ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

白色脂肪細胞
(white fat cell)




〇白色脂肪細胞とは

白色脂肪細胞は、細胞内に一つの大きな脂肪滴(単胞)を持った白い細胞である。脂肪の蓄積を担っており、脂肪の代謝を行う褐色脂肪細胞とは真逆の働きを持つ。直径は最大で150μmにもなる大きな細胞で、大人では400億個ほど存在する。

 エネルギーの貯蔵と保温が主な役割であり、グルカゴン、アドレナリン、ノルアドレナリン、成長ホルモンなどが脂肪細胞のGPCRに結合すると脂肪分解が進み、エネルギーを産生する。

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図1 白色脂肪組織

○白色脂肪細胞の形成

白色脂肪細胞は、脂肪前駆細胞でPPARγという転写因子が働いて、脂肪滴を蓄えることによって生じる。脂肪滴に蓄えられている物質は脂肪であり、前駆細胞は血中のカイロミクロン等のリポタンパク質から取り込んでいる。

リポタンパク質は、血中で不安定な疎水性の中性脂肪を両親媒性のアポタンパク質が覆い、安定化したものである。脂肪滴を溜め込んで肥大化した白色脂肪細胞は隣接する前駆細胞に働いてPPARγを活性化し、新たな脂肪細胞か誕生する。

従来、脂肪細胞は子供の頃にしか現れないと考えられてきたが、現在は否定されている。なお、前駆細胞と白色脂肪細胞は可逆的な変化であるため、貧栄養時に脂肪滴を失った白色脂肪細胞は前駆細胞に戻る。


○産生する因子

白色脂肪細胞は、アディポネクチンやアンジオテンシノーゲン、レプチン、TNFαなどの様々な因子を産生し、体内環境を調節する働きを持つ。

・アディポネクチン

 アディポネクチンは、μg/mlという高濃度で血中を流れているホルモンである。インスリンの感受性を高め、血糖値を下げる働きを持つ。脂肪細胞が多くなればなるほど濃度が低下していくという不思議な特徴を持つ。

・アンジオテンシノーゲン

  アンジオテンシンの前駆体である。アンジオテンシンはレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系に関与する物質であり、血圧の上昇に作用する。脂肪細胞が多くなると濃度も高くなり、高血圧となる。

・レプチン

 レプチンは脳に体内の脂肪の量を伝えているペプチドホルモンであり、食欲を制御する神経細胞を抑制する働きを持つ。レプチン受容体を欠損したdb/dbマウス、レプチンを欠損したob/obマウスは食欲が収まらず、通常よりも大きな個体として知られる。
 またレプチンは交感神経系を亢進させる働きを持っているため、過度の肥満は血管の収縮を引き起こし、高血圧を発症する。

・TNFα
 
 炎症性サイトカインの一種である。固形がんの壊死を生じさせるサイトカインとして発見されたが、インスリン感受性の低下や脂肪組織のグルコース取り込み低下の作用もある。このため、肥満は血糖値を上昇させて糖尿病を引きおこすのだ。



〇参考文献
・Qシリーズ 新組織学
・脂肪細胞の正体 河田照雄

線維芽細胞
(fibroblast)


〇線維芽細胞とは

線維芽細胞は、結合組織を形成する細胞である。楕円形の核を持つことをその特徴とし、成人でも活発に分裂を続けている。

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図1 マウス線維芽細胞 NIH-3T3

〇結合組織

結合組織は細胞外を満たしている領域であり、基質と線維成分からなる。
その成分は全て線維芽細胞によって産生されている。

1.膠原線維

 膠原線維はコラーゲン線維が会合してできた線維であり、組織に硬さを与えている。線維芽細胞はα鎖の3重螺旋構造のプロコラーゲンを分泌し、間もなくペプチダーゼが作用して両端が切り離され、トロポコラーゲンとなる。トロポコラーゲンは会合して直径100nm程度のコラーゲン原線維を形成し、さらにコラーゲン原線維は会合してコラーゲン線維となる。会合の過程においてコラーゲン分子同士は共有結合を形成し、強度を高めている。

