伊東細胞
(Ito cell)




伊東細胞とは

伊東細胞は、肝臓のディッセ腔に位置する繊維芽細胞の一種であり、ビタミンAを貯蔵する働きを持つ。

1956年に伊東俊夫教授によって発見されたことから、その名がつけられている。 肝星細胞(HSC)ともいう。


肝臓

図 肝臓の細胞たち
 伊東細胞は、類洞と肝細胞の隙間であるディッセ腔に位置する。


ディッセ腔

門脈からの血液が流れ込む類洞の内皮細胞と、肝細胞との間の隙間をディッセ腔と呼ぶ。類洞内皮細胞には基底膜が存在せず、ディッセ腔は4型コラーゲンなどの細胞外基質が薄く存在する空間となっている。伊東細胞はこのディッセ腔に存在する線維芽細胞の一種である。


類洞内皮細胞は直径120nm程度の穴が無数に空いた有窓性の細胞であるため、ディッセ腔には血液の小粒子・液体成分が自由に流入・流出することができる。肝細胞はディッセ腔に流入した分子を細胞内に取り込み、各種代謝を行っている。


伊東細胞の機能

伊東細胞の第一の役割は、ビタミンAの貯蔵である。ビタミンAの貯蔵量は体内の80%にも及ぶと考えられているが、胎生期には少なく、老齢になるほど増加する。ビタミンAを過剰摂取すると細胞は肥大し、核を含むすべての小器官はビタミンAを含む脂肪滴に押しつぶされてしまう。


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図 ビタミンAの構造
 ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、伊東細胞の脂肪滴に貯蔵される。

https://www.researchgate.net/profile/Nevine_Bahaa/publication/323001572/figure/fig11/AS:591573704265734@1518053570806/Control-group-showing-space-of-Disse-containing-Ito-cell-I-closely-related-to.png
図 伊東細胞の電子顕微鏡画像 (Fattin, 2017より)
 中央に、ビタミンAを含んだ大きな脂肪滴(L) を持った伊東細胞が観察される。


伊東細胞のもう一つの役割は、細胞外基質の産生・分解である。伊東細胞は繊維芽細胞と同様にコラーゲンやヒアルロン酸を分泌し、また時には分解して、ディッセ腔内部の環境を維持している。


肝線維化と伊東細胞

肝臓が傷害すると、他の体内各所と同様に細胞外基質が産生され、線維化が起こる。伊東細胞は壊死した肝臓に反応し、細胞外基質を産生して肝線維化を引き起こす原因と考えられている。


慢性的な肝炎ではクッパ―細胞やマクロファージが反応し、サイトカインを放出して伊東細胞の筋線維芽細胞への分化・増殖を促す。筋線維芽細胞に変化した伊東細胞は貯留していたビタミンAを失い、大量のコラーゲンを産生するようになる。


線維化した肝臓は固く・黄色くなり、その機能が低下する。また門脈を圧迫し、腹水の増加も見られる。肝線維化は不可逆的な肝硬変に繋がり、最終的に肝不全の原因となることから、伊東細胞は臨床的に注目されている。
図 肝硬変(Liver Cirrhosis, 英語版Wikipedia)
肝硬変になると、肝臓は固く・黄色く変化する。




参考文献

・Qシリーズ 新生理学

・ミノファーゲン製薬 肝臓入門
http://www.minophagen.co.jp/Japanese/general/liver01_02.html

・類洞内壁の伊東細胞
 日本網内系学会会誌 1996