好中球
(Neutrophil)

◯好中球とは

好中球は、白血球の細胞の一つである。好酸球、好塩基球と共に顆粒球に分類され、細菌や真菌を捕食して、殺菌する働きを持つ。骨髄において造血幹細胞から分化し、成熟すると核が分葉する。

メチレンブルー(塩基性色素、青)、エオシン(酸性色素、赤)、azure Bの混合液による染色をギムザ染色という。血液にギムザ染色を用いると、好酸球はエオジンによって赤く、好塩基球はメチレンブルーで青っぽく、好中球は両者で赤紫に染まることから、それぞれの名が付けられている。

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図1 好中球 英語版Wikipediaより




◯分化と成熟

造血幹細胞、前駆細胞、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、桿状核球、分葉核球=好中球、の順に分化成熟する。骨髄芽球までは好酸球、好塩基球に分化する可能性を残すが、前骨髄球以降は好中球への分化が運命づけられている。分化の各段階でその数を増加させており、一つの造血幹細胞から生じる好中球はおよそ300億個である。


480px-Bloodcelldifferentiationchart(Japanese)

図2 造血幹細胞の分化 Wikipediaより

好中球は四種類の顆粒を持っており、前骨髄球の段階で生じる顆粒のことを一次顆粒(アズール顆粒)と呼ぶ。その後、骨髄球まで分化すると二次顆粒が生じ、桿状核球で三次顆粒、分葉核球に至って分泌顆粒が生じる。一次~三次顆粒は食胞と融合して細菌を殺すために用いられる。一方、分泌顆粒は”分泌”と名がついている通り、細胞膜と融合する顆粒である。ATPなどの顆粒内物質を分泌することのほかに、分泌顆粒の膜に刺さっている様々な受容体を炎症に応答して表出させる働きを持つ。


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図3 分泌顆粒

体内の好中球のうち、末梢血を流れている循環プールはおよそ半数で、もう半数は脾臓や肝臓に辺縁プールとして蓄えられている。さらに骨髄にも前駆細胞を合わせた大量の滞留プールがあり、緊急事態への備えとなっている。感染症や炎症反応で放出された各種物質の刺激を受けると、プールから好中球が血液に流入し、その機能を果たす。


◯好中球による防御

好中球は、体に侵入した細菌類に対する防御の役割を果たしているが、細胞寄生細菌や細胞内ウイルスに対しては無力である。

細菌が侵入すると、まずは末梢に位置するマクロファージや樹状細胞が貪食し、インターロイキンを放出して炎症反応を引き起こす。すると血管内皮細胞の透過が亢進され、血液中を流れていた好中球が組織へと浸潤するようになる。さらに炎症した細胞はケモカインを放出しているため、浸潤した好中球は受容体を介してシグナルを受け取り、アクチン骨格を形成することによってケモカイン濃度が高い方、すなわち炎症部位へと遊走する。

そして好中球が細菌に接近すると、膜上の受容体によって細菌の細胞膜/細胞壁、もしくは付着した抗体IgGや補体(オプソニン)を認識し、貪食を開始する。細菌が取り込まれて形成された袋を食胞と呼び、そこに顆粒が融合することによって殺菌処理がなされている。

殺菌の方法は活性酸素を用いるものと、用いないものとに大別される。酸素依存性の機構においては、好中球はNADPH(還元剤)を材料として過酸化水素/活性酸素を合成し、アズール顆粒(一次顆粒)内のミエロペルオキシダーゼがCl−イオンを用いて亜塩素酸を合成する。亜塩素酸は強力な酸化剤として細菌の様々な物質を無差別に酸化するので、細菌は死ぬ。

非酸素依存機構には細胞壁を分解するリゾチーム(三次顆粒)、細菌の生存に必要な鉄を奪うラクトフェリン(二次顆粒)、プロテアーゼの一種であるエラスターゼ(一次顆粒)などがある。

細菌を貪食して殺害したのちに好中球もアポトーシス(自発的な死)し、マクロファージに食されるか、膿となって体外に出される。

〇まとめ

  • 酸性色素・塩基性色素の両方に染まる顆粒球を、好中球という。

  • 造血幹細胞から分化する。

  • 身体に侵入した細菌を殺菌するはたらきを持つ。




〇参考文献

・第75回日本血液学会学術集会
 教育講演5 好中球分化異常と疾患  平位秀世
 http://www.myschedule.jp/jsh2013/detail.php?session_unique_id=EL-05&sess_id=8&strong=1
・Wikipedia 好中球