ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

カテゴリ: 血液に関する細胞

周皮細胞
(Pericyte)


○周皮細胞とは


周皮細胞は、毛細血管と小静脈において内皮細胞を囲うように存在する、多能性間葉系細胞である。

血管形成や毛細血管の構造維持、血流の調節に関与し、脳においては神経血管単位を成して血液脳関門の維持に働く。非毛細血管の構造を支えている平滑筋細胞と合わせて、
血管壁細胞ともいう。

周皮細胞の核は楕円形であるため、扁平な血管内皮細胞とは明確に区別することができる。周皮細胞は血管内皮細胞と直接接触しており、傍分泌やギャップ結合によってシグナルを伝えている。


血管

図1 周皮細胞は内皮細胞の外側に位置する細胞である。
 Mills et al., 2013 を日本語に翻訳


関連:血管内皮細胞



○PDGFと周皮細胞


周皮細胞が血管内皮細胞の近傍に集積するためには、血管内皮細胞が分泌するPDGF-B(血小板由来政調因子)が重要な役割を果たすことが知られている。PDGF-Bは241アミノ酸から成るタンパク質であり、周皮細胞の膜状に位置するPDGFR-βという受容体に受容され、増殖・移行が促進される。


特に血管新生の場面において、周皮細胞は盛んに集積る。「血管新生」は既存の血管が枝分かれを起こす現象のことを意味し、創傷治癒や子宮、がんにおいて観察される。


血管内皮細胞が分泌するPDGF-Bによって新生血管の近傍に移行した周皮細胞は新生血管の構造を安定化する。またそれと同時に、周皮細胞はVEGF(血管内皮増殖因子)やAngiopoietin-1を分泌して血管内皮細胞の分裂を促す。また、VEGFを受容した内皮細胞はMMP(マトリックスプロテアーゼ)を放出して基底膜を分解するため、さらに周皮細胞は血管新生を促進する働きも果たしている
Angiogenesis
図2 血管新生(Angiogenesis)と脈管形成 (Vasculogenesis)


○血液脳関門


脳においては、周皮細胞は血液脳関門を調整する働きを持つ。血液脳関門とは、血液から脳に流入する物質を規定している機構のことである。血液に触れている内皮細胞が密に密着結合することで間隙からの無制御な物質通過を許さず、細胞膜上のABCトランスポーターやチャネルが選択的な物質交換を行う。また、脂溶性が高い分子は細胞膜を透過して、関門を通過することができる。


グルコースを例とすれば、血管内皮細胞は血液側に発現したSGLTによってグルコースを取り込み、脳側膜上に発現したGLUT1によって脳の側に供給することができる。血液脳関門はほかのエネルギー源である脂肪酸は通過させないため、脳にとってグルコースが唯一の栄養源となり、血糖値の維持が脳の機能にとっては重要となる。グルコースのほかにもアミノ酸等が脳内に取り込まれ、神経伝達物質等の不要物が血中に入る。


血液脳関門において、内皮細胞の周囲には周皮細胞、その周りにはアストロサイトが存在している。周皮細胞はAngiopoietin1というタンパク質を発現しており、血管内皮細胞の細胞膜上の受容体(Tie2) と結合することにより、血管内皮細胞の密着結合関連の遺伝子発現や細胞分裂を誘導している。周皮細胞を無くした条件においては、血液脳関門が形成されないことが報告されている。


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図2 血液脳関門
 脳内を走る毛細血管は、ほとんどの部位で上のような構造をとっている。




○周皮細胞の分化

周皮細胞は中胚葉由来の細胞であり、平滑筋細胞と前駆細胞を共通している。また周皮細胞自身も多能性間葉系細胞としての側面を持ち、骨芽細胞、マクロファージ、神経細胞、オリゴデンドログリア、脂肪細胞、シュワン細胞、線維芽細胞への分化能が認められている。

関連: 骨芽細胞 マクロファージ 神経細胞 オリゴデンドログリア 白色脂肪細胞 シュワン細胞 線維芽細胞

○関連項目

血管内皮細胞

〇参考文献
・Pericytes promote endothelial cell survival through induction of autocrine VEGF-A signaling and Bcl-w expression(2011); Marcela Franco et.al.
・タカラバイオ 製品概要
http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?unitid=U100007073
・Wikipediaの各項目
 Pericyte
 血液脳関門
・なぜ周皮細胞か? 吾郷哲郎
・Pericytes regulate the blood–brain barrier(2010), Annika Armulik et.al 
・脳科学辞典 血液脳関門

