ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

カテゴリ: 皮膚に関する細胞

皮脂腺細胞
(Sebaceous gland cells)


〇皮脂腺細胞とは

皮脂腺細胞は、毛穴の側部の皮脂腺に位置する細胞である。皮脂を合成して顆粒に蓄積したのち、細胞全体を崩壊させて分泌する。この様式を全分泌という。


毛包

図1 毛包 
 右上部の黄色く示されたものが皮脂腺である。






〇皮脂の合成

皮脂は、主にワックスエステル、スクアレン、トリグリセリドから構成されるエマルション様の液体である。エマルションは、水と脂肪とが分散した液体をいう。角層の中に入り込み、汗とも混ざることができる。

※ワックスエステル…炭素数10以上の長鎖脂肪酸と8以上の脂肪族アルコールのエステル
※スクアレン…炭素数30のトリテルペン。コレステロール他ステロイドの中間体
※トリグリセリド…グリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した化合物

その役目の第一は保湿であって、皮膚や毛からの水の蒸発を防ぐ。第二として、外部の細菌からのバリアの役目を果たす。これは、皮脂に含まれるトリグリセリドが皮膚の常在細菌に分解され、脂肪酸となって皮膚を弱酸性に保つことによる。なお不飽和であるため、時がたつと酸素と反応して有害な過酸化脂質となり、皮膚を刺激する。かつ、臭い。よって、体は適度に洗剤で洗う必要がある。


〇皮脂腺細胞の一生

皮脂腺は、中心部の腺体と、毛包につながった導管という構造からなる。皮脂腺細胞の一生は皮脂腺腺体の基底で分裂することから始まる。腺細胞は基底で常に分裂を続けており、分裂してできた新たな細胞は次第に上部へと押されていく。この間、腺細胞は脂肪滴を細胞内に蓄積し、巨大化していく。初めは球形の核を持つが、次第に脂肪滴につぶされて崩壊し、ついには死に至る。その時に皮脂は放出され、導管を介して毛包へと放出されるのである。


〇皮脂とホルモン

皮脂量は男性ホルモンであるアンドロゲンによって調節される。アンドロゲンは男性は主に精巣で、女性は副腎にて合成されている。血中に流れるアンドロゲンは主にテストステロンだが、実際に作用するのは5αリダクターゼが作用して合成されるジヒドロテストステロン(DHT)であるとされる。5αリダクターゼは皮脂に豊富に存在しており、DHTは皮脂量を増やすように働く。また、皮脂で合成されたDHTは傍分泌で毛乳頭にも作用し、様々な作用を及ぼすと言われている。


〇ニキビ

ニキビは、毛穴に皮脂が詰まり、皮膚常在菌のアクネ菌が毛包で増殖することによる炎症である。皮脂量を調整する男性ホルモンは10代後半から20代前半がピークであるから、この年代に多い。
 
ニキビは、まず皮脂が何等かの原因で毛穴に詰まり、毛包に皮脂が溜まって皮膚が盛り上がるところから始まる。これを白ニキビと呼ぶが、さらに放置すると毛包にアクネ菌が増殖し、脂肪酸を合成して炎症を起こす。これが赤ニキビである。赤ニキビをさらに放置すると膿が溜まり、痕を残す。また、毛穴が開いて皮脂が酸化され、黒ニキビとなることもある。


牛乳や乳製品、高血糖食の摂取はインクレチンの放出を促し、それは皮脂腺細胞や角化細胞の増殖を促す。すなわちニキビを悪化させるため、ニキビ予防として牛乳を控えることは理に適っている。

治療薬としては、アクネ菌を標的とする抗生物質が多く用いられている。



〇参考文献

・Docters Organic
https://www.doctors-organic.com/hishi/index.html
・小林製薬 ニキビ
https://www.kobayashi.co.jp/brand/bifnight/step2/
・Wikipedia 尋常性座瘡

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毛乳頭細胞
(Follicle Dermal Papilla Cells)


