肺胞上皮細胞
(Pneumocyte)


○肺胞上皮細胞とは

肺において血液ーガス交換を担っている肺胞の上皮細胞は、扁平なI型肺胞上皮細胞と、四角いII型肺胞上皮細胞という二種類の細胞から構成される。


I型肺胞上皮細胞は70平方メートルにも及ぶ肺胞の表面積の95%を占めており、酸素と二酸化炭素を交換する働きを持つ。一方、5%を占めるⅡ型肺胞上皮細胞は肺サーファクタントを分泌することで肺胞を表面張力から守り、肺胞の形態を維持する役目を果たしている。また、Ⅱ型肺胞上皮細胞はACE2というタンパク質を細胞膜に発現しており、コロナウイルスとの関連が注目されている。



Alveolar-sac-01

図1 肺胞
 https://embryology.med.unsw.edu.au より引用
 alveolus: 肺胞
 alveorar tyoe 1 cell :Ⅰ型肺胞上皮細胞
alveorar tyoe 2 cell :Ⅱ型肺胞上皮細胞


○血液空気関門


I型肺胞上皮細胞は厚さ0.2μmの扁平な形態をとり、片面が肺胞(外気)に、基底膜を介してもう片面が毛細血管に接触している。細胞小器官はあまり発達しておらず、異物を取り込む飲作用小胞=ピノソームのみ観察される。



隣接する肺胞上皮細胞は密着結合しているため、隙間からの無制御な物質交換は無く、すべて肺胞上皮細胞、基底膜、血管内皮細胞を経由することとなる。これを血液空気関門と呼び、その厚さは約2.0μmである。密着結合には組織液の流出を防ぐ働きもある。


Ⅰ型肺胞上皮細胞は外気からの毒などの刺激を受けやすく、したがって傷つきやすいが、自身には分裂能がない。傷ついた場合にはII型肺胞上皮細胞がI型肺胞上皮細胞に分化して置き換わることによって、傷を修復する。


○酸素と二酸化炭素の交換


空気に触れているⅠ型肺胞上皮細胞は末端組織に比べてO2濃度が高くCO2濃度が低く保たれており、毛細血管を流れる赤血球のヘモグロビン酸素解離曲線に従って酸素を受け取ることができる。


無極性分子である酸素は細胞膜や基底膜を容易に通過するため、酸素の交換には特別なチャネルやトランスポーターを必要としない。二酸化炭素も酸素と同様に膜を通過することができるが、I型肺胞上皮細胞は分化の過程で二酸化炭素の透過能を二倍に向上させることが知られている。この機構には水チャネルのアクアポリン5が関与するという。

○肺サーファクタント

肺胞上皮の外気側には上皮被覆液と呼ばれる水の層が存在し、その表面張力は表面積を小さくする向き、すなわち常に肺胞を縮める向きに働いている。Ⅱ型肺胞上皮細胞は肺サーファクタントと呼ばれるリン脂質(界面活性剤)を分泌し、水層の表面を覆うことによって表面張力を弱め、肺胞の形態を支えている。

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図 肺サーファクタントは上皮被覆液の表面張力を弱める。



○ACE2とTMPRSS

ACE2は、新型コロナウイルスやSARSの表面のスパイクタンパク質と結合しする受容体として注目されているタンパク質であり、スパイクタンパク質を切断するプロテアーゼであるTMPRSSと共に、新型コロナウイルスの細胞内侵入を促す分子として注目されている。TMPRSSによる切断を受けたウイルスタンパク質は活性化され、細胞内侵入が可能となる。


ACE2とTMPRSSの両方を細胞膜上に発現している細胞は、Ⅱ型肺胞上皮細胞や気管支細胞、鼻粘膜細胞、腸管の吸収細胞を挙げることができる。したがって、肺胞に至った新型コロナウイルスはACE2、TMPRSSを介してⅡ型は肺胞上皮細胞に侵入し、増殖することが想定される。


ACE2とスパイクタンパク質の結合を阻害し、侵入を防ぐ薬剤であるナファモスタットが、ウイルス感染を防ぐ薬剤になるのではないかとして注目されている。


○参考文献

・呼吸器系組織の創出に向けた基礎研究の進展 田所友美
・二酸化炭素の細胞膜透過に関る「CO_2チャネル」は存在するのか?  -科研費
・呼吸器とアクアポリン(日本小児アレルギー学会、2001)
・急性肺損傷(ALI),急性呼吸促迫症候群(ARDS)の 病態と診療 -藤島清太郎
・Wikipedia
   Ⅰ型肺胞上皮細胞
   肺胞
   Pulmonary alveolus
 急性呼吸窮迫症候群
・東大保健センター 研究紹介

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