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巨核球
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○巨核球とは


巨核球は、血小板の前駆細胞である。血小板は巨核球の細胞質がちぎれることによって形成される。巨核球は分裂することなしに遺伝子複製を行うため、遺伝子を64Nか32Nも保有(一般の細胞は2N)し、巨大な核を持つ。細胞の直径は40µm~160µmと、赤血球(7µm)に対して圧倒的に大きく、骨髄最大の細胞である。

造血幹細胞を始まりとし、骨髄性前駆細胞や巨核芽球を経て巨核球に分化する。一つの巨核球からは1000個もの血小板が産生され、全ての細胞質を失って裸核となるに至り、マクロファージに食される。

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図1 巨核球 Wikipediaより
骨髄の標本であり、巨核球は矢印で示されている。



○トロンボポエチン

トロンボポエチンは、造血幹細胞から巨核球への分化を促す主要なシグナル分子である。トロンボポエチンは主に肝臓で分泌されて血中を流れている60kDa程度の糖タンパク質であり、血小板が不足した際は骨髄や脾臓にてさらに産生される。トロンボポエチンが造血幹細胞の膜上にあるc-mplという受容体に受容されると、受容体は2量体化してチロシンリン酸化、JAK-STAT経路の活性化が起こり、分化方向へシグナルが伝わる。

c-mplは分裂を誘導する働きがあることから、がん原遺伝子(Proto-Oncogene)に分類される。レトロウイルスの一種、骨髄増殖性白血病ウイルス(MyeloProliferative Leukemia virus)が持つ、v-mplという遺伝子との相同性からこの名がつけられた。

トロンボポエチン以外にも、数種のインターロイキンやエリスロポエチンも血小板産生の方向に働く。
エリスロポエチンは赤血球の分化を誘導する因子として知られているが、トロンボポエチンと構造・機能がともに類似している。

○細胞内分裂(endomitosis)

巨核球は幹細胞(2N)からの分化の過程で細胞質分裂を伴わない細胞周期サイクルを回していき、遺伝子量を増大させる。この機構を細胞内分裂(endomitosis)という。

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図2 endomitosis
https://www.researchgate.net/figure/RhoA-coordinates-cytokinesis-of-promegakaryocytes-and-endomitosis-of-megakaryocytes-by_fig1_255737220 より引用


巨核球の細胞周期において、G1期、S期、G2期は通常と同じであり、S期にDNAは2倍に複製される。分裂期も分裂中期=Metaphase、分裂後期=Anaphase onsetまでは普通であり、染色体は凝集して中央に並び、紡錘体によって両側に引っ張られる。ところが中央に位置するアクチン収縮環が消滅しないために細胞質分裂を起こすことができず、やがて再び細胞は丸くなり、多核化する。アクチン収縮間の消滅にはRhoAというGタンパク質がかかわっており、巨核球においてはRhoAが働いていない。



〇関連項目
血小板

〇参考文献
・TPO/C=MPLシステムのシグナル伝達機構 小田淳 JST

・Wikipediaの各項目
 巨核球
 トロンボポエチン
 Megakaryocyte

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赤血球
(Red blood cell)


○赤血球とは


赤血球は、酸素と二酸化炭素を運ぶ働きをもつ、血液の主成分である。中央がくぼんだ円盤型をしており、赤いヘモグロビンを大量に含んでいる。その働きはガス運搬に特化しているため、酸素を消費するミトコンドリアや、分裂に必要な核を持たない。大きさは約7μm。血中に20兆個あると言われ、これは人の全細胞の3割から5割を占めている。

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図1 赤血球




○赤血球の分化・形成


赤血球は、赤芽球と呼ばれる細胞から核やミトコンドリアが脱離したものである。赤芽球は骨髄において、造血幹細胞から骨髄系前駆細胞など数段階の分化を経て形成される。分化段階の各前駆細胞にはそれぞれ高い分裂能があるため、1日2000億個もの赤血球を供給することができる。核を失って(脱核)成熟した赤血球は血液へと流れ出し、全身を循環する。

