ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

好中球
(Neutrophil)

◯好中球とは

好中球は、白血球の細胞の一つである。好酸球、好塩基球と共に顆粒球に分類され、細菌や真菌を捕食して、殺菌する働きを持つ。骨髄において造血幹細胞から分化し、成熟すると核が分葉する。

メチレンブルー(塩基性色素、青)、エオシン(酸性色素、赤)、azure Bの混合液による染色をギムザ染色という。血液にギムザ染色を用いると、好酸球はエオジンによって赤く、好塩基球はメチレンブルーで青っぽく、好中球は両者で赤紫に染まることから、それぞれの名が付けられている。

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図1 好中球 英語版Wikipediaより




◯分化と成熟

造血幹細胞、前駆細胞、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、桿状核球、分葉核球=好中球、の順に分化成熟する。骨髄芽球までは好酸球、好塩基球に分化する可能性を残すが、前骨髄球以降は好中球への分化が運命づけられている。分化の各段階でその数を増加させており、一つの造血幹細胞から生じる好中球はおよそ300億個である。

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図2 造血幹細胞の分化 Wikipediaより

好中球は四種類の顆粒を持っており、前骨髄球の段階で生じる顆粒のことを一次顆粒(アズール顆粒)と呼ぶ。その後、骨髄球まで分化すると二次顆粒が生じ、桿状核球で三次顆粒、分葉核球に至って分泌顆粒が生じる。一次~三次顆粒は食胞と融合して細菌を殺すために用いられる。一方、分泌顆粒は”分泌”と名がついている通り、細胞膜と融合する顆粒である。ATPなどの顆粒内物質を分泌することのほかに、分泌顆粒の膜に刺さっている様々な受容体を炎症に応答して表出させる働きを持つ。


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図3 分泌顆粒

体内の好中球のうち、末梢血を流れている循環プールはおよそ半数で、もう半数は脾臓や肝臓に辺縁プールとして蓄えられている。さらに骨髄にも前駆細胞を合わせた大量の滞留プールがあり、緊急事態への備えとなっている。感染症や炎症反応で放出された各種物質の刺激を受けると、プールから好中球が血液に流入し、その機能を果たす。


◯好中球による防御

好中球は、体に侵入した細菌類に対する防御の役割を果たしているが、細胞寄生細菌や細胞内ウイルスに対しては無力である。

細菌が侵入すると、まずは末梢に位置するマクロファージや樹状細胞が貪食し、インターロイキンを放出して炎症反応を引き起こす。すると血管内皮細胞の透過が亢進され、血液中を流れていた好中球が組織へと浸潤するようになる。さらに炎症した細胞はケモカインを放出しているため、浸潤した好中球は受容体を介してシグナルを受け取り、アクチン骨格を形成することによってケモカイン濃度が高い方、すなわち炎症部位へと遊走する。

そして好中球が細菌に接近すると、膜上の受容体によって細菌の細胞膜/細胞壁、もしくは付着した抗体IgGや補体(オプソニン)を認識し、貪食を開始する。細菌が取り込まれて形成された袋を食胞と呼び、そこに顆粒が融合することによって殺菌処理がなされている。

殺菌の方法は活性酸素を用いるものと、用いないものとに大別される。酸素依存性の機構においては、好中球はNADPH(還元剤)を材料として過酸化水素/活性酸素を合成し、アズール顆粒(一次顆粒)内のミエロペルオキシダーゼがCl−イオンを用いて亜塩素酸を合成する。亜塩素酸は強力な酸化剤として細菌の様々な物質を無差別に酸化するので、細菌は死ぬ。

非酸素依存機構には細胞壁を分解するリゾチーム(三次顆粒)、細菌の生存に必要な鉄を奪うラクトフェリン(二次顆粒)、プロテアーゼの一種であるエラスターゼ(一次顆粒)などがある。

細菌を貪食して殺害したのちに好中球もアポトーシス(自発的な死)し、マクロファージに食されるか、膿となって体外に出される。

〇まとめ

  • 酸性色素・塩基性色素の両方に染まる顆粒球を、好中球という。

  • 造血幹細胞から分化する。

  • 身体に侵入した細菌を殺菌するはたらきを持つ。




〇参考文献

・第75回日本血液学会学術集会
 教育講演5 好中球分化異常と疾患  平位秀世
 http://www.myschedule.jp/jsh2013/detail.php?session_unique_id=EL-05&sess_id=8&strong=1
・Wikipedia 好中球

好塩基球
(Basophil)


◯好塩基球とは

顆粒球のうち、メチレンブルーやヘマトキシリンなどの塩基性色素に染まるものを好塩基球という。その数は好酸球や好中球に比べて非常に少ない(白血球の0.5%)。体表面の寄生虫への応答や、アレルギー反応に関与すると考えられている。
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図1 好塩基球 英語版Wikipediaより






