ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
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2020年02月

マクロファージ
(Macrophage)


マクロファージとは

マクロファージは、死細胞や体外由来の異物などに対して強い食作用を示す免疫細胞である。好中球(ミクロファージ:小食細胞)に対応して、マクロファージ(大食細胞)と名付けられた。血中を流れる単球がいずれかの組織に入ったとき、マクロファージに分化する。


図1 マウスのマクロファージ
 wikipedia より

マクロファージの発見

マクロファージは1892年にロシアの微生物学者・メチニコフによって発見された。メチンコフはヒトデの幼生にバラの棘を刺して一晩放置していたところ、運動性の細胞によって包囲されていることを発見し、この細胞をマクロファージと名付けた。メチニコフはこの功績で1908年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。


なお、ヒトの免疫細胞はマクロファージのほかに単球や好中球・樹状細胞・リンパ球など様々な種類のものが存在するが、無脊椎動物ではマクロファージのみで免疫を担うと考えられている。

M1/M2マクロファージ

マクロファージには、TNFαなどの炎症性サイトカインを産生して炎症を促進するM1型と、IL-10などの抗炎症性サイトカインを産生して炎症を抑制するM2型という全く正反対の種類が存在する。M1型は免疫応答、M2型は組織修復に働くと考えられている。


M1マクロファージはサイトカインを放出して炎症を促進する働きのほか、貪食した異物をMHCクラス2で提示し、ヘルパーT細胞を活性化させる働きがある。


M1マクロファージはIFN-γなどのTh1サイトカインによって、M2マクロファージはIL-4、IL-6やIL-10などのTh2サイトカインによって活性化されたマクロファージである。Th1・Th2についてはT細胞の項目を参照。

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図2 M1/M2マクロファージ


ガン悪性化とマクロファージ

腫瘍組織に浸潤したマクロファージを、TAMTumor-associated macrophages)と呼ぶ。TAMはM2マクロファージに属するため、腫瘍でのTAMは免疫応答を抑制し、腫瘍の悪性化の原因となることが指摘されている。

腫瘍の周囲のマクロファージがM2型であるのは、がん細胞がIL-6を分泌しており、マクロファージのM2型への分化を促しているためであると考えられている。腫瘍に存在するマクロファージは免疫応答抑制に留まらず、VEGF(血管内皮増殖因子)を産生して血管新生を促したり、EGF,FGFといった成長因子を放出することにより、がん微小環境を形成することによっても悪性化を引き起こしている。

特殊化したマクロファージ

組織特異的に特殊化したマクロファージとしては、以下のものがあげられる。

破骨細胞 … 骨の分解を行うマクロファージ
・クッパ―細胞 … 肝臓の類洞に位置するマクロファージ(下)
ミクログリア … 脳内のマクロファージ
・肺胞大食細胞 … 肺胞のマクロファージ

クッパ―細胞

クッパ―細胞は、肝臓の類洞内皮細胞に接着し、類洞内に常在するマクロファージの一種である。

クッパ―細胞は通常のマクロファージと同様、消化管を介して取り込まれた異物を排除する働きを持つ。また、大量の異物を食すると活性化し、サイトカインを放出して類洞外の伊東細胞を刺激、コラーゲン産生・線維化を促進する。

肝臓
図 肝臓の細胞



参考文献

日本血栓止血学会 マクロファージ
 https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=42

腫瘍微小環境におけるマクロファージの役割 -病理学から見たがん治療へのアプローチ 
 熊本大 竹屋元裕 先生



伊東細胞
(Ito cell)




伊東細胞とは

伊東細胞は、肝臓のディッセ腔に位置する繊維芽細胞の一種であり、ビタミンAを貯蔵する働きを持つ。

1956年に伊東俊夫教授によって発見されたことから、その名がつけられている。 肝星細胞(HSC)ともいう。


肝臓

図 肝臓の細胞たち
 伊東細胞は、類洞と肝細胞の隙間であるディッセ腔に位置する。


ディッセ腔

門脈からの血液が流れ込む類洞の内皮細胞と、肝細胞との間の隙間をディッセ腔と呼ぶ。類洞内皮細胞には基底膜が存在せず、ディッセ腔は4型コラーゲンなどの細胞外基質が薄く存在する空間となっている。伊東細胞はこのディッセ腔に存在する線維芽細胞の一種である。


類洞内皮細胞は直径120nm程度の穴が無数に空いた有窓性の細胞であるため、ディッセ腔には血液の小粒子・液体成分が自由に流入・流出することができる。肝細胞はディッセ腔に流入した分子を細胞内に取り込み、各種代謝を行っている。


伊東細胞の機能

伊東細胞の第一の役割は、ビタミンAの貯蔵である。ビタミンAの貯蔵量は体内の80%にも及ぶと考えられているが、胎生期には少なく、老齢になるほど増加する。ビタミンAを過剰摂取すると細胞は肥大し、核を含むすべての小器官はビタミンAを含む脂肪滴に押しつぶされてしまう。


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図 ビタミンAの構造
 ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、伊東細胞の脂肪滴に貯蔵される。

https://www.researchgate.net/profile/Nevine_Bahaa/publication/323001572/figure/fig11/AS:591573704265734@1518053570806/Control-group-showing-space-of-Disse-containing-Ito-cell-I-closely-related-to.png
図 伊東細胞の電子顕微鏡画像 (Fattin, 2017より)
 中央に、ビタミンAを含んだ大きな脂肪滴(L) を持った伊東細胞が観察される。


伊東細胞のもう一つの役割は、細胞外基質の産生・分解である。伊東細胞は繊維芽細胞と同様にコラーゲンやヒアルロン酸を分泌し、また時には分解して、ディッセ腔内部の環境を維持している。


肝線維化と伊東細胞

肝臓が傷害すると、他の体内各所と同様に細胞外基質が産生され、線維化が起こる。伊東細胞は壊死した肝臓に反応し、細胞外基質を産生して肝線維化を引き起こす原因と考えられている。


慢性的な肝炎ではクッパ―細胞やマクロファージが反応し、サイトカインを放出して伊東細胞の筋線維芽細胞への分化・増殖を促す。筋線維芽細胞に変化した伊東細胞は貯留していたビタミンAを失い、大量のコラーゲンを産生するようになる。


線維化した肝臓は固く・黄色くなり、その機能が低下する。また門脈を圧迫し、腹水の増加も見られる。肝線維化は不可逆的な肝硬変に繋がり、最終的に肝不全の原因となることから、伊東細胞は臨床的に注目されている。
図 肝硬変(Liver Cirrhosis, 英語版Wikipedia)
肝硬変になると、肝臓は固く・黄色く変化する。





参考文献

・Qシリーズ 新生理学

・ミノファーゲン製薬 肝臓入門
http://www.minophagen.co.jp/Japanese/general/liver01_02.html

・類洞内壁の伊東細胞
 日本網内系学会会誌 1996

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