ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

カテゴリ: 腎臓に関する細胞

尿細管上皮細胞
(renal tubular epithelial cell)

〇尿細管上皮細胞とは

尿細管上皮細胞は、その名の通り尿細管の上皮細胞である。近位尿細管ヘンレループ遠位尿細管緻密斑でそれぞれ異なる特徴を持つ。

〇尿細管

尿細管は、ボウマン嚢で濾過された原尿を運ぶ管である。ボウマン嚢や糸球体は腎臓の皮質に位置しているが、原尿は尿細管を通って髄質へと運ばれる。その後、ヘンレのループで向きを反転して再び皮質に戻り、集合管へと注がれている。ヘンレループより前を近位尿細管、ヘンレループより後の部分を遠位尿細管という。

ネフロン
図1 尿細管の構造 
 (https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1847 より)
 



〇近位尿細管

近位尿細管に位置する上皮細胞は立方で円形の核を有し、強い好酸性を示す。基底膜に基底線条、管腔側には刷子縁と呼ばれる構造が見られる。基底線条はミトコンドリアが縦向きに密に並んだ構造であり、産生するエネルギーを用いて再吸収を行っている。刷子縁は不揃いな微絨毛が密に形成された構造であり、近位尿細管のみに見られる。

近位尿細管は最も再吸収が盛んな部位であり、ほぼすべての糖やアミノ酸、Na、Clイオンなどが能動的に再吸収されている。浸透圧を利用した水の再吸収も行われており、結果として原尿の65%はここで吸収されることになる。


〇ヘンレループ

ヘンレループは近位尿細管に続く部位で、非常に細い。上皮細胞は単層の扁平であり、絨毛はなく、ミトコンドリアも非常に少ない。水やイオンの再吸収を行っている。皮質から髄質方向への前半部を下行脚、髄質から皮質への後半を上行脚という。

ヘンレループでの再吸収は、対向流交換系という仕組みを用いている。前提として、腎臓の髄質は深くなればなるほどイオン濃度や浸透圧が高いという特徴をもつ。

下行脚の上皮はイオンの透過を許さずに水のみを透過するため、深くなるにつれて原尿の浸透圧は上昇していく。同時に外部環境も深くなることで浸透圧が上昇していくため、水の再吸収は続く。一方、上行脚ではイオンの能動的再吸収が起こるものの、水の透過を許さない。そのため上に行くにつれてイオン濃度が低下していくが、輸送効率も低下していくため、髄質の濃度勾配を作り出していると言える。

30%程度の原尿はここで再吸収される。

ヘンレループ
図2 ヘンレループ


〇遠位尿細管

ヘンレループの次の部位で、ミトコンドリアが豊富に存在する。基底線条はみられない。副腎皮質から分泌されるアルドステロンが作用すると、Na+を再吸収し、K+を排泄する。Na+と同時に水も再吸収されるため、血圧をあげる向きに働く。炭酸水素塩を吸収し、プロトンを分泌することによって血液のpHを上げるように調節する働きもある。

遠位尿細管上皮のうち、特に糸球体に近い部分を緻密斑と呼ぶ。丈が高くて密集していることがその特徴であり、尿中のCl-イオン濃度の低下に反応してプロスタグランジンを生成し、傍糸球体細胞からのレニンの産生を促す





〇参考文献
・看護roo 利尿薬の選び方
・Qシリーズ 新組織学

傍糸球体細胞
(Juxtaglomerular cell)


○傍糸球体細胞とは

傍糸球体細胞は糸球体に隣接する細胞種であり、尿細管上皮細胞や糸球体外メサンギウム細胞と共に傍糸球体装置を構成する。緻密斑からのシグナルに応答してレニンを産生する働きを持つ。輸入細動脈の壁に位置していることから、特殊化した平滑筋細胞と考えられている。


糸球体

図1 糸球体
 6で示された細胞が傍糸球体細胞である。緻密斑(7)と糸球体外メサンギウム細胞(5b)と共に傍糸球体装置を形成する。9が輸入細動脈である。





○レニン分泌制御

血圧が低下したとき、ろ過効率が低下するため、尿細管を流れる原尿の量は減少する。ところがヘンレのループにおけるNa、Clイオンの能動的な再吸収効率は変わらないため、遠位尿細管でのNa、Cl濃度は低下する。遠位尿細管の緻密班は尿中Cl-濃度を検知する機構を持っており、低濃度の時に多くのプロスタグランジンを放出して傍糸球体細胞を刺激する。刺激を受けた傍糸球体細胞がレニンを輸入細動脈に放出することによって、レニンーアンジオテンシンーアルドステロンが始まる。

