠細胞、衛星細胞とも呼ばれている。その機能は中枢におけるアストロサイトと同じく、神経細胞への栄養供給、構造支持、代謝調節などが考えられている。機能は似ているものの、アストロサイトのマーカーであるGFAPを発現していなかったり、アストロサイトに顕著な突起が見られなかったり、神経上皮由来のアストロサイトに対して外套細胞が神経堤細胞由来であったり、といった相違点も多い。一つの神経節に数十個の外套細胞が位置している。衛星細胞ともいう。


○神経節

神経節とは、神経細胞が集合した構造のうち、末梢にあるものを指す。具体的には①脊髄における後根神経節、②自律神経のニューロンが交代する神経節のほかに、③各感覚神経について一つずつ存在する。中枢神経における同様な構造は神経核と呼ばれ、大脳基底核がその代表例である。

脊髄後根は脊髄の後角に投射する部位である。後角神経節には求心性の感覚神経(皮膚・筋肉・腱)の細胞体が位置し、末梢に樹状突起、脊髄へ軸索を伸ばす。三叉神経(頭部皮膚)をはじめとする他の感覚神経も同様の神経節を構成しており、いずれも末梢で取得された情報が電気信号の形で伝わり、神経節の細胞体で統合されて脊髄へと送られる。

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図1 脊髄
 青が求心性(末梢→中枢)の神経、赤が遠心性(中枢→末梢)の神経を表す。後角の内部にある膨らみが後根神経節である。


自律神経の神経節は、中枢神経に細胞体を持つ節前ニューロンと、末梢を支配する節後ニューロンとがシナプスを形成する部位である。自律神経は交感神経と副交感神経を含み、脊椎の両側に位置している。交感神経の節前神経、副交感神経の節前神経、副交感神経の節後神経は伝達物質としてアセチルコリンを放出する一方で、交感神経の節後神経のみ神経伝達物質にノルアドレナリンを用いる。


○関連項目

○参考文献
・脳科学辞典
 神経節
・Wikipedia
 神経節
 神経節細胞
・Qシリーズ 新組織学 日本医事新報社
・チャート式 新生物 数研出版 

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上衣細胞
(Ependeymal Cell)


○上衣細胞とは

上衣細胞は、脳室の壁を構成する上皮細胞である。脳室は中枢神経系に存在する脳髄液に満たされた細胞の存在しない空間であり、大脳内部左右に側脳室・間脳には第3脳室・小脳と橋の間に第4脳室が存在する。上衣細胞は脳室側に多くの絨毛を持ち、髄液の流れを制御している。

○脳髄液循環

それぞれの脳室の一部の上衣細胞は脈絡叢と呼ばれるを形成し、脳髄液を産生している。脳髄液は側脳室→第三脳室→第四脳室の向きに流れ、第四脳室からは脊髄の中心管やクモ膜下腔へと流れる。そして髄液は最終的には頭頂部のクモ膜顆粒を介して上矢洞静脈に吸収され、血中へと戻っていく。

脳髄液は無色透明の液体であり、アルカリ性を示す。一人当たり130mL程度であり、1日に3、4回入れ替わっているという。脳の形や水分を保ち、不要物を除く働きを持つと考えられている。側脳室と第三脳室の間をモンロー孔、第四脳室とクモ膜下腔の間をマジャンディ孔、ルシュカ孔というが、これが閉じてしまうと脳内圧が上昇し、水頭症を生じる。

なお、採取することによる臨床的意義はないとされる。

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図Ⅰ 脳室


○上衣細胞の構造

上衣細胞には絨毛を持つものと持たないものの2種類があるが、前者が狭義の上衣細胞であり、後者をタニサイトと呼ぶ。上衣細胞がすべての脳室に分布するのに対し、タニサイトは第3脳室の壁にのみ分布している。

