肥満細胞
(Mast cell)


◯肥満細胞とは

肥満細胞は、粘膜の下や結合組織に位置する免疫系の細胞である。膨れた様子が肥満のように見えるためにその名がついたといい、マスト(顆粒)細胞とも呼ばれている。

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図1 マスト細胞





◯I型アレルギー

肥満細胞はI型アレルギーを引き起こす原因の細胞である。好塩基球と同様、マスト細胞の膜上にはFc受容体(3)が存在し、アレルゲンに応答したB細胞が産生したIgE(2)型の免疫グロブリンを結合している。受容体は通常それぞれ離れているが、抗原(1)が二つのIgE間を架橋したとき、近接したことによってシグナルが走る。すると細胞内のカルシウムとcGMPの濃度が上昇し、蓄えられたヒスタミン顆粒(5)が放出(脱顆粒)される。また膜上の酵素も活性化し、膜脂質からアラキドン酸カスケードによってプロスタグランジンやロイコトリエン(7)を作る。

放出されたヒスタミン(4)やプロスタグランジン(7)は平滑筋の収縮・血管の拡張・粘液の分泌・神経刺激などの炎症反応を引き起こす。これがⅠ型アレルギーである。


脱下流
図2 脱顆粒

◯ヒスタミン受容体

 ヒスタミンの受容体はH1〜H4まで4種類あるが、全てGPCRである。H1はアレルギーや中枢に、H2は胃酸分泌、H3は神経、H4は肥満細胞の遊走に関与している。アレルギーを抑えるための抗ヒスタミン剤はヒスタミンH1受容体選択的拮抗薬であるが、中枢にも作用して眠くなるものを第一世代、眠くならないものを第二世代という。これは脂溶性を下げることによって、血液脳関門を突破しないようにした薬である。

アレルギーに関係するH1受容体は、Gqとカップリングして働く。ヒスタミンがH1受容体に結合するとGqがホスホリパーゼCを活性化し、細胞内に遊離したIP3が小胞に蓄えられたCaを放出させる。Caの細胞内濃度が高まるとPKCが活性化して、さらなるシグナルが伝わっていく。結果として、血管拡張や血管透過性亢進、気管支収縮といった反応を引き起こしている。また神経にあるヒスタミン受容体はアレルゲンの進入の情報を脳に伝え、くしゃみや鼻水といった応答を引き起こす。また痒みも生じる。


◯アラキドン酸カスケード

アラキドン酸カスケードは、膜のリン脂質を構成する脂肪酸の一つ、アラキドン酸を出発物質とした一連の合成経路である。リン脂質からの切り出しにはホスホリパーゼCが作用し、遊離したアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼの働きでプロスタグランジンに代謝される。一方でリポキシゲナーゼが作用した場合は、ロイコトリエンとなる。

◯花粉症

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図2 杉の雄花と花粉

I型アレルギーの代表的な症例が、花粉症である。厚生労働省によれば、スギ花粉症が最も多く、日本人の25パーセントにも昇るらしい。主症状はくしゃみ、鼻水、目のかゆみ等であるが、大きく分けて、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎とに分類することができる。どちらも、花粉を構成する粒子が肥満細胞に捉えられ、ヒスタミンが放出されることから反応が始まる。

・アレルギー性鼻炎

 鼻炎の場合、まず知覚神経にヒスタミンが作用すると、花粉を排出するためとして、くしゃみと鼻水が起こる。そしてヒスタミンはロイコトリエンと共に毛細血管の透過性を向上させ、浮腫となる。これが鼻詰まりの原因である。

・アレルギー性結膜炎

  ヒスタミンが知覚神経に作用すると、鼻と同様に花粉を排出しようとして、涙がでる。また痒みも生じる。

〇まとめ

・マスト細胞は、Ⅰ型アレルギーの原因となる細胞である。

・抗原が細胞膜上の抗体を架橋すると、マスト細胞はヒスタミンの脱顆粒を起こす。

・ヒスタミンはアレルギーの原因物質であり、抗ヒスタミン剤が炎症に有効。




〇参考文献
・厚生労働省 「的確な花粉症治療の為に」
・Wikipedia
 肥満細胞
 花粉症
 アラキドン酸カスケード 
 Allergy