ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

2018年01月

メサンギウム細胞
(mesangial cell)

〇メサンギウム細胞とは

メサンギウム細胞は、腎臓に位置する細胞の一群である。「メサンギウム」の単語はラテン語で「meso」+「angis」であり、「meso」は「間」、「angis」は毛細血管を意味する。すなわちメサンギウムは「毛細血管の間に詰まっている構造」という意味となる。「メサンギウム」の語は細胞のほかにメサンギウム基質、毛細血管の基底膜を含む。


〇糸球体内メサンギウム細胞

糸球体内メサンギウム細胞は、その名の通り糸球体の内部に存在するメサンギウム細胞である。糸球体外のメサンギウム細胞とは位置ばかりでなく機能も異なるため、区別されている。食作用を有する一種の線維芽細胞であり、基底膜に似たメサンギウム基質を産生して毛細血管の間を埋める働きを持つ。その機能は構造の維持である。


糸球体
図1 糸球体
 5aが糸球体内メサンギウム細胞、5bが糸球体外メサンギウム細胞である。



〇糖尿病性腎症

糖尿病を患い、血糖値が高くなった患者にはしばしば腎臓の障害が起こる。その症状は主に腎機能低下と蛋白尿症であり、いずれ腎不全を発症してしまう。糖尿による腎障害の原因は糸球体基底膜・メサンギウム基質の拡大にあると考えられており、これによって腎臓の濾過機能が破綻することによる。アルブミンやグロブリンといった血漿タンパク質がバリアを超えて尿に入るようになると免疫機能不全などの症状を引き起こし、また基底膜の肥大は毛細血管を圧迫して腎機能の低下も招く。

さて、メサンギウム基質が拡大する理由であるが、それにはメサンギウム細胞の食作用が関係する。高血糖・高脂血症である種の蛋白質が凝集すると、メサンギウム細胞はそれをエンドサイトーシスし、分解する。この際にメサンギウム細胞のpHが低下して、TGFβなどのサイトカインを傍分泌して同種の細胞の分裂を促し、さらに基底質の産生能を向上させている。


〇糸球体外メサンギウム細胞

糸球体外メサンギウム細胞は、糸球対外に位置するメサンギウム細胞であり、傍糸球体装置を形成する細胞の一つである。その機能はあまりわかっていないが、エリスロポエチンとレニン(?)を分泌していると考えられている。

糸球体
図 糸球体
 5bが糸球体外メサンギウム細胞、7が緻密斑、6は傍糸球体細胞である。



〇傍糸球体装置

傍糸球体装置は糸球体の傍に存在する構造であり、尿量の調節を担っている。糸球体外メサンギウム細胞のほかに、遠位尿細管の緻密斑、輸入細動脈の傍糸球体細胞から構成される。緻密斑は尿細管の特殊な上皮細胞であり、尿中のCl-イオンの濃度センサーの役割を果たす。濃度に応じて傍糸球体細胞のレニン分泌を制御し、血圧や濾過量を変動させている。

詳細は各細胞のページにて。

〇エリスロポエチン

糸球体外メサンギウム細胞が産生するエリスロポエチンは、骨髄の造血幹細胞に作用して巨核球や赤血球への分化を誘導するタンパク質である。慢性腎不全によってエリスロポエチンが産生できなくなった場合、赤血球が不足して悪性貧血に陥る。また、エリスロポエチンは赤血球を増やすことからドーピングにも用いられている。

血中の酸素分圧によって産生は制御され、低酸素応答因子のHIFがその分子機構の鍵となる。HIFは低酸素状態で核内に移行し、転写因子として働いてエリスロポエチンの産生を促進することができる。通常の酸素分圧でのHIFは翻訳されて間もなくユビキチン化され、プロテアソームに分解されるが、低酸素状態ではユビキチン結合の活性が鈍るため、働くことができる。癌にも関係する。

〇参考文献

・明治薬科大学 薬効解析学研究室
http://www-yaku.meijo-u.ac.jp/Research/Laboratory/effic_anal/report.html
・Wikipedia 「糸球体外メサンギウム細胞」「糸球体内メサンギウム細胞」

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足細胞
(Podocyte)