◯アレルギーと好塩基球

アレルギーはI型からIV型に分類され、I型は「IgEや肥満細胞を介した素早い応答」、II型、III型は「IgGを介した数時間程度遅れた応答」、IV型は「抗体を介さないキラーT細胞による遅延(慢性)型応答」である。と従来言われていたのだが、IgEは慢性型応答にも関わっているということが近年明らかになっている。IgE依存的な慢性型応答に対して司令塔的に働くのが好塩基球であり、それを除去すると応答が消失するという。

また好塩基球は、アナフィラキシーショック(急性なⅠ型アレルギー)にも関与する。肥満細胞が原因となる一般的なアナフィラキシーショックはIgE依存的なのに対し、好塩基球によるアナフィラキシーショックはIgG依存的である。好塩基球は肥満細胞と同様に膜上にIgGを持ち、抗原によって架橋された時、血小板活性化因子を放出して毛細血管を拡張させる。これが激しい場合、血圧が急低下することによってショックに陥る。


◯寄生虫と好塩基球

寄生虫の代表として、マダニの研究がなされている。マダ二は、皮膚に付着すると1~2週間吸血を続け、大きく膨らんで去っていくという特徴を持つ。中に病原体を持っていて、ライム病などの深刻な感染症を引き起こす可能性があるが、興味深いことにマウスやモルモットでは二度目の吸血に耐性があることが知られている。この免疫反応を担うのが好塩基球であり、吸血部位に集まっているようだ。詳しいことは不明であるが、好塩基球を除去すると耐性が失われることが知られており、直接的か間接的に関わっていることがわかる。

〇まとめ
  • 塩基性色素に染まる顆粒球を好塩基球という。

  • アレルギー反応に関与する。

  • 体内に少ししか存在せず、多くの謎が残されている。




〇関連項目


〇参考文献

Bloom!医科歯科大 No.11
「長い間謎であった好塩基球の生体内での役割を解明」 烏山 一

東京医科歯科大学 研究紹介 免疫反応における好塩基球の役割の解明
https://immune-regulation.org/index.php?id=13

Wikipeda「好塩基球」「Basophil」

好酸球
(Eosinophil)


◯好酸球とは

顆粒球のうち、酸性色素(Eosin)に染まるものを好酸球という。骨髄において造血幹細胞から分化し、骨髄、末梢血、組織に100:1:100の割合で分布する。特に上皮組織に多く、肺や子宮、皮膚、消化管によく見られる。核は2葉に分かれており、多数の顆粒を有する。

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図1 好酸球の模式図 英語版Wikipediaより




◯顆粒

好酸球の顆粒には、主としてMBP(Major basic protein)、ECP/RNASE3(Eosinophil cationic protein)、EPO(Eosinophil peroxidase)、EDN/RNASE2(Eosinophil-derived neurotoxin)、リゾチームという5種類のタンパク質が含まれている。 MBP,ECPを構成するアミノ酸にはアルギニンをはじめとした塩基性(basic)のものが多いため、顆粒は酸性色素(eosin,橙色)に染まりやすい。

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図2 好酸球ギムザ染色
 好酸球(中央)の顆粒がエオジンによって橙~赤に染まっていることがわかる。


◯分化

好酸球は他の顆粒球同様、造血幹細胞から分化し、前駆球以降は好酸球のみの分化経路に乗っている。前駆細胞から好酸球が分化するためには、IL-3、G-CSF、IL-5の順に受容することが必要である。IL-3、IL-5はT細胞が主に分泌し、G-CSFは血管内皮やマクロファージが分泌する。分化のシグナルを受け取ると、細胞内ではMAPカスケードやNFκB、Jak-Stat経路が働く。また、好酸球に対するケモカインとしてeotaxinが知られており、血管外浸潤後の遊走に働いている。


◯好酸球の機能

好中球に比べて貪食能は弱いが、蠕虫を脱顆粒によって殺害することができる。またRNAaseも保有(ECP,EDN)して、抗ウイルスにも働いている。EDNはまた、樹状細胞の走化因子としても働く。
さらに、好酸球はアレルギー部位に集まることが知られている。気管支喘息に多く集まるため、従来は傷害の原因とみられていたが、最近は寧ろTGFβを放出して組織修復(気道リモデリング)に働くと考えられている。

〇まとめ


酸性色素に染まる顆粒球を好酸球という。

造血幹細胞から分化する。

蠕虫を殺す役割。





〇関連項目
好中球
好塩基球

〇参考文献

Wikipedia 
好酸球
Eosinophilli

New生理学 日本医事新報社
大阪大学大学院医学系研究科 好酸球増多症
http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu07-2.html
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骨細胞
(osteocyte)



〇骨細胞とは

骨細胞は、自らが産生した骨基質に埋没した骨芽細胞である。骨層板の隙間である骨小腔の中に位置しており、骨小腔から放射状に広がる骨細管という空間に多数の突起を伸ばしている。隣接する骨細胞の間ではギャップ結合を形成しており、骨内部で綿密な網目状の連絡経路を成立させる。また突起の一部はハバース管にまで伸びており、血管から栄養や酸素を取り込み、不要物を放出している。骨に存在する細胞の90%は骨細胞である。

