血小板
(Platelet)


○血小板とは

 血小板は、止血にかかわる血液の成分である。造血幹細胞が分化して巨核細胞となり、その細胞質がちぎれてできる。血小板は核や小胞体を持たず、正確には細胞ではない。大きさはおよそ2μmで、赤血球や白血球よりも小さく、血液1μL中に30万個程度含まれている。通常は円盤状であるが、血管が損傷を受けると偽足とよばれるアメーバ状の突起を伸ばし、形を変化させる。
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図1 血小板の放出


○一次止血

 血管内皮細胞が傷つけられて血管内皮下組織(主にコラーゲン)が露出した時、まずは血中や血小板内部に含まれるヴォン・ヴィレブランド因子(vWF)がそのコラーゲンに結合する。するとvWFは構造変化を起こして血小板の膜上のGPⅠb(糖たんぱく質)にも結合するようになり、血小板と傷の部位とを結びつける。因子と結合した血小板においては別の糖タンパク質であるGPⅡb/Ⅲa複合体が活性化され、活性化されたGPⅡb/Ⅲa複合体には血中の繊維素であるフィブリノーゲンが結合する。さらにフィブリノーゲンは別の赤血球のGPⅡb/Ⅲa複合体とも結合し、血小板を集めていく。このようにしてできる血栓を一次止血という。
 
 なお、傷がない場合に血栓が起きないよう、通常時の血管内皮細胞は抑制物質としてプロスタグランジンI2や一酸化窒素を産生している。

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図2 一次止血

○インテグリン

 GPⅡb/Ⅲa複合体はインテグリンと呼ばれる細胞接着分子群に属する。インテグリンは膜貫通タンパク質であり、コラーゲン等の細胞外マトリックスのレセプターとしても働いて、細胞内のアクチン繊維に情報を伝えている。α鎖とβ鎖という二つのサブユニットからなり、α鎖が18種類、β鎖が8種類あることで、多様な組み合わせを可能とする(人では24種のみ)。GPⅡb/Ⅲa複合体はαⅡbとβ3から成立する。

 インテグリンは1985年に、フィブロネクチンに結合する細胞膜上の物質として発見された。フィブロネクチンはコラーゲン等にも結合し、細胞外基質の構成に重要な役割を果たすタンパク質である。インテグリンのβサブユニットに結合するが、その認識には"RGDS"(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸-セリン)というわずか4つのアミノ酸配列で十分であり、RGDモチーフと呼ばれている。GPⅡb/Ⅲa複合体もRGDモチーフに結合したことで、インテグリンであることが認識された。


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図3 インテグリン


○二次止血
 
 再び止血の話に戻す。血小板とフィブリノーゲンからなる一次止血は弱いので、それに引き続いてさらに強固な二次止血が起こる。二次止血は、トロンビンという酵素がフィブリノーゲンに作用してフィブリン繊維を作り上げ、そこに赤血球を巻き込むことによってできる血栓である。かさぶたとも、血餅ともいう。止血を引き起こすのに関係する因子を凝固因子と言い、Ⅰ~XⅢまでの12種類が存在する(ⅵは歴史的事情により欠番)。

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図4 二次止血

二次止血を引き起こす凝固因子の活性化経路としては、内因性と外因性の2つが並行する。いずれもトロンビンを活性化するという点は共通しているが、その経路が異なっている。
まず内因性経路であるが、こちらは第12因子が負に帯電した固体(岩・ガラスなど)に触れて活性化されることに始まる。活性化した第12因子は第11因子を、活性化した第11因子は第9因子を、活性化した第9因子は第10因子をそれぞれ活性化し、第10因子がトロンビンを活性化する。一方の外因性経路は、傷害した細胞が出す組織因子が第7因子を活性化し、第7因子が第10因子、第10因子がトロンビンを活性化する経路である。

他にもいくつも因子は存在するが、主要なもののみを取り上げた。

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図5 凝固因子

〇フィブリンとトロンビン

フィブリノーゲンは、α鎖、β鎖、γ鎖という3つのペプチドが2本ずつ逆並行した直線構造をとっており、中央付近をEサブユニット、両端をDサブユニットという。酵素トロンビンがEサブユニット付近でペプチドを切断して初めてフィブリノーゲン同士が結合をとれるようになる。この状態がフィブリンのモノマーである。フィブリンはさらに第13因子の影響を受けて架橋反応を起こし、血小板に加えて血球を巻き込んで強固な血栓を作る。

トロンビンはフィブリンを合成する酵素であるのみならず、血小板の膜上GPCRに受容され、血小板を「活性化」する働きもある。血小板の「活性化」には、内部でアクチン繊維を伸長して偽足を作り、接着度を高める作用や、トロンボキサンA2やvWF、フィブリノーゲンなどの放出を促進する作用、GPⅡb/Ⅲa複合体を活性化して凝集を促進する作用などが含まれる。TXA2は活性化シグナルを増強するとともに、血管を収縮させて止血させる働きもある。


〇線溶

 血栓が失われることを、線溶という。フィブリンを分解するタンパク質、プラスミンが線溶の主役となる。通常、プラスミンはプラスミノーゲンとして血中に存在するが、回復した血管内皮細胞が組織型プラスミノーゲン活性化因子を出すとプラスミンとなり、働くようになる。フィブリン分解産物を、Dダイマーと呼ぶ。また、役目を果たした血小板は分解される。


〇関連項目
巨核球

〇参考文献
・日本血液製剤協会
http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/hemophilia/hem_02.html
・医学書院
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02952_07
・福岡大学 生化学 講義資料
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/adhmol.htm
・Wikipediaの各項目
 血小板
 凝固・線溶系
 インテグリン
 フィブリン


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