上衣細胞の絨毛は、中心体が変化した基底小体から伸びている。A,B2種類の微小管がペアのなした9+2型の絨毛であり、ダイニンの働きによって自由に曲げることが可能となっている。髄液の循環を助けていると考えられており、異常のあるマウスは水頭症に陥る。タニサイトの機能はよくわかっていない。

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図2 絨毛の構造


○物質の交換

上衣細胞のTJには隙間があるため、脳実質から脳髄液に対して受動的に不要物を流すことができる。またそれと同時にチャネルやトランスポーター類も発現しており、イオン濃度や浸透圧といった脳内環境の維持にも一役買っているようだ。

一方で脈絡叢は、毛細血管から脳髄液を産生する部位である。脈絡叢における血管内皮細胞は有窓性であるが、上衣細胞のTJが密に分布しているため、選択的に物質を通すことができる。脳脊髄液のK+、Ca2+、二酸化炭素、グルコースなどの濃度は血中より低く、よりアルカリ性に保たれている。脈絡叢は、脈が絡まった叢(くさむら)という字があてられている通り、毛細血管が多く、複雑な襞を持った構造をとっている。

○参考文献
・脳科学辞典 
 脳髄液 
 脳室 
 上衣細胞
・Wikipedia
 脈絡叢
 側脳室

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ミクログリア
(Microglia)


○ミクログリアとは

ミクログリアは、中枢神経に位置するグリア細胞の一つである。血液脳関門を通過できない白血球の代わりとして、ミクログリアが中枢における免疫を担当している。中胚葉由来である。損傷した神経を貪食したり、集積したアミロイドβを回収する役割を果たす。

○形態

ミクログリアは不活性型の時はラミファイド型、活性型の時はアメボイド型と呼ばれる構造を取る。ラミファイド型は小さな細胞体から多数の細い突起を四方八方に伸ばした構造で、その突起は絶えず伸び縮みを繰り返している。ATPやADP、アミロイドβなどに走化性があり、脳内の異常を検知することができる。ミクログリアはまたグルタミン酸にも走化性を持つため、シナプス周辺にも集まっている。

さて、異常を検知したミクログリアは突起の数を減らして細胞体を拡大させていくが、この状態をアメボイド型と呼ぶ。アメボイド型はマクロファージと類似し、免疫機能を果たしている。

また興味深い事項として、ラミファイド型ミクログリアは昼間よりも夜間のほうが突起の数が多く、長いということが知られている。プリンの受容体P2Y12の発現量が変わることを原因とするようだが、その意味は不明。概日リズムの調整か。

○機能

ミクログリアの機能には、液性因子の放出、シナプスとの相互作用、貪食の三つがあるといわれている。細胞が放出する走化性因子に従って必要な箇所に移動し、それぞれの役目を果たす。

まずミクログリアが産出する液性因子としては、TNFβやIL-1β、IL-6が知られている。いずれも炎症性のサイトカインであり、問題を起こした細胞の膜上の受容体に結合して炎症やアポトーシスの遺伝子を誘導する働きを持つ。他にもカプテシンS等いくつかの酵素を放出しており、概日リズムにも関与していると考えられている。

シナプスとの相互作用としては、不要なシナプスを排除する役目が考えられている。このプロセスはシナプス剪定と呼ばれ、発生段階及び海馬、視覚処理回路で行われている。ミクログリアは、記憶に何らかの形で関与しているのかもしれない。

三つ目の貪食は、マクロファージと同様な働きである。死んだ神経細胞を貪食して排除する一方、その物質を別の傷ついた神経細胞に送って再生を促すこと働きもある。P2Y12という受容体を介してプリン(アデニン・グアニン)を認識し、問題のある(外部に核酸を放出している)細胞を発見していると考えられている。


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図1 ミクログリアの機能(脳科学辞典)