また傍糸球体細胞はアドレナリンβ1受容体を持っており、交感神経からのノルアドレナリンの刺激によってもレニンの産生を増大させることができる。「闘争と逃走」の神経である交感神経の刺激でレニンが増加し、血圧が高まる。

○レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系

レニンは、肝臓や脂肪細胞にて合成されたアンジオテンシノーゲンというタンパク質のペプチド結合を切断し、10アミノ酸から成るアンジオテンシンIを合成する酵素である。合成されたアンジオテンシンIは血中を流れて肺の毛細血管に至り、アンジオテンシン変換酵素(ACE)等の作用を受けてアンジオテンシンIIとなる。

アンジオテンシンIIは血管平滑筋に作用して収縮を強めると同時に、副腎皮質の球状帯に作用してアルドステロンの分泌を、脳下垂体に作用してバソプレシンの分泌を促す。アルドステロンは尿細管におけるNaの再吸収を促進(血中Naの増加=浸透圧の増加=水分の増加)し、バソプレシンは利尿を抑えるホルモン(血流量増加)である。アンジオテンシンはこれら三つの作用によって血圧を高めている。これらを総称してレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系と呼ぶ。レニンを阻害するアリスキレンは、高血圧の治療薬として用いられている。




〇参考文献
・アリスキレン
 http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/091029html/index.html
・Wikipedia 
 レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系 
 傍糸球体細胞

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メサンギウム細胞
(mesangial cell)

〇メサンギウム細胞とは

メサンギウム細胞は、腎臓に位置する細胞の一群である。「メサンギウム」の単語はラテン語で「meso」+「angis」であり、「meso」は「間」、「angis」は毛細血管を意味する。すなわちメサンギウムは「毛細血管の間に詰まっている構造」であり、「メサンギウム」の語は細胞のほかにメサンギウム基質、毛細血管の基底膜を含む。


〇糸球体内メサンギウム細胞

糸球体内メサンギウム細胞は、その名の通り糸球体の内部に存在するメサンギウム細胞である。糸球体外のメサンギウム細胞とは位置ばかりでなく機能も異なるため、区別されている。糸球体内メサンギウム細胞は食作用を有するが、線維芽細胞の一種として基底膜に似たメサンギウム基質を産生して毛細血管の間を埋める働きを持つ。その機能は糸球体構造の維持と考えられる。


糸球体
図1 糸球体
 5aが糸球体内メサンギウム細胞、5bが糸球体外メサンギウム細胞である。





〇糖尿病性腎症

糖尿病を患い、血糖値が高くなった患者はしばしば腎臓の障害、すなわち腎機能低下と蛋白尿症を併発し、いずれ腎不全を発症する。糖尿による腎障害の原因は糸球体基底膜・メサンギウム基質の拡大にあると考えられており、これによって腎臓の濾過機能が破綻することによる。アルブミンやグロブリンといった血漿タンパク質が糸球体のバリアを超えて尿に流入するようになると免疫機能不全などの症状を引き起こし、また基底膜の肥大は毛細血管を圧迫して腎機能の低下も招く。

さて、メサンギウム基質が拡大する理由であるが、それにはメサンギウム細胞の食作用が関係する。高血糖・高脂血症である種の蛋白質が凝集すると、メサンギウム細胞はそれをエンドサイトーシスで取り込んで分解する。この際にメサンギウム細胞のpHが低下して、TGFβなどのサイトカインを傍分泌して同種の細胞の分裂を促し、さらに基底質の産生能を向上させている。


〇糸球体外メサンギウム細胞

糸球体外メサンギウム細胞は、糸球対外に位置するメサンギウム細胞であり、傍糸球体装置を形成する細胞の一つである。その機能はあまりわかっていないが、エリスロポエチンとレニン(?)を分泌していると考えられている。

糸球体
図2 糸球体
 5bが糸球体外メサンギウム細胞、7が緻密斑、6は傍糸球体細胞である。





〇傍糸球体装置

糸球体の傍に存在して尿量調節を担っている傍糸球体装置は、糸球体外メサンギウム細胞、遠位尿細管の緻密斑、輸入細動脈の傍糸球体細胞から構成される。緻密斑は尿細管の特殊な上皮細胞であり、尿中のCl-イオンの濃度センサーの役割を果たす。濃度に応じて傍糸球体細胞のレニン分泌を制御し、血圧や濾過量を変動させている。

詳細は各細胞のページにて。→傍糸球体細胞


〇エリスロポエチン

糸球体外メサンギウム細胞が産生するエリスロポエチンは、骨髄の造血幹細胞に作用して巨核球や赤血球への分化を誘導するタンパク質ホルモンである。慢性腎不全によってエリスロポエチンが産生できなくなった場合、赤血球が不足して悪性貧血に陥る。また、エリスロポエチンは赤血球を増やすことからドーピングにも用いられている