 骨髄における赤血球の最大の産性能は通常発揮している分の5倍程度と言われており、それは貧血の際に発揮される。貧血、すなわち血中の赤血球が少ない状態は腎臓の尿細管の細胞が感知し、エリスロポエチンというホルモンを血中へ分泌する。エリスロポエチンを受容した骨髄系前駆細胞は分裂頻度を高め、赤血球の総量を増やす。エリスロポエチンは血中酸素を高めることから、かつてはドーピングにも使われていた、腎臓の不調による赤血球不足は腎性貧血と呼ばれている。

○赤血球の破壊


赤血球の寿命はおよそ120日である。古くなった赤血球は脾臓や肝臓でマクロファージに食され、破壊される。
若い赤血球はエネルギーを嫌気性解糖系で産生し、イオンバランスを維持することで柔軟性を保っているが、老化すると柔軟性を失って、毛細血管を通過しづらくなる。肝臓と脾臓には特に細い血管が張り巡ら されており、動きを止められた赤血球が待ち構えていたマクロファージに食されている。他にも、老化した赤血球がフォスファチジルセリン(ATPの不足によるフリッパーゼ不全)や特定の抗原を露出させてしまうことによっても食される。


ヘモグロビンの鉄分やアミノ酸は再利用されるが、ヘムの代謝物であるビリルビンという黄色い色素は胆汁や尿から排出される。糞尿の色はここに起因する。
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図2 ヘム

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図3 ビリルビン


○ヘモグロビン


 赤血球に含まれているヘモグロビンは、酸素を運搬する分子である。αサブユニット、βサブユニットをそれぞれ二つずつ持った四量体の構造を持ち、各サブユニットは鉄ーポルフィリン錯体のヘムと、それを囲うタンパク質のグロビンからなる。
ヘモグロビンは、赤血球から核が脱落する前の段階で合成される。ミトコンドリアでヘムが、リボソームによってグロビンが合成され、それが細胞室内で出会うことによって、ヘモグロビンとなる。

酸素は二価のヘム鉄に配位して運搬される。一つのヘムに酸素が結合すると他三つにも結合しやすくなるという、正のアロステリック調節が見られる。酸素が結合した状態をオキシヘモグロビンと呼び、結合していない状態をデオキシヘモグロビンという。前者は鮮赤色で動脈の色、後者は静脈血の暗赤色を示す。また、二価の鉄イオンは酸素に酸化されて三価になることがあるが、この状態をメトヘモグロビンという。メトヘモグロビンには酸素と結合する能力はないため、赤血球内の還元酵素は速やかにこれを二価に戻していく。

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図4 ヘモグロビンの構造 
 α(青)、βサブユニット(赤)が2つずつの4量体である。

○酸素の運搬


ヘモグロビンは、酸素分圧が高く二酸化炭素分圧が低い肺胞で酸素を受け取って酸素分圧が低く二酸化炭素分圧が高い毛細血管にて酸素を放出する。酸素とヘモグロビンの結合は酸素解離曲線に依存するが、その機構をボーア効果という。

ヘモグロビンには酸素を結合しやすい開いた状態(R)と、結合しづらい閉じた状態(T)という二種類の構造がある。閉じた状態では、αサブユニットのN末端がプロトン化されて正電荷を帯びており、周囲のカルボニル基と相互作用を起こしている。このため、CO2分圧が高い環境、すなわちpHの低い環境においては、閉じた状態が安定となって酸素結合能が低下するのである。 また、CO2自身が直接αサブユニットのN末端と結合して閉じた状態を安定化する働きがある。

酸素を放出したヘモグロビンはCO2を取り込んで肺に運搬し、排出している。肺ではCO2が低く、pHは高く、開いた状態が安定となって酸素と結合しやすくなる。



図5 酸素乖離曲線


○高地順応


pHによるボーア効果以外にも、人は 2,3-BPGという物質によって赤血球の酸素親和性を調整する機構を持つ。 2,3-BPGは解糖系で産生され、ヘモグロビンの酸素親和性を弱める働きがある。

 酸素の薄い高地(2100m以上)において、肺におけるヘモグロビンと酸素との結合は弱くなるが、それでも組織としては十分な酸素を放出してもらわなければ困るため、2,3-BPG濃度を高めて組織における酸素親和性を通常よりさらに落とすことによって活動を可能としている。また、酸素不足は頸動脈でも感知されて呼吸の増加を引き起こし、さらに腎臓からはエリスロポエチンが放出され、赤血球数は増加する。これらの機構によって標高4000mに順応するのには、およそ40日かかると言われている。

