アストロサイト
(astrocyte)


○アストロサイトとは

アストロサイトは、中枢神経に存在するグリア細胞(脳内の神経以外の細胞の総称)の一つである。ニューロンの細胞体・シナプスや毛細血管、シナプス部位と接しており、ニューロンへの栄養供給、血液脳関門の形成、3.神経伝達の補助といった働きを持つ。日本語では星状膠細胞という。神経細胞と同様に、神経幹細胞から分化する。


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図1 アストロサイト





○GFAP

アストロサイトを観察する際は、多くの場合GFAPGlial fibrillary acidic protein)というタンパク質をマーカーに用いる。GFAPはアストロサイトに特異的に見られる中間径繊維であり、細胞の強度を支えている。血液脳関門のシグナル伝達に関与している可能性も示唆されているが、詳しいことはわかっていない。


○アストロサイトの構造

アストロサイトは上記の方法などを用いて細胞骨格を染めると☆のように見えることから、日本語では星状膠細胞と名付けられた。しかしながら、実際のアストロサイトは遥かに多くの突起を伸ばし、枝分かれも豊富であるため、あえて例えるならスポンジのようであると報告されている。一つのアストロサイトがカバーする領域は非常に大きく、200万個もの神経細胞に一つのアストロサイトが接触していると考えられている。


○血液脳関門

血液脳関門は、血液から脳に対して選択的に物質を輸送する仕組みである。血管内皮細胞、周皮細胞、アストロサイトによって構成され、脳内の毛細血管の全てを覆っている。血管内皮細胞が密着結合することで間隙からの無秩序な物質交換を防ぎ、膜上に発現したチャネル、トランスポーターを介して必要な物質のみやり取りしている。細胞膜を通過できる脂溶性の高い物質もまた、関門を通過することができる。


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図2 血液脳関門

さて、その血管内皮細胞とニューロンは直接接触しておらず、物質輸送にはアストロサイトを介している。血管内皮細胞はアストロサイト側にもチャネルやトランスポーターを発現し、アストロサイトも細胞膜に同様のチャネルやトランスポーターを持つ。血管内皮細胞からアストロサイトに取り込まれた物質はニューロンに運ばれ、供給される。栄養分であるグルコースの場合、アストロサイトで乳酸に変換された後でニューロンへ取り込まれている。


○神経伝達の補助

神経細胞が伝える活動電位は、Na+イオンを細胞内に流入させ、K+イオンを細胞外部に放出する一連のやりとりである。神経伝達が正常に行われるためには外部環境が定常であることが求められるが、それを担うのがアストロサイトである。アストロサイトもまたK+、Na+などのチャネル、トランスポーターを持っており、脳内イオン濃度の維持に努めている。

また、シナプス部位のアストロサイトはグルタミン酸やGABA、グリシンといった神経伝達物質を素早く取り込み、信号を初期化する働きも持っている。この働きによって神経伝達の頻度を上昇させることができる。

○シナプス可塑性

シナプス可塑性とは、シナプスに発現するチャネルなどが変化し、情報伝達効率が変わることをいう。例えば何かに集中している場合、目の奥に位置するマイネルト基底核からアセチルコリンが放出されることにより、記憶力の向上につながる。

アセチルコリンは直接ニューロンに働いて可塑性を生むと考えられてきたが、近年実はアストロサイトがアセチルコリンを受容してシグナルを出していることが判明した。アセチルコリンを受容したアストロサイトはCaチャネルを開き、D-セリンの含まれる顆粒を放出する。D-セリンはシナプス後膜のNMDA型グルタミン酸受容体に結合して開きやすくする働きがあるため、結果としてアセチルコリンの放出が伝達効率の向上を促進する。

またアストロサイトはD-セリンのみならず、S-100βというタンパク質も放出している。これもシナプス可塑性に関与すると思われるが、統合失調症患者の脳髄液に多く含まれることが分かっているため、新たな治療につながる可能性が期待されている。




○参考文献

・脳科学辞典
 グリア細胞
 血液脳関門
 中間径フィラメント
・2016年9月RIKEN NEWS
 「グリア細胞”アストロサイト”は脳内で何をしている?」

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