○アルツハイマー病

アルツハイマー病は、脳が萎縮して認知障害に陥る認知症の一種である。大部分は70歳以上の高齢者に発病するが、5%程度の患者は遺伝的要因によって、若年のうちに発症している。その原因はアミロイドβというタンパク質が蓄積することにあると考えられており、凝集したアミロイドβは大脳に老人斑と呼ばれる染みを形成する。

アミロイドβはAPP(アミロイドβ前駆体タンパク質)という膜貫通タンパク質の細胞外部分であり、セクレターゼによって切断されて脳内を漂っている。Notchと類似しており、本来の働きは睡眠・覚醒の制御などが考えられている。ミクログリアはアミロイドβを除去する働きがあるとされ、老人斑の周りに集積しているのを観察することができる。

集積したアミロイドβがτ(タウ)タンパクを引きつけ、τタンパクが微小管を破壊することによって神経細胞を死に至らしめると考えられている。


○参考文献

・脳科学辞典
 ミクログリア
 P2Y受容体
・アルツハイマー病とミクログリア 樋口真人

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アストロサイト
(astrocyte)


○アストロサイトとは

アストロサイトは中枢神経に存在するグリア細胞の一種である。ニューロンの細胞体・シナプスや毛細血管、シナプス部位と接しており、ニューロンへの栄養供給、血液脳関門の形成、神経伝達の補助といった働きを持つ。日本語では星状膠細胞という。神経幹細胞から分化する。


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図1 アストロサイト


○GFAP

アストロサイトを観察する際は、多くの場合GFAPというタンパク質をマーカーに用いる。GFAPはアストロサイトに特異的に見られる中間径繊維であり、細胞の強度を支えている。血液脳関門のシグナル伝達に関与している可能性も示唆されているが、詳しいことはわかっていない。


○アストロサイトの構造

アストロサイトは上の方法などを用いて細胞骨格を染めると☆のように見えることから、星状膠細胞と名付けられている。しかし、実際のアストロサイトは遥かに多くの突起を伸ばし、枝分かれも豊富であるため、寧ろスポンジ状であるという。一つのアストロサイトがカバーする領域は非常に大きく、200万個もの神経細胞に一つのアストロサイトが接触していると考えられている。


○血液脳関門

血液脳関門は、血液から脳に対して選択的に物質を輸送する仕組みである。血管内皮細胞、周皮細胞、アストロサイトによって構成され、脳内の毛細血管の全てを覆っている。毛細血管はTJによって密着結合して間隙からの無秩序な物質交換を防ぎ、膜上に発現したチャネル、トランスポーターを介して必要な物質のみをやりとりしている。細胞膜を通過できる脂溶性の高い物質もまた、関門を通過することができる。


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図2 血液脳関門

さて、その血管内皮細胞とニューロンは直接接触しておらず、物質輸送にはアストロサイトを介している。血管内皮細胞はアストロサイト側にもチャネルやトランスポーターを発現し、アストロサイトも同様の膜を持つ。アストロサイトに取り込まれた物質はニューロンに運ばれ、同じような仕組みで供給される。グルコースの場合、アストロサイトで乳酸に変換された後でニューロンへ取り込まれている。


○神経伝達の補助

神経細胞が伝える活動電位は、Na+イオンを細胞内に流入させ、K+イオンを細胞外部に放出する一連のやりとりである。神経伝達が正常に行われるためには外部環境が定常であることが求められるが、それを担うのがアストロサイトである。アストロサイトもまたK+、Na+などのチャネル、トランスポーターを持っており、脳内イオン濃度の維持に努めている。

また、シナプス部位のアストロサイトはグルタミン酸やGABA、グリシンといった神経伝達物質を素早く取り込み、信号を初期化する働きも持っている。この働きによって神経伝達の頻度を上昇させることができる。

○シナプス可塑性

シナプス可塑性とは、シナプスに発現するチャネルなどが変化し、情報伝達効率が変わることをいう。例えば集中している場合、目の奥のマイネルト基底核からアセチルコリンが放出され、記憶力の向上につながる。