血中の酸素分圧によって産生は制御されており、低酸素応答因子のHIFがその分子機構の鍵となる。HIFは低酸素状態で核内に移行し、転写因子として働いてエリスロポエチンの産生を促進する。通常の酸素分圧でのHIFは翻訳されて間もなくユビキチン化され、プロテアソームに分解されるが、低酸素状態ではユビキチン結合の活性が鈍るため、働くことができる。がんも低酸素状態にあるため、HIFがよく働いている。

〇参考文献

・明治薬科大学 薬効解析学研究室
http://www-yaku.meijo-u.ac.jp/Research/Laboratory/effic_anal/report.html
・Wikipedia 「糸球体外メサンギウム細胞」「糸球体内メサンギウム細胞」

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足細胞
(Podocyte)

〇足細胞とは

足細胞は、腎臓ボーマン嚢の臓側壁を構成する上皮細胞である。突起を伸ばして毛細血管の周りを覆っており、産生する基底膜と共に、ろ過機能を構成する働きを持つ。足細胞はタコ足のように突起を伸ばして毛細血管全体を覆っているので、その見た目から別名を蛸足細胞ともいう。

〇腎小体



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図1 腎小体の模式図
 赤で示されたのが糸球体、桃色がボウマン嚢である。
 糸球体に接しているボウマン嚢の上皮細胞が足細胞を示している。

毛細血管が丸く集まった糸球体と、その周りを覆うボーマン嚢という二つの構造を合わせて、腎小体という。腎小体は血液から原尿を作り出す部位であり、一つの腎臓に100万個も存在する。マルピーギ小体とも呼ばれる。腎小体は球状であり、血管が出入りするところは血管極、反対側は尿管側と呼ばれる。

腎小体に入っていく血管を輸入細動脈という。輸入細動脈を流れる血液は糸球体に入って濾過され、尿細管に流れ込む。この液体を原尿と呼び、一日に180L程度である。一方で濾過されずに残った物質は輸出細動脈に流れ、糸球体から外へ出ていく。

糸球体の毛細血管内皮細胞は有窓性であり、70nm程度の穴が無数に開いている。その穴は血球は通さないものの、濾過には大きすぎるため、濾過は主に内皮細胞を覆っている通常より厚い基底膜が担っていると考えられている。基底膜は内皮側から内淡明層、緻密層、外淡明層という3層構造を持ち、外淡明層の外側には足細胞が接している。基底膜は足細胞が生産すると考えられている。





〇濾過

基底膜の内淡明層にはへパラン硫酸などのペプチドグリカン(負電荷)が多く含まれており、負に帯電したタンパク質がボーマン腔に侵入するのを防いでいる。ペプチドグリカンは、負に帯電したグリコサミノグリカンと呼ばれる糖鎖がペプチド鎖のセリンと結合した構造である。また、足細胞の突起も細胞膜に負電荷をもったグリコカリックスという糖タンパク質を発現し、同様の働きを示す。突起の間にはスリット膜と呼ばれる薄い膜が張られ、物質通過を抑制する。そして、緻密層にはコラーゲンが緻密に詰まっており、物理的な障壁を形成する。これらの濾過障壁の働きによって、原尿には分子量6万以上、または3.6nm以上の分子は含まれないことになる。

へぱらん
図2 へパラン硫酸
 上のような糖鎖に硫酸基がついた構造を持ち、負電荷を持つ。



濾過の効率は、血圧・ボウマン嚢内圧・膠質浸透圧という3つの圧力の重ね合わせで決定される。血圧は効率を高める一方で、ボウマン嚢内圧膠質浸透圧水を血管に戻す向きに働く。膠質浸透圧は血中に含まれるアルブミンというタンパク質が原因となっているが、アルブミンは分子量67000と大きいために濾過されず、また組織液にもならないため、常に血中に残り、浸透圧を生み出している。

〇発生

腎小体は、腎動脈とボウマン嚢原基との相互作用によって形成されている。ボウマン嚢ははじめ円錐型をとって直線的な腎動脈の近くに存在しているが、次第に腎動脈を引き付けて、嚢自身も内側にめり込んでいく。そしてついにはボウマン嚢は血管を包み込んで球状となり、血管側とそうではない側の区別が生じる。血管側の上皮細胞を臓側板、層でない側は壁側板と呼び、臓側板のボウマン嚢上皮細胞が足細胞となる。

「Glomerulus development」の画像検索結果
図3 腎小体の発生



〇参考文献

・Qシリーズ 新生理学  日本医事新報社
・初心者のための腎臓の構造 坂井健雄

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