マクロファージ
(Macrophage)


マクロファージとは

マクロファージは、死細胞や体外由来の異物などに対して強い食作用を示す免疫細胞である。好中球(ミクロファージ:小食細胞)に対応して、マクロファージ(大食細胞)と名付けられた。血中を流れる単球がいずれかの組織に入ったとき、マクロファージに分化する。


図1 マウスのマクロファージ
 wikipedia より

マクロファージの発見

マクロファージは1892年にロシアの微生物学者・メチニコフによって発見された。メチンコフはヒトデの幼生にバラの棘を刺して一晩放置していたところ、運動性の細胞によって包囲されていることを発見し、この細胞をマクロファージと名付けた。メチニコフはこの功績で1908年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。


なお、ヒトの免疫細胞はマクロファージのほかに単球や好中球・樹状細胞・リンパ球など様々な種類のものが存在するが、無脊椎動物ではマクロファージのみで免疫を担うと考えられている。

M1/M2マクロファージ

マクロファージには、TNFαなどの炎症性サイトカインを産生して炎症を促進するM1型と、IL-10などの抗炎症性サイトカインを産生して炎症を抑制するM2型という全く正反対の種類が存在する。M1型は免疫応答、M2型は組織修復に働くと考えられている。


M1マクロファージはサイトカインを放出して炎症を促進する働きのほか、貪食した異物をMHCクラス2で提示し、ヘルパーT細胞を活性化させる働きがある。


M1マクロファージはIFN-γなどのTh1サイトカインによって、M2マクロファージはIL-4、IL-6やIL-10などのTh2サイトカインによって活性化されたマクロファージである。Th1・Th2についてはT細胞の項目を参照。

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図2 M1/M2マクロファージ


ガン悪性化とマクロファージ

腫瘍組織に浸潤したマクロファージを、TAMTumor-associated macrophages)と呼ぶ。TAMはM2マクロファージに属するため、腫瘍でのTAMは免疫応答を抑制し、腫瘍の悪性化の原因となることが指摘されている。

腫瘍の周囲のマクロファージがM2型であるのは、がん細胞がIL-6を分泌しており、マクロファージのM2型への分化を促しているためであると考えられている。腫瘍に存在するマクロファージは免疫応答抑制に留まらず、VEGF(血管内皮増殖因子)を産生して血管新生を促したり、EGF,FGFといった成長因子を放出することにより、がん微小環境を形成することによっても悪性化を引き起こしている。

特殊化したマクロファージ

組織特異的に特殊化したマクロファージとしては、以下のものがあげられる。

破骨細胞 … 骨の分解を行うマクロファージ
・クッパ―細胞 … 肝臓の類洞に位置するマクロファージ(下)
ミクログリア … 脳内のマクロファージ
・肺胞大食細胞 … 肺胞のマクロファージ

クッパ―細胞

クッパ―細胞は、肝臓の類洞内皮細胞に接着し、類洞内に常在するマクロファージの一種である。

クッパ―細胞は通常のマクロファージと同様、消化管を介して取り込まれた異物を排除する働きを持つ。また、大量の異物を食すると活性化し、サイトカインを放出して類洞外の伊東細胞を刺激、コラーゲン産生・線維化を促進する。

肝臓
図 肝臓の細胞



参考文献

日本血栓止血学会 マクロファージ
 https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=42

腫瘍微小環境におけるマクロファージの役割 -病理学から見たがん治療へのアプローチ 
 熊本大 竹屋元裕 先生