 アミノ酸組成はグリシンやプロリンが多く、またコラーゲンに特異的なヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジンを含む。ヒドロキシプロリン、リジンはプロコラーゲン形成時の水素結合に重要な役目を果たすが、その合成にはビタミンCを必要とするため、不足するとコラーゲン線維が形成できなくなる。

 コラーゲンは16種が知られているが、特にⅠ~Ⅳ型が重要である。I型は皮膚や骨、腱に、Ⅱ型は軟骨、Ⅲ型は細網繊維、Ⅳ型は基底版にそれぞれ位置している。

2.弾性線維

 弾性繊維は球状タンパク質のエラスチンと短い線維のマイクロフィブリルによる複合体である。肺胞や動脈壁のような伸び縮みする部位の結合組織に多く、ばねのような弾性を与えている。機械的な力で直線的構造をとることが可能なエラスチンが、まるまった状態で安定であることに因る。線維芽細胞で合成され、互いに架橋した編み目構造をとっている。コラーゲン繊維を支える働きもある。

3.細網線維

 Ⅲ型コラーゲンからなる細い線維で、骨髄の造血組織やリンパ組織で観察される。直径は20nm程度であり、太くなることはない。その多くは線維芽細胞が産生するが、末梢神経のシュワン細胞や血管・消化管の平滑筋細胞も産生する。

4.基質
 
 結合組織から線維を除いたもので、タンパク質やムコ多糖類を含んだ細胞外液である。多糖類はグリコサミノグリカンと呼ばれ、多数のグリコサミノグリカンが1つのコア蛋白と結合し、プロテオグリカンを構成する。これらも線維芽細胞が産生する。

 グリコサミノグリカンとしては、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸などが知られている。軟骨ではⅡ型コラーゲン線維がコンドロイチン・ヒアルロン酸と共にクッション機能をもたらしていると考えられているため、これらはサプリメントとして重宝されている。


〇フィブロネクチン

 線維芽細胞はまた、結合組織の基礎部となるフィブロネクチンを分泌する。フィブロネクチンは細胞表面のインテグリンに結合するタンパク質であるが、その鎖の上にはコラーゲンやプロテオグリカン類と結合する部位も存在する。創傷治癒に関与する。

 創傷治癒の過程において、フィブリン凝固物を置き換えるのものを肉芽組織というが、これはすなわち線維芽細胞が産生したコラーゲンである。傷に集まったマクロファージからの刺激を受けた線維芽細胞がコラーゲンやフィブロネクチンなどの各種細胞外マトリックスのタンパク質を産生し、細胞外環境を整えている。治癒後には消滅する。


〇参考文献
・Qシリーズ 新組織学

尿細管上皮細胞
(renal tubular epithelial cell)

〇尿細管上皮細胞とは

尿細管上皮細胞は、その名の通り尿細管の上皮細胞である。近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、緻密斑でそれぞれ異なる特徴を持つ。

〇尿細管

尿細管は、ボウマン嚢で濾過された原尿を運ぶ管である。ボウマン嚢や糸球体は腎臓の皮質に位置しているが、原尿は尿細管を通って髄質へと運ばれる。その後、ヘンレのループで向きを反転して再び皮質に戻り、集合管へと注がれている。ヘンレループより前を近位尿細管、ヘンレループより後の部分を遠位尿細管という。

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図1 尿細管の構造 
 (https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1847 より)
 

〇近位尿細管

近位尿細管に位置する上皮細胞は立方で円形の核を有し、強い好酸性を示す。基底膜に基底線条、管腔側には刷子縁と呼ばれる構造が見られる。基底線条はミトコンドリアが縦向きに密に並んだ構造であり、産生するエネルギーを用いて再吸収を行っている。刷子縁は不揃いな微絨毛が密に形成された構造であり、近位尿細管のみに見られる。

近位尿細管は最も再吸収が盛んな部位であり、ほぼすべての糖やアミノ酸、Na、Clイオンなどが能動的に再吸収されている。浸透圧を利用した水の再吸収も行われており、結果として原尿の65%はここで吸収されることになる。


