肥満細胞
(Mast cell)


○肥満細胞とは


肥満細胞は、粘膜の下や結合組織に位置しアレルギーの原因となる免疫細胞である。膨れた様子が肥満のように見えるために肥満細胞と呼ぶが、肥満とはあまり関係がない。

ドイツ人によって名付けられ、マスト細胞とも呼ばれている。なお、「マスト」の意味するところが何なのかは諸説あり、よく分かっていない。


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図1 マスト細胞





○Ⅰ型アレルギーとは


肥満細胞はI型アレルギーを引き起こす原因の細胞である。好塩基球と同様、マスト細胞の膜上にFc受容体(3)が存在し、アレルゲンに応答したB細胞が産生したIgE(2)型の免疫グロブリンを結合している。


受容体は通常それぞれ離れているが、抗原(1)が二つのIgE間を架橋したとき、近接したことによってシグナルが走る。すると細胞内のカルシウムとcGMPの濃度が上昇し、蓄えられたヒスタミン顆粒(5)が放出(脱顆粒)される。また膜上の酵素も活性化し、膜脂質からアラキドン酸カスケードによってプロスタグランジンやロイコトリエン(7)を作る。


放出されたヒスタミン(4)やプロスタグランジン(7)は平滑筋の収縮・血管の拡張・粘液の分泌・神経刺激などの炎症反応を引き起こす。これがⅠ型アレルギーである。


脱下流
図2 脱顆粒

○ヒスタミンの作用

脂肪細胞が放出したヒスタミンは血管内皮細胞に作用して血管透過性が向上し、平滑筋に作用して気管支拡張・血管拡張が引き起こされる。アレルギー反応に重要なヒスタミンの受容体を「H1受容体」と呼ぶ。アレルギーを抑えるために用いられる抗ヒスタミン剤はヒスタミンH1受容体の阻害薬である。


H1受容体は中枢神経にも存在するため、アレルギーを抑えると同時に眠気を誘う副作用を引き起こす。逆に眠気を誘うために改善された薬としては、ドリエルが有名である。


眠気を誘う副作用を抑制した抗ヒスタミン剤を「第二世代」とよび、それ以前の抗ヒスタミン剤を「第一世代」と呼ぶ。第二世代の抗ヒスタミン剤は、脂溶性を下げることによって、血液脳関門を突破しないようにした薬である。

○アラキドン酸カスケード

抗原抗体複合体を受容した肥満細胞はヒスタミンを放出すると同時に、アラキドン酸カスケードを活性化する


アラキドン酸カスケードは、膜のリン脂質を構成する脂肪酸の一つ、アラキドン酸を出発物質とした一連の合成経路である。ホスホリパーゼCがリン脂質からアラキドン酸を切り出し、遊離したアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼの働きでプロスタグランジンに代謝される。シクロオキシゲナーゼの代わりにリポキシゲナーゼが作用した場合は、ロイコトリエンとなる。


プロスタグランジン・ロイトコロエンはヒスタミンと同様に、Ⅰ型アレルギーを引き起こす。

○花粉症

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図2 杉の雄花と花粉

I型アレルギーの代表的な症例が、花粉症である。厚生労働省によれば、スギ花粉症が最も多く、日本人の25パーセントにも昇るらしい。主症状はくしゃみ、鼻水、目のかゆみ等であるが、大きく分けて、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎とに分類することができる。どちらも、花粉を構成する粒子が肥満細胞に捉えられ、ヒスタミンが放出されることから反応が始まる。

・アレルギー性鼻炎

 鼻炎の場合、まず知覚神経にヒスタミンが作用すると、花粉を排出するためとして、くしゃみと鼻水が起こる。そしてヒスタミンはロイコトリエンと共に毛細血管の透過性を向上させ、浮腫となる。これが鼻詰まりの原因である。

・アレルギー性結膜炎

  ヒスタミンが知覚神経に作用すると、鼻と同様に花粉を排出しようとして、涙がでる。また痒みも生じる。

○まとめ


・マスト細胞は、Ⅰ型アレルギーの原因となる細胞である。

・抗原が細胞膜上の抗体を架橋すると、マスト細胞はヒスタミンの脱顆粒を起こす。

・ヒスタミンはアレルギーの原因物質であり、抗ヒスタミン剤が炎症に有効。




○参考文献

・厚生労働省 「的確な花粉症治療の為に」
・Wikipedia
 肥満細胞
 花粉症
 アラキドン酸カスケード 
 Allergy