○ABO式血液型


輸血において問題となる、ABO式血液型とRh血液型について述べる。まずA型とは、赤血球の表面にA抗原という糖鎖をもつ血液型である。B抗原に対するB抗体も持っている。B型はその逆であり、B抗原とA抗体を持つ。O型は抗原を持たず、A抗体、B抗体を持つ。AB型はその逆で、A抗原、B抗原を持つが、抗体を持たない血液型である。

このことから、血球成分を輸血する場合、O型の血球はすべての人に提供でき、AB型は異なる血液型の人に対して一切提供出来ないことが言える。逆にいえば、O型は異なる血液型の血を受け入れることができず、AB型はどんな血球も受け入れることができる。

一方、血漿を輸血する場合にはこの逆となる。血漿には抗体グロブリンが含まれるため、O型の血漿を異なる血液型の人に提供してはならない。この両方の性質を利用して、事故等で急な輸血が必要な血液型が不明な患者に対しては、AB型の血漿とO型の血球が輸血される。

 対立遺伝子はABOの三種類で、AとBが優性である。AO、AAでA型の表現形を示す。

○Rh血液型


Rh血液型は、赤血球表面の抗原による血液の分類である。血球表面はいくつもの抗原を持つが、D抗原という抗原には遺伝の個人差があり、分類に用いられる。D抗原を持つ人をRh+、持たない人をRh-という。D抗原が優性遺伝することもあって、日本人は99.5%がRh+である。もしRh-の人にRh+の血液を輸血すると、Rh-の人が持つ抗体が結合して凝固してしまうため、注意が必要である。

○鎌状赤血球症

  
  鎌状赤血球症は、グロビンタンパク質の変異を原因として、低酸素時に赤血球が鎌型に変形する疾患である。酸素が結合しているときは円盤型を保つが、ヘモグロビンから酸素が乖離するとグロビンが構造を変化させ、赤血球は鎌型に変化する。鎌型赤血球は脆くて溶血を起こしやすいため、この疾患の症状は主に貧血である。

 アフリカの黒人に多く、マラリアによる選択圧が原因と考えられている。マラリアは蚊を媒介する疾患で、その原虫は赤血球内部で成長・増殖して血中に脱出する。ところが鎌型の環境は生存に悪条件であり、またすぐに溶血してしまうため、十分に成長することができない。このため、鎌型赤血球症はマラリアに抵抗性があるのだと考えられている。

 とはいえ、鎌型の遺伝子をホモで持った場合は深刻な貧血で死に至り、繁殖に不利に働く。このバランスによって鎌型赤血球症の遺伝子は一定量に保たれていると考えられている。ヘテロ遺伝子の場合、異常な赤血球の割合は4割程度とされる。

○コオリウオ


余談であるが、南極に住むコオリウオは脊椎動物で唯一赤血球を持たず、透明な血液を持っている。南極海は摂氏0度前後と低温であり、その環境では水/海水に十分酸素が溶けるためである。

コオリウオ
図6 コオリウオ




○参考文献

・東京Zooネット
 https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=kasai&link_num=19672

・小児慢性特定疾病情報センター 鎌状赤血球症
https://www.shouman.jp/details/9_8_13.html

・Wikipediaの各項目
 赤血球
 鎌状赤血球症
 ボーア効果
 高地順応
 

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血管内皮細胞
(blood vessel endothelial cell)


○血管内皮細胞とは


 血管内皮細胞は、文字通り血管の内皮に存在し、血液が流れる内腔と接している扁平な細胞である。心臓、動脈、静脈、毛細血管など、全ての血管について1種類である。血管収縮や血液凝固、血管新生、炎症等に関係する。間隙を通じ、血管内外の物質をやり取りする機能がある。血管内皮細胞は扁平であるが、その長軸は血管の向きと一致する。

○血管の構造


 一般に、血管には内膜・中膜・外膜の三層構造が存在する(ただし毛細血管は内膜のみ)。内膜には1層の血管内皮細胞と内皮下組織から、中膜血管平滑筋から構成される。内膜を取り巻く弾性繊維を内弾性板、平滑筋を取り巻く弾性繊維を外弾性板と呼ぶ。外膜結合組織繊維であり、血管の血管と呼ばれる構造が見られる。