〇毛乳頭細胞とは

毛乳頭細胞は、毛乳頭に位置する細胞である。毛母細胞にシグナルを送り、毛の発生周期を制御する働きを担う。男性ホルモンであるアンドロゲンの受容体を発現し、それに対する応答が調べられている。


毛包
図1 毛





〇アンドロゲン
アンドロゲンはステロイドの一種で、主に精巣のライディッヒ細胞から分泌される男性ホルモンである。女性の場合は卵巣内の卵胞で産生され、間もなくエストロゲンに変換される。副腎においては両性で分泌される。30歳ころから減少をはじめ、更年期を迎える。

第二次性徴を発現させる物質を総称してアンドロゲンと呼び、具体的にはテストステロンをはじめとする数種類のホルモンからなる。思春期開始時に多く発現し、男性器や陰毛の発達、精子形成、筋肉や骨格の発達、声変わり、体毛増加を引き起こす。

アンドロゲンはステロイドであるから、その受容体は細胞質に位置し、核内受容体として働く。受容すると転写因子として核内に入り、特定の遺伝子を発現させている。
teststelon


図2 テストステロン


〇アンドロゲンの作用

アンドロゲンは、男女共に認められる腋毛や髪毛の硬毛化や、男性のみの髭、胸毛等の毛を増やすのに作用し、体全体の産毛や眉毛には関与しないと言われている。

毛のサイクルは成長期(5年)、退行期(3日)、休止期(数カ月)を繰り返す。アンドロゲンはひげの成長期を延長する作用を持つが、髪のそれは短くする。反応の多様性はホルモン受容体の差に起因すると考えられており、エピジェネティクスが複雑に作用していることが想像される。

さて、禿について考えれば、頭頂部が側頭部よりも禿げやすいなどの部位差が見られる。テステステロンは毛乳頭で5αリダクターゼに還元され、デヒドロテストステロン(DHT)となってから実際に作用するが、禿げやすい部位と禿げにくい部位では5αリダクターゼの種類が異なっていることが知られており、禿げやすさの違いはこれが原因とされる。

"女性ホルモンで髪の毛が促進され、男性ホルモンで退化する"というアイデアは良く知られているが、そもそも毛乳頭に女性ホルモン受容体があるのかは不明であり、俗説に過ぎない。髪はヒトに独特なものであって、実験動物がうまく応用できないという。

zabiel

図3 フランシスコザビエル
 これはトンスラと呼ばれるカトリック聖職者の髪型であり、禿げとは異なるが、「禿げといえばザビエル」という風によく知られている。本来のトンスラは側頭部の髪も切って鉢巻状にのみ残すものであり、この図は想像で描かれた。



〇参考文献

・髪の毛の生物学 安藤健二

〇関連項目
毛母細胞

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毛母細胞
(Hair matrix cell)



〇毛母細胞とは

毛母細胞は、名の通り毛を作る細胞である。毛の根本付近(毛母体)で絶えず分裂しており、毛母細胞が角質化したものが毛の正体である。毛母体付近にはメラニン細胞も存在し、毛母細胞はそこからメラニン色素を受け取って黒い髪を作り出す。皮膚の角化細胞と作用が類似していることからわかるように、毛母細胞も上皮細胞の一種である。

角化については、角化細胞を参照

〇毛包

毛本体とその周囲の構造をまとめて、毛包と呼ぶ。根本が膨らんだ構造をとっており、そこを毛乳頭という。毛乳頭の周囲には毛母体が存在し、毛母細胞が盛んに分裂している。毛乳頭には毛細血管が通っており、物質の交換を行う。

毛は二層の鞘に覆われた構造を持ち、これを外毛鞘、内毛鞘という。外毛鞘はそのまま皮膚につながっている。そのほか、毛包は毛を立たせる立毛筋、皮脂を分泌する皮脂腺、外毛鞘に存在して幹細胞に富むバルジという構造を含む。