〇ヘンレループ

ヘンレループは近位尿細管に続く部位で、非常に細い。上皮細胞は単層の扁平であり、絨毛はなく、ミトコンドリアも非常に少ない。水やイオンの再吸収を行っている。皮質から髄質方向への前半部を下行脚、髄質から皮質への後半を上行脚という。

ヘンレループでの再吸収は、対向流交換系という仕組みを用いている。前提として、腎臓の髄質は深くなればなるほどイオン濃度や浸透圧が高いという特徴をもつ。

下行脚の上皮はイオンの透過を許さずに水のみを透過するため、深くなるにつれて原尿の浸透圧は上昇していく。同時に外部環境も深くなることで浸透圧が上昇していくため、水の再吸収は続く。一方、上行脚ではイオンの能動的再吸収が起こるものの、水の透過を許さない。そのため上に行くにつれてイオン濃度が低下していくが、輸送効率も低下していくため、髄質の濃度勾配を作り出していると言える。

30%程度の原尿はここで再吸収される。

ヘンレループ
図2 ヘンレループ


〇遠位尿細管

ヘンレループの次の部位で、ミトコンドリアが豊富に存在する。基底線条はみられない。副腎皮質から分泌されるアルドステロンが作用すると、Na+を再吸収し、K+を排泄する。Na+と同時に水も再吸収されるため、血圧をあげる向きに働く。炭酸水素塩を吸収し、プロトンを分泌することによって血液のpHを上げるように調節する働きもある。

遠位尿細管上皮のうち、特に糸球体に近い部分を緻密斑と呼ぶ。丈が高くて密集していることがその特徴であり、尿中のCl-イオン濃度の低下に反応してプロスタグランジンを生成し、傍糸球体細胞からのレニンの産生を促す。

〇参考文献
・看護roo 利尿薬の選び方
・Qシリーズ 新組織学

傍糸球体細胞
(Juxtaglomerular cell)


○傍糸球体細胞とは

傍糸球体細胞は糸球体に隣接する細胞種であり、尿細管上皮細胞や糸球体外メサンギウム細胞と共に傍糸球体装置を構成する。緻密斑からのシグナルに応答してレニンを産生する働きを持つ。輸入細動脈の壁に位置していることから、特殊化した平滑筋細胞と考えられている。


糸球体

図1 糸球体
 6で示された細胞が傍糸球体細胞である。緻密斑(7)と糸球体外メサンギウム細胞(5b)と共に傍糸球体装置を形成する。9が輸入細動脈である。



○レニン分泌制御

血圧が低下したとき、ろ過効率が低下するため、尿細管を流れる原尿の量は減少する。ところがヘンレのループにおけるNa、Clイオンの能動的な再吸収効率は変わらないため、遠位尿細管でのNa、Cl濃度は低下する。遠位尿細管の緻密班は尿中Cl-濃度を検知する機構を持っており、低濃度の時に多くのプロスタグランジンを放出して傍糸球体細胞を刺激する。刺激を受けた傍糸球体細胞がレニンを輸入細動脈に放出することによって、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系が始まる。

また傍糸球体細胞はアドレナリンβ1受容体を持っており、交感神経からのノルアドレナリンの刺激によってもレニンの産生を増大させることができる。「闘争と逃走」の神経である交感神経の刺激でレニンが増加し、血圧が高まる。

○レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系

レニンは、肝臓や脂肪細胞にて合成されたアンジオテンシノーゲンというタンパク質のペプチド結合を切断し、10アミノ酸から成るアンジオテンシンIを合成する酵素である。合成されたアンジオテンシンIは血中を流れて肺の毛細血管に至り、アンジオテンシン変換酵素(ACE)等の作用を受けてアンジオテンシンIIとなる。