 静脈は動脈よりも圧力が強いために中膜が薄く、逆流を防ぐ弁が見られる。また、傷による失血死を防ぐため、静脈のほうが体表側に存在する傾向がある。

 また、血管の外側には周皮細胞と呼ばれる細胞が存在する。

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図1 血管の構造



○毛細血管


 毛細血管は1層の血管内皮細胞と内皮下組織とによって作られる、平滑筋が存在しない血管と定義される。太さは7µm前後で、赤血球一つがやっと抜けられる程度に細い。一つ一つの長さは50µmであるが、総延長は10万kmになるという。

 毛細血管は2,3個の内皮細胞が内腔を囲んでいるが、隙間なく囲っている「窓無し型」と、細胞質が極端に薄く、細胞内に直径100nm程度の円形小孔が見られる「窓あき型」(有窓性)という二種類に分けられる。窓なし型は中枢神経系や肺胞といった血液関門が存在する部位で、窓開き型は腎糸球体や内分泌腺等、物質交換が盛んな部位でみられる。


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図2 毛細血管


○細胞の接着と透過性


 血管内皮細胞は内皮下組織とヘミデスモソームで、血管内皮細胞同士は密着結合(TJ)によって接着する。TJは強固な接着である。特に脳や肺において、TJが連続的に密着結合を形成することによって細胞の隙間からの透過を完全に遮断し、物質のやり取りは高度な選択能を持つ血液脳関門のみが担う。

他の細胞は脳よりも透過性が高く、細胞間隙からは水やイオンのやり取りを行える。タンパク質が通ることはできない。

○組織液(間質液)


 血液が毛細血管の壁(細胞間隙)から外に染み出したものと、細胞の老廃物とが混ざった液を、組織液(間質液)という。タンパク質のような大きなもの、ましてや赤血球が血管内皮細胞の隙間から染み出すことはできないため、組織液は血漿(水やイオン)が主成分となる。

 血管からの出入りには、二種類の圧力が関係する。その一つは血圧であり、もう一つは浸透圧である。血圧が高いほど血管から血漿が染み出しやすい。一方、浸透圧はタンパク質が豊富な血液のほうが組織液より高く、水分が血管へ入る向きに働く。毛細血管の始まりである動脈付近では染み出すほうが多く、出口の静脈付近では血管に流れ込むほうが多くなり、結果として組織液の総量は保たれている。間隙を通過できない、細胞老廃物由来の不要なタンパク質はリンパ管によって吸収される。
 

○血漿

 
 血漿とは、血液の液体成分である。水とイオンに加え、糖や脂質、ビタミン、タンパク質を含む。このたんぱく質とは、具体的にはフィブリノーゲンやアルブミン、グロブリンである。フィブリノーゲンは止血に、グロブリンは免疫に関係する。アルブミンは浸透圧の維持や毒素の無毒化に働く。

○白血球の浸潤


 血管を流れる白血球は、血管内皮細胞表面の受容体に補足されてその勢いを落とし、内皮細胞の上を転がったうえで、間隙から血管外に浸潤し、炎症を起こす。詳細は白血球のいずれかの項目に記す予定。

○VEGF(血管内皮増殖因子)

 血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor )は、血管新生を促進する増殖因子である。がんで産生された場合、がんに毛細血管を作られる、すなわち酸素を与えることになるので、悪性化の原因となる。




〇関連項目
周皮細胞

〇参考文献
・看護roo 「いざ、毛細血管の中へ」
 https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1586
・理系総合のための生命科学 羊土社
・神戸大学 人体組織学カラースライド・データベース 第六回
・Wikipediaの各項目
 血管内皮細胞
 血管
 血管新生
 毛細血管

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血小板
(Platelet)

○血小板とは


 血小板は、止血にかかわる血液の成分である。造血幹細胞が分化して巨核細胞となり、その細胞質がちぎれて形成される。血小板は核や小胞体を持たず、正確には細胞ではない。大きさはおよそ2μmで、赤血球や白血球よりも小さく、血液1μL中に30万個程度含まれている。通常は円盤状であるが、血管が損傷を受けると偽足とよばれるアメーバ状の突起を伸ばし、形を変化させる。