アポトーシスを起こした場合でも骨細胞周囲に細胞は寄り付けないため、最終的にはネクローシスを起こす。ネクローシスによって細胞内物質が出てくると、骨細胞のあった骨小腔における骨のリモデリングが亢進されることが知られている。

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図1 骨細胞
 Osteocyte:骨細胞 
 Haversian canal:ハバース管…骨内部の空洞。毛細血管が通っており、骨芽細胞や破骨細胞が位置。
 Osteon:骨単位…ハバース管を中心とした骨の構造単位





〇機能

骨細胞の主な役割は、インテグリンや一次繊毛を介した機械的刺激の感受である。機械的刺激を受けていない、つまりリモデリングの必要がない場合に場合に限り、骨細胞はスクレロスチンという糖タンパク質を合成することが知られている。分泌されたスクレロスチンは骨芽細胞のLRP5/LRP6というヘテロ二量体の受容体に結合するが、LRP5/LRP6は本体Wntの受容体(Frizzledとの共受容体)としても働くので、スクレロスチンはそれを競合的に阻害してWntシグナルを弱める働きをもつ。

Wntシグナルは核移行するβカテニンの量を増加させ、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化を促す働きをもつシグナル経路である。以上まとめると、機械的負荷があった時に骨細胞はスクレオスチンの合成を減少させ、亢進したWntシグナルが骨芽細胞を活性化し、骨形成を強化する向きに働く、ということになる。

また、スクレロスチンはTGFβの一種であるBMP(骨形成タンパク質)とは互いに拮抗する。

〇まとめ

・骨に埋没した骨芽細胞は、骨細胞と呼ばれている。

・骨内に突起を張り巡らせている。

・突起によって機械刺激を感受して、リモデリングを調整する働きを持つ。






〇関連項目
骨芽細胞



〇参考文献
・Qシリーズ 新生理学 日本医事新報社
・Wikipedia - Osteocyte
・メカニカルストレスの欠如と骨形成の低下
 http://www.ak-hcc.com/osteoporosis/related/illustration/illust/il11_01.html
・イベニティ 販売承認 アステラス製薬
 https://www.astellas.com/jp/ja/news/20091
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破骨細胞
(Osteoclast)



〇破骨細胞とは

破骨細胞は、骨縁において骨を吸収する細胞である。骨との接触部に波状縁と呼ばれる構造を持ち、そこから分解酵素が放出されている。破骨細胞の働きによって生じた骨上のくぼみをハウシップ窩という。一つの破骨細胞は5~20個の核を持つ。

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図1 破骨細胞  中央に位置する多核の細胞が破骨細胞である。



〇分化

造血幹細胞が単球系前駆細胞を経て分化・融合することによって破骨細胞は形成される。まず成熟した骨芽細胞由来のマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)で未熟貪食細胞に分化した後、骨芽細胞の細胞膜に発現するRANKL(recepter activator of NF-κβ)と、未熟破骨細胞の膜上に位置する受容体のRANKが相互作用することにより、分化シグナルが走る。

デノスマブをはじめとする抗RANKL製剤は破骨細胞の分化を抑える効果を持ち、骨粗鬆症の薬として用いられている。


〇骨の分解

破骨細胞は細胞外領域に対し、コラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ)や水素イオン、各種酵素を放出する。水素イオンを放出することで、

Ca10(PO4)6(OH)2 + 8 H+ ←→ 6(HPO4)2− + 2 H2O + 10 Ca2+ 

という平衡反応を右に傾けて、石灰成分を溶かし出すことができる。骨芽細胞がH+濃度を下げることで平衡を左に傾けて骨形成を行うのとは、対照的になっている。

この機構による骨吸収は、骨リモデリング(骨芽細胞を参照)や血中のカルシウム濃度の制御のために行われている。副甲状腺から放出されるパラトルモンは血中カルシウム濃度を下げるホルモンであり、破骨細胞の働きを抑制する。一方、甲状腺の傍濾胞細胞から分泌されるカルシトニンは血中カルシウム濃度を高めるホルモンであるから、破骨細胞の働きを促進することになる。

破骨細胞が開けたくぼみ(ハウシップ窩)には間もなく骨芽細胞が移行し、骨の再形成が行われる。


〇疾患

破骨細胞の働きが足りない場合、骨が異常に硬くなって、大理石骨病を発症する。大理石骨病では、骨髄腔が縮小して造血障害の症状も現れ、貧血や免疫機構の低下も見られる。一方で破骨細胞が過剰に働いた場合は、骨粗鬆症や骨ぺージェット病となり、骨がもろくなってしまう。

〇まとめ

・破骨細胞は、造血幹細胞から分化する。

・水素イオンを放出することにより、骨を溶かす。

・破骨細胞の阻害剤は骨粗鬆症の治療薬として用いられている。





〇参考文献
・新組織学 日本医事新報社
・シンプル病理学 南江堂
・破骨細胞物語
・https://www.torii.co.jp/health/lifescience/pdf/45_1.pdf

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