アンジオテンシンIIは血管平滑筋に作用して収縮を強めると同時に、副腎皮質の球状帯に作用してアルドステロンの分泌を、脳下垂体に作用してバソプレシンの分泌を促す。アルドステロンは尿細管におけるNaの再吸収を促進し、バソプレシンは利尿を抑えるホルモンである。アンジオテンシンはこれら三つの作用によって血圧を高めている。これらを総称してレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系と呼ぶ。

高血圧の治療薬として、レニンを阻害するアリスキレンが用いられている。




〇参考文献
・アリスキレン
 http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/091029html/index.html
・Wikipedia 
 レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系 
 傍糸球体細胞

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肥満細胞
(Mast cell)


◯肥満細胞とは

肥満細胞は、粘膜の下や結合組織に位置し、免疫を担う細胞である。造血幹細胞から分化する。膨れた様子が肥満のように見えるため、その名がついたという。マスト(顆粒)細胞とも言われる。

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図1 マスト細胞


◯I型アレルギー

肥満細胞は、I型アレルギーを引き起こす原因の細胞である。細胞の膜上にFc受容体を持ち、IgEという型の免疫グロブリン(B細胞が産生したもの)が結合している。受容体は通常それぞれ離れているが、抗原が二つのIgE間を架橋したとき、近接したことによってシグナルが走る。すると蓄えられたヒスタミン顆粒の放出や膜上の酵素の活性化が起こり、炎症反応となったものがI型アレルギーである。活性化した膜上の酵素は膜脂質の分解を促進し、アラキドン酸カスケードによってプロスタグランジンやロイコトリエンを作る。
 

◯ヒスタミン受容体

 ヒスタミンの受容体はH1〜H4まで4種類あるが、全てGPCRである。H1はアレルギーや中枢に、H2は胃酸分泌、H3は神経、H4は肥満細胞の遊走に関与している。アレルギーを抑えるための抗ヒスタミン剤はヒスタミンH1受容体選択的拮抗薬であるが、中枢にも作用して眠くなるものを第一世代、眠くならないものを第二世代という。これは脂溶性を下げることによって、血液脳関門を突破しないようにした薬である。

アレルギーに関係するH1受容体は、Gqとカップリングして働く。PLCを活性化してIP3を遊離させ、小胞に蓄えられたCaの濃度を高める。するとPKCが活性化して、さらなるシグナルが伝わっていく。結果として、血管拡張や血管透過性亢進、気管支収縮といった反応を引き起こしている。また神経にあるヒスタミン受容体はアレルゲンの進入の情報を脳に伝え、くしゃみや鼻水といった応答を引き起こす。また痒みも生じる。


◯アラキドン酸カスケード

アラキドン酸カスケードは、膜のリン脂質を構成する脂肪酸の一つ、アラキドン酸を出発物質とした一連の合成経路である。リン脂質からの切り出しにはホスホリパーゼCが作用し、遊離したアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼの働きでプロスタグランジンに代謝される。一方でリポキシゲナーゼが作用した場合は、ロイコトリエンとなる。

肥満細胞から産生されるロイコトリエンもまた、炎症反応を引き起こす。


◯花粉症

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図2 杉の雄花と花粉

I型アレルギーの代表的な症例が、花粉症である。厚生労働省によれば、スギ花粉症が最も多く、日本人の25パーセントにも昇るらしい。主症状はくしゃみ、鼻水、目のかゆみ等であるが、大きく分けて、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎とに分類することができる。どちらも、花粉を構成する粒子が肥満細胞の捉えられ、ヒスタミンが放出されることから反応が始まる。

・アレルギー性鼻炎

 鼻炎の場合、まず知覚神経にヒスタミンが作用すると、花粉を排出するためとして、くしゃみと鼻水が起こる。そしてヒスタミンはロイコトリエンと共に毛細血管の透過性を向上させ、浮腫となる。これが鼻詰まりの原因である。

・アレルギー性結膜炎

  ヒスタミンが知覚神経に作用すると、鼻と同様に花粉を排出しようとして、涙がでる。また痒みも生じる。



〇参考文献
・厚生労働省 「的確な花粉症治療の為に」
・Wikipedia
 肥満細胞
 花粉症
 アラキドン酸カスケード 

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