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図1 血小板の放出
Wikipediaより



○一次止血


 血管内皮細胞が傷つけられて血管内皮下組織(主にコラーゲン)が露出した時、まずは血中や血小板内部に含まれるヴォン・ヴィレブランド因子(vWF)がそのコラーゲンに結合する。するとvWFは構造変化を起こして血小板の膜上の糖たんぱく質、GP1bに結合するようになり、血小板と傷の部位とを結びつける。

vWF因子と結合した血小板においては続いてインテグリンの一種であるGPⅡb/Ⅲa複合体が活性化され、活性化されたGPⅡb/Ⅲa複合体には血中の繊維素であるフィブリノーゲンが結合する。さらにフィブリノーゲンは別の赤血球のGPⅡb/Ⅲa複合体とも結合し、血小板を集めていく。このような止血を一次止血、形成される血小板の塊を白色血栓という。

 
 なお、傷がない場合に血栓が起きないよう、通常時の血管内皮細胞は血栓形成の抑制物質としてプロスタグランジンI2や一酸化窒素を産生している。

一次止血

図2 一次止血

○二次止血

 
 血小板とフィブリノーゲンからなる一次止血は弱いので、それに引き続いてさらに強固な二次止血が起こる。二次止血は、トロンビンという酵素がフィブリノーゲンに作用してフィブリン繊維を作り上げ、そこに赤血球を巻き込むことによって行われ、塊を赤色血栓という。かさぶたとも、血餅ともいう。

二次止血


図4 二次止血


二次止血と関係する物質をまとめて凝固因子と言い、Ⅰ~XⅢまでの12種類が存在する(ⅵは歴史的事情により欠番)。内因性と外因性の2つの経路にいずれかによって、最終的にトロンビン(Ⅱa)が活性化される


まず内因性経路は、第12因子が負に帯電した固体(岩・ガラスなど)に触れて活性化されることに始まる。活性化した第12因子は第11因子を、活性化した第11因子は第9因子を、活性化した第9因子は第10因子をそれぞれ活性化し、第10因子がトロンビンを活性化する。


一方で外因性経路は、傷害した細胞が出す組織因子が第7因子を活性化し、第7因子が第10因子、第10因子がトロンビンを活性化する経路である。


血栓塞栓症の治療薬として第10a因子を阻害する薬剤がよく用いられており、2018年の世界の薬の売り上げでは第四位(エリキュース)と第五位(ザレルト)がランクインしている。

○フィブリンとトロンビン


フィブリンの前駆体であるフィブリノーゲンは、α鎖、β鎖、γ鎖という3つのペプチドが2本ずつ逆並行した直線構造をとっており、中央付近をEサブユニット、両端をDサブユニットという。酵素であるトロンビンが中央Eサブユニットに属するペプチドを切断すると、フィブリノーゲン同士が結合をとれるようになる。

フィブリノーゲンからペプチドが切断された後の状態をフィブリンの構成単位として「フィブリンモノマー」と呼ぶ。フィブリンはさらに第13因子の影響を受けて架橋反応を起こし、血小板に加えて血球を巻き込んで強固な血栓を作る。


トロンビンはフィブリンを合成する酵素であるのみならず、血小板の膜上GPCRに受容され、血小板を「活性化」する働きもある。血小板の「活性化」には、内部でアクチン繊維を伸長して偽足を作り、接着度を高める作用や、トロンボキサンA2やvWF、フィブリノーゲンなどの放出を促進する作用、GPⅡb/Ⅲa複合体を活性化して凝集を促進する作用などが含まれる。

○線溶

 血栓が失われることを、線溶という。フィブリンを分解するタンパク質、プラスミンが線溶の主役となる。通常、プラスミンはプラスミノーゲンとして血中に存在するが、回復した血管内皮細胞が組織型プラスミノーゲン活性化因子を出すとプラスミンとなり、働くようになる。フィブリン分解産物を、Dダイマーと呼ぶ。また、役目を果たした血小板は分解される。




○関連項目

巨核球

〇参考文献
・日本血液製剤協会
http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/hemophilia/hem_02.html
・医学書院
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02952_07
・福岡大学 生化学 講義資料
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/adhmol.htm
・Wikipediaの各項目
 血小板
 凝固・線溶系
 インテグリン
 フィブリン


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