毛包
図1 毛包


〇毛の構造

毛の太さは一般に0.1㎜程度であり、構成物質の90%以上がケラチンである。ケラチンは毛母細胞が産生するタンパク質であるが、システインからのジスルフィドに富んでいるため、非常に固い。残りの10%は水で、しなやかさを決定する。

毛の最内側は髄質外側を皮質という。皮質メラニンを大量に含んだ紡錘型の細胞が多く、髄質はそれよりも大きくてメラニンの少ない球形の細胞が見られる。髪の性質は皮質が決定する。皮質のさらに外側にはクチクラ層が発達しており、髪の強度をさらに高めている。

クチクラを構成するタンパク質もまた、ケラチンである。内毛根鞘細胞がメラニンを獲得せずに角化した無色の層で、5,6層の鱗状構造をとる。鱗の表面はMEA(18-メチルエイコサン酸)と呼ばれる脂質が覆っており、ツヤや手触りを決定する。

〇発毛サイクル

人間は髪を切りに理髪店や美容室へ足を運ぶが、そんなことをしなくとも、髪は5年程度で生え変わるサイクルを持つ。まず4年程度の成長期で伸びた後、退行期に毛母基が消滅し、休止期に新たな毛に押し出されるようにして脱毛する。健康な人でも一日100本程度脱毛している。

壮年性脱毛症は、成長期が短くなって退行期が早く来ることにより、毛が十分伸び切らない内に抜けてしまい、薄毛となる疾患である。その薬として開発されたのが、「発毛の医薬品はリアップだけ」のCMでおなじみだった、ミノキシジルである。

〇ミノキシジル

医療用医薬品を経ずに一般に上市された、日本初のダイレクトOTC薬である。毛包を成長させる働きを持つと同時に、毛母細胞の分裂も促進して伸びる速度を高める作用を持つ。ミノキシジルの作用機序は、平滑筋の弛緩とそれによる毛細血管の血流増加であると言われている。経口投与であるため全身に作用するが、髪によく効く。理由は不明。

〇髪色

ヒトの髪の色は、大まかに黒・栗(茶)の四色である。黒髪は東アジアやアフリカ、南アジア、中東、太平洋諸島などに多く見られ、大量の黒いユーメラニンが含まれている。栗毛は地中海沿岸に多く、ユーメラニンを主とするが、赤褐色のフェオメラニンも含む。金髪は白人の間でも少なくて、全世界の1~2%である。フェオメラニンが多い。最後の赤髪は極端に珍しく、スコットランド・アイルランドに見られる。ほとんどがフェオメラニンである。

遺伝的には、フェオメラニン・ユーメラニンの生成にかかわる遺伝子が重要である。基本的にはユーメラニンが多い遺伝子、すなわち黒・栗が優性な形質を持つ。




〇参考文献
・花王 肌ケアと髪ケアの知識
http://www.kao.com/jp/haircare/
・MENARD 用語辞典
https://www.menard.co.jp/beauty/word/detail_1001028.html


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メルケル細胞
(Merkel cell)


○メルケル細胞とは

メルケル細胞は、皮膚の表皮付近に位置して触覚に関与する細胞である。大きさは約10μmの球形であり、50μm程度の角化細胞に比べて遥かに小さい。1875年にメルケル博士によって発見されたが、機能が判明したのは21世紀に入ってからのことである。


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図1 メルケル細胞



○触覚

皮膚の触覚には5種類の機構が作用している。メルケル細胞の他に、自由神経終末、ルフィ二終末、パチニ小体、マイスナー小体である。ルフィニ終末、パチニ小体、マイスナー小体の三種は真皮に位置し、それぞれ皮膚の伸び、細かな振動、大まかな振動を検知する。自由神経終末は表皮の中に入り込んで温度、痛み等に反応を示す。

○メルケル細胞の機能

 そしてメルケル細胞は弱い刺激を検知し、感覚神経に情報を伝える。20から40個のメルケル細胞が一つの神経と対応しており、表面のデコボコや角を認識するのに役立っている。動的な刺激ばかりでなく静的な刺激にも反応し、「触れている」という感覚を神経に与えている。