〇足細胞とは

足細胞は、ボーマン嚢の臓側壁を構成する上皮細胞である。突起を伸ばして毛細血管の周りを覆っており、産生する基底膜と共に、ろ過機能を構成する働きを持つ。足細胞はタコ足のように突起を伸ばして毛細血管全体を覆っているので、その見た目から別名を蛸足細胞ともいう。

〇腎小体

毛細血管が丸く集まった糸球体と、その周りを覆うボーマン嚢という二つの構造を合わせて、腎小体という。腎小体は血液から原尿を作り出す部位であり、一つの腎臓に100万個も存在する。マルピーギ小体とも呼ばれる。腎小体は球状であり、血管が出入りするところは血管極、反対側は尿管側と呼ばれる。

腎小体に入っていく血管を輸入細動脈という。輸入尿細管を流れる血液は糸球体に入って濾過され、尿細管に流れ込む。この液体を原尿と呼び、一日に180L程度である。一方で濾過されずに残った物質は輸出細動脈に流れ、糸球体から外へ出ていく。

糸球体の毛細血管内皮細胞は有窓性であり、70nm程度の穴が無数に開いている。その穴は血球は通さないものの濾過には大きすぎるため、濾過は主に内皮細胞を覆っている通常より厚い基底膜が担っていると考えられている。基底膜は内皮側から内淡明層、緻密層、外淡明層という3層構造を持ち、外淡明層の外側には足細胞が接している。基底膜は足細胞が生産すると考えられている。


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図1 腎小体の模式図
 赤で示されたのが糸球体、桃色がボウマン嚢である。
 糸球体に接しているボウマン嚢の上皮細胞が足細胞を示している。


〇濾過

基底膜の内淡明層にはへパラン硫酸などのペプチドグリカン(負電荷)が多く含まれており、負に帯電したタンパク質がボーマン腔に侵入するのを防いでいる。ペプチドグリカンは、負に帯電したグリコサミノグリカンと呼ばれる糖鎖がセリンと結合した構造である。また、足細胞の突起も細胞膜に負電荷をもったグリコカリックスという糖タンパク質を発現し、同様の働きを示す。突起の間にはスリット膜と呼ばれる薄い膜が張られ、物質通過を抑制する。そして、緻密層にはコラーゲンが緻密に詰まっており、物理的な障壁を形成する。これらの濾過障壁の働きによって、原尿には分子量6万以上、または3.6nm以上の分子は含まれないことになる。

へぱらん
図2 へパラン硫酸
 上のような糖鎖に硫酸基がついた構造を持ち、負電荷を持つ。



濾過の効率は、3つの圧力が決定する。第一は血圧であり、効率を高める。一方でボウマン嚢内圧と膠質浸透圧は水を血管に戻す向きに働くため、3つの足し合わせが効率を決めている。膠質浸透圧は血中に含まれるアルブミンというタンパク質が原因となっているが、アルブミンは分子量67000であるために濾過されずに血中に残り、浸透圧は維持される。

〇発生

腎小体は、腎動脈とボウマン嚢原基との相互作用によって形成されている。ボウマン嚢ははじめ円錐型をとって直線的な腎動脈の近くに存在しているが、次第に腎動脈を引き付けて、嚢自身も内側にめり込んでいく。そしてついにはボウマン嚢は血管を包み込んで球状となり、血管側とそうではない側の区別が生じる。血管側の上皮細胞を臓側板、層でない側は壁側板と呼び、臓側板のボウマン嚢上皮細胞が足細胞となる。



〇参考文献

・Qシリーズ 新生理学  日本医事新報社
・初心者のための腎臓の構造 坂井健雄

ミュラー細胞
(Müller cell)