アセチルコリンは直接ニューロンに働いて可塑性を生むと考えられてきたが、近年実はアストロサイトが受容してシグナルを出していることが判明した。アセチルコリンを受容したアストロサイトはCaチャネルを開き、D-セリンの含まれる顆粒を放出する。D-セリンはシナプス後膜のNMDA型グルタミン酸受容体に結合して開きやすくする働きがあるため、結果としてアセチルコリンの放出が伝達効率の向上を促進する。

またアストロサイトはD-セリンのみならず、S-100βというタンパク質も放出している。これもシナプス可塑性に関与すると思われるが、統合失調症患者の脳髄液に多く含まれることが分かっているため、新たな治療につながる可能性が期待されている。

○参考文献

・脳科学辞典
 グリア細胞
 血液脳関門
 中間径フィラメント
・2016年9月RIKEN NEWS
 「グリア細胞”アストロサイト”は脳内で何をしている?」

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神経幹細胞
(Neural stem cell)


○神経幹細胞とは

神経幹細胞は、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへ分化する能力を持った幹細胞である。発生に際してそのほとんどは死滅するが、一部は海馬や側脳室に生き残り、分化を続けている。


○分化と制御

神経幹細胞は非対称分裂によって新たにできた細胞の片方のみを分化させているが、その分子機構はbHLH型転写因子の働きによる。bHLHはbasic Helix Loop Helix ドメインでDNAと結合する分子の名称であり、分化においてはAscl1、Olig2、Hes1という3つの因子が作用している。

もう片方の細胞は自己複製となるが、こちらにはNotchとHesのシグナル経路が働く。Hesという同一分子がいかにして違う働きを持つかは不明である。

また、神経幹細胞が全て同一種で刺激によって分化するのか、それともはじめから分化運命が決まっているのかについても議論があり、よく分かっていない。

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図1 神経幹細胞の分化


○bHLH型転写因子

Ascl1は神経細胞、Hes1はアストロサイト、Olig2はオリゴデンドロサイトへそれぞれ分化させる因子であるが、未分化状態においてはいずれの発現量も周期的に振動している。何らかの刺激で分化が誘導されると一つの因子の蓄積が起こり、作用を及ぼす。この機構に、発現増強と分解抑制が関与すると考えられされている。

共通の特長は、2本のαヘリックスがループを介して近接する、bHLHドメインを有することである。発現量が十分に増えて二量体を形成すると、例えばAscl1は5'CANNTG3'というEbox領域に結合し、下流の遺伝子を発現させるようになる。中枢神経における分化の大まかな方針だけではなく、末梢神経における運動神経か感覚神経か等の複雑な分化にも、bHLH型転写因子が関与している。


○Notch経路とHes

Notchとは、神経幹細胞に見られる1回膜貫通タンパク質である。隣接する細胞の膜タンパク質であるDeltaやJaggedのリガンドとして働く。リガンドと結合すると、Notchの細胞内部分(NICD)が切り出されて転写因子となり、様々な遺伝子を発現させをる。Hesはその標的遺伝子の1つである。

発生段階においては、まず神経幹細胞の自己複製のみが続いて数を増やし、次いで神経細胞が分化し、最後にグリア細胞が分化する。Notch-Hes経路は、神経細胞の分化前は分化抑制へ、神経細胞の分化後は分化の促進に働くという二面性を持っている。
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図2 Notchシグナル


○成体神経幹細胞

 神経幹細胞の多くは発生段階で消失し、成体にはほとんど見られない。これは、各々の神経幹細胞には自己複製の回数制限があるためと考えられている。成体海馬や即脳室でわずかに見られる神経幹細胞は、p57というタンパク質が発現して分裂を抑えているために生存できるのだと考えられている。


○関連項目
神経細胞
オリゴデンドロサイト
・アストロサイト


○参考
・脳科学辞典 
 神経幹細胞 
 Notch
 bHLH型転写因子
・京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131101_1.htm

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