○分子機構

メルケル細胞の表面に位置するPiezo2という機械刺激依存性の陽イオンチャネルが反応の鍵となる。Piezo2は30回膜を貫通した構造を取っており、わずか0.6μm程度の機械的刺激を受けると開く。膜電位が上昇したのを電位依存性のCaチャネルが認識して開くと、シナプスに向けて神経伝達物質の顆粒が放出され、それを感覚神経が受容するのである。


〇参考文献
・生命誌ジャーナル
 高度な触覚センサとして活躍する小さな細胞  仲谷正史
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/090/research/1.html


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ランゲルハンス細胞
(Langerhans cell)


○ランゲルハンス細胞とは

ランゲルハンス細胞は、表皮の有棘層に位置する樹状細胞の一種である。外部から侵入する細菌やウイルス、かび等を食し、T細胞への抗原提示を行っている。また温度や紫外線の情報を脳に伝え、反応を適切に制御する働きもあるとされる。

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図1 表皮の構造



○アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、外部からの刺激に対する皮膚の炎症を伴うアレルギー反応、として定義される。主な症状は痒みで、小児によく発症する。ランゲルハンス細胞は抗原提示を行うと同時に、IgE受容体を受容してヒスタミン顆粒を放出する働きを持つ。アトピー性皮膚炎の要因には二種類あって、内因性、外因性と呼ばれる。

まず内因性アトピー性皮膚炎は、全体の2割を占める反応である。皮膚角層バリアのわずかな隙間から侵入できる小分子(金属イオンなど)がT細胞を活性化し、B細胞が抗体を生成して炎症を引き起こすと言われているが、詳細は不明。

外因性アトピー性皮膚炎は、全体の8割に昇るアレルギー反応である。角層の隙間から花粉などの大きなアレルゲンが侵入し、それをランゲルハンス細胞が食す。人がその環境因子アレルゲンへのIgEを持つ場合に炎症を生じ、アトピー性皮膚炎となる。遺伝的にフィラグリンが弱く、ケラチンが十分に結合していない、すなわち皮膚バリアが不完全な患者が発症しやすい。すなわち、外因性アトピー性皮膚炎は角層の異常とアレルギー反応が両方揃った場合に発症する疾患である。

ただし、ランゲルハンス細胞は突起を角層バリアの上にまで伸ばしているとの報告もあり、たとえ抗原が体内に侵入しなくともアトピー性皮膚炎を発症する可能性がある。


○金属アレルギー

金属アレルギーは、内因性アトピー性皮膚炎の一種である。体に金属を身につけている場合、その一部がイオン化して体内に侵入する。金属イオン自体は抗原ではいが、体内のタンパク質と結合したものが抗原となる。ランゲルハンス細胞が食してT細胞に提示して炎症を起こす。患者の角層は正常である。

表皮に接しているだけのイヤリングよりも、皮下組織に触れるピアスの方が金属アレルギーを起こしやすい。また、イオン化しない金や銀にはアレルギーが見られず、ニッケル、コバルト、クロムのアレルギー頻度が高いことが知られている。


○パウル・ランゲルハンス

パウル・ランゲルハンスとは、ランゲルハンス細胞の名前の由来となったドイツ人の医者である。1847年のプロイセンに生まれ、21歳の時に皮膚のランゲルハンス細胞を、翌年には膵臓のランゲルハンス島を発見し、科学に多大な貢献をもたらしている。

ところがその後、ランゲルハンス博士は27歳で自身の研究対象であった結核に感染し、大西洋のとある島に隠居することとなった。彼はその地で無脊椎動物の研究に従事し、37歳で患者の未亡人と結婚して幸せな日々を過ごしたというが、僅か3年後に腎不全で死亡してしまった。

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図2 パウル・ランゲルハンス





〇関連項目
角化細胞
・樹状細胞


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