○ミュラー細胞とは

ミュラー細胞は、網膜に特異的に存在するグリア細胞である。グリア細胞は神経系を構成する神経以外の細胞のことを指し、網膜には脳と同じようにアストロサイトやミクログリアも局在している。ミュラー細胞の核はは内核層(水平細胞・双極細胞の層)に位置し、内境界層から視細胞層にまでの網膜の全層に支柱のように伸びた形態をとっている。ドイツ人のヘンリッヒ・ミュラー博士(1820-1864)によって発見・報告された。


myu
http://www.igakuken.or.jp/retina/topics/topics1.html より引用

図1 網膜の層構造
 


○機能

ミュラー細胞の主な機能は物質の取り込み視神経への栄養供給血流の調整、の3つに大別される。

1.物質の取り込み


まず取り込まれる物質には、視細胞や双極細胞が神経伝達物質として用いたグルタミン酸・GABA、レチナールの代謝産物であるレチノール、K+などのイオンがある。ミュラー細胞のグルタミン酸・アスパラギン酸トランスポーター(GLAST)を介して取り込まれたグルタミン酸はグルタミンに還元されて神経細胞へ戻され、神経細胞内部で再びグルタミン酸やGABAに合成されて神経伝達物質として利用される、というサイクルをとっている。

レチナールは錐体・桿体細胞においてシス型がオプシンと結合しており、光を浴びてトランス型になると外れ、デヒドロゲナーゼに還元されてトランス型レチノールとなり、細胞外に排出される。細胞外に排出されたレチノールはミュラー細胞が回収し、再びシス型レチノールに戻した上で細胞外に分泌される。それを視細胞が取り込んで酸化、シス型レチナールとして、再びオプシンに結合する。

2.栄養供給

ミュラー細胞はまたグリコーゲンを産生し、網膜の栄養を蓄える役割をも果たす。ミュラー細胞自身のエネルギー=ATP産生は毛細血管から取り込んだグルコースの嫌気的解糖系と乳酸発酵によっていることが知られているが、これは視神系細胞に酸化的リン酸化のための酸素を温存するためとされる。ミュラー細胞から視神系に対しての栄養分は乳酸の形で提供されており、その量は受容した光に応答して増えている。

3.血流の調整

血管内皮細胞にも接するミュラー細胞はさらに、病原体などの異物流入を防ぐ血液網膜関門の形成にも寄与する。分子的には、ミュラー細胞はPDEF(色素上皮由来因子)やトロンボスポンジンという物質を分泌することで血管新生を防ぎ、血管内皮細胞同士の結合を強化している。


そのほかにも視神経を覆う絶縁体を形成したり、構造を器械的に支えたりと、網膜神経伝達の維持に働く。また、エステラーゼを介した視細胞の分化促進や発生における視神経軸索の誘導機能も認められている。

ミュラー細胞は網膜の3つのグリアのうち、視神経と同じ系列の網膜幹細胞から分化する唯一のグリア細胞である。網膜幹細胞はミュラー細胞の他にアマクリン細胞、視神経幹細胞、双極細胞、神経節細胞、内皮細胞、周皮細胞へと、網膜のすべての細胞に分化することができる。またミュラー細胞自体も分化(脱分化?)能を残しているため、網膜幹細胞に戻った上で、損傷をはじめとする刺激に応じて網膜の細胞へと分化することができる。




〇参考文献
実験医学オンライン
 https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/610.html

Müller Cells and Diabetic Retinopathy(Vision,Res 2018)

Wikipedia
 Muller cell

脳科学辞典
  視覚系の発生

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外套細胞
(Neurosatellite cell)


○外套細胞とは

外套細胞は、末梢神経の神経節におけるアストロサイトである。神経節膠細胞、衛星細胞とも呼ばれている。その機能は中枢におけるアストロサイトと同じく、神経細胞への栄養供給、構造支持、代謝調節などが考えられている。機能は似ているものの、アストロサイトのマーカーであるGFAPを発現していなかったり、アストロサイトに顕著な突起が見られなかったり、神経上皮由来のアストロサイトに対して外套細胞が神経堤細胞由来であったり、といった相違点も多い。一つの神経節に数十個の外套細胞が位置している。衛星細胞ともいう。


○神経節

神経節とは、神経細胞が集合した構造のうち、末梢にあるものを指す。具体的には①脊髄における後根神経節、②自律神経のニューロンが交代する神経節のほかに、③各感覚神経について一つずつ存在する。中枢神経における同様な構造は神経核と呼ばれ、大脳基底核がその代表例である。

脊髄後根は脊髄の後角に投射する部位である。後角神経節には求心性の感覚神経(皮膚・筋肉・腱)の細胞体が位置し、末梢に樹状突起、脊髄へ軸索を伸ばす。三叉神経(頭部皮膚)をはじめとする他の感覚神経も同様の神経節を構成しており、いずれも末梢で取得された情報が電気信号の形で伝わり、神経節の細胞体で統合されて脊髄へと送られる。

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図1 脊髄
 青が求心性(末梢→中枢)の神経、赤が遠心性(中枢→末梢)の神経を表す。後角の内部にある膨らみが後根神経節である。


自律神経の神経節は、中枢神経に細胞体を持つ節前ニューロンと、末梢を支配する節後ニューロンとがシナプスを形成する部位である。自律神経は交感神経と副交感神経を含み、脊椎の両側に位置している。交感神経の節前神経、副交感神経の節前神経、副交感神経の節後神経は伝達物質としてアセチルコリンを放出する一方で、交感神経の節後神経のみ神経伝達物質にノルアドレナリンを用いる。


○関連項目

○参考文献
・脳科学辞典
 神経節
・Wikipedia
 神経節
 神経節細胞
・Qシリーズ 新組織学 日本医事新報社
・チャート式 新生物 数研出版 

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上衣細胞
(Ependeymal Cell)


○上衣細胞とは

上衣細胞は、脳室の壁を構成する上皮細胞である。脳室は中枢神経系に存在する脳髄液に満たされた細胞の存在しない空間であり、大脳内部左右に側脳室・間脳には第3脳室・小脳と橋の間に第4脳室が存在する。上衣細胞は脳室側に多くの絨毛を持ち、髄液の流れを制御している。

○脳髄液循環

それぞれの脳室の一部の上衣細胞は脈絡叢と呼ばれるを形成し、脳髄液を産生している。脳髄液は側脳室→第三脳室→第四脳室の向きに流れ、第四脳室からは脊髄の中心管やクモ膜下腔へと流れる。そして髄液は最終的には頭頂部のクモ膜顆粒を介して上矢洞静脈に吸収され、血中へと戻っていく。

脳髄液は無色透明の液体であり、アルカリ性を示す。一人当たり130mL程度であり、1日に3、4回入れ替わっているという。脳の形や水分を保ち、不要物を除く働きを持つと考えられている。側脳室と第三脳室の間をモンロー孔、第四脳室とクモ膜下腔の間をマジャンディ孔、ルシュカ孔というが、これが閉じてしまうと脳内圧が上昇し、水頭症を生じる。

なお、採取することによる臨床的意義はないとされる。

Ventricle
図Ⅰ 脳室


○上衣細胞の構造

上衣細胞には絨毛を持つものと持たないものの2種類があるが、前者が狭義の上衣細胞であり、後者をタニサイトと呼ぶ。上衣細胞がすべての脳室に分布するのに対し、タニサイトは第3脳室の壁にのみ分布している。

上衣細胞の絨毛は、中心体が変化した基底小体から伸びている。A,B2種類の微小管がペアのなした9+2型の絨毛であり、ダイニンの働きによって自由に曲げることが可能となっている。髄液の循環を助けていると考えられており、異常のあるマウスは水頭症に陥る。タニサイトの機能はよくわかっていない。

1599px-Fig3-ependyma
図2 絨毛の構造


○物質の交換

上衣細胞のTJには隙間があるため、脳実質から脳髄液に対して受動的に不要物を流すことができる。またそれと同時にチャネルやトランスポーター類も発現しており、イオン濃度や浸透圧といった脳内環境の維持にも一役買っているようだ。

一方で脈絡叢は、毛細血管から脳髄液を産生する部位である。脈絡叢における血管内皮細胞は有窓性であるが、上衣細胞のTJが密に分布しているため、選択的に物質を通すことができる。脳脊髄液のK+、Ca2+、二酸化炭素、グルコースなどの濃度は血中より低く、よりアルカリ性に保たれている。脈絡叢は、脈が絡まった叢(くさむら)という字があてられている通り、毛細血管が多く、複雑な襞を持った構造をとっている。

○参考文献
・脳科学辞典 
 脳髄液 
 脳室 
 上衣細胞
・Wikipedia
 脈絡